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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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仮初めの存在

「……俺達は敵を撃退して魔王城まで行けば勝ちか?」


 街道の真ん中で俺達を待ち構える敵……距離はあるが相手もこちらに気づいている様子。

 俺はそちらへ視線を向けつつガルクへ質問すると、


『勝利条件は、そうだな……敵を全滅させたら、であろう』

「でも、どのくらいの数がいるのかわからないぞ?」

『現在、精霊達が敵の魔力について調査して、捕捉できないかを試している。いや、精霊だけではなく天使達も……索敵が容易にできるようになれば、敵自体が魔物のように出現しているのか、それとも星神によって生み出されただけで数に限りがあるのかわかる』

「もし限りがあるのなら、全滅させれば勝利か」

『そういうことだ……ふむ、魔王城にいる面々は戦えているな。それほど強くはない……いや、ルオン殿の仲間達が強いと考えるべきか?』

「ちゃんと修行してきた成果が出ているのか……ただ、この戦いは星神にも見られているはずだ」

『威力偵察という意味合いだってあるのかもしれんな。とはいえ、決して加減できる相手ではなさそうだ』

「なら――」


 仲間達へ目を移す。既に臨戦態勢に入っており、いつでもいける雰囲気だ。

 俺は再び敵を見据える。白いローブを着込みなおかつフードで顔を隠しているためどういう存在なのかはわからない。ただ、俺は予想がついていた。星神が見せたものを考慮すれば、あそこにいるのは――


 程なくして俺達は敵と対峙する。俺達が無言で武器を構えた瞬間、街道の横手から別の人影が現れる。これで合計四人だ。


「アンヴェレート、下がっていてくれ」


 俺の指示に彼女は頷き一歩引き下がる。人数は同じなので一対一で戦えば彼女が巻き添えになることはないが……。


「……会話ができるかどうかわからないが」


 と、俺はおもむろに口を開く。


「俺達の実力はわかった上で、対峙しているんだよな?」


 問い掛けに反応があるのか……と、ここで真正面にいる一人がフードを外し、顔をさらした。


「――ああ、もちろんだ」


 俺が事前に伝えていたため、仲間達の反応は薄い……が、顔を見た瞬間にオルディアの気配がわずかに揺らいだ。

 ただそれは当然のこと……なぜならフードの奥にあった顔は、オルディアと寸分違わずそっくりな人相であったため。ついでに言うなら声も同じ。


 だからこそ、俺は確認のために問い掛ける。


「星神が寄越した敵……世界が星神のものとなり、その配下となったオルディア自身、といったところか?」

「ああ、その認識で構わない」


 彼が剣を抜く――星神は、俺やリーゼが見ることしかできなかった平行世界から人物を呼び寄せることができる。しかも無数にある選択肢において、自分の味方になった俺達の仲間を連れてきている。

 とはいえ、生身の体がそのまま来るというわけではないらしい……というのも、目前にいるもう一人の『オルディア』は剣は魔力で形作られ、その体もまた――


「……星神に与えられた仮初めの肉体か」

「そうだ」


 淡々と応じる『オルディア』に、俺は真っ直ぐ相手を見据える。


 装備などを含め、風体はそれほど変わっていない。ただ、まとう気配は明らかに違う。言うなれば魔族としての要素を濃くしたような感じだ。

 他の三人についてはまだフードを開けず人相は窺えないが……と、ここで他ならぬオルディアが進み出た。


「自分自身との戦いか。偽物くらいは現れるだろうと予想はしていたが、まさか別世界にいる自分と戦うことになるとは思わなかった」


 俺の前に立ったオルディアは、自分自身に対し剣を構える。


「そちらは、どういう意図でここにいる?」

「答えずともわかるはずだ。星神という存在が全てを支配……破壊したのではない。星神の力を利用した存在が、破壊ではなく支配をした。その中で俺は、星神に反するものを粛清している」

「またずいぶんな役目を背負わされたな」


 オルディアはどこか呆れたように呟く……それに加え、新たな情報が出てきた。

 無限に広がる平行世界の中では、星神が世界を壊すのではなく支配する未来もあるらしい……いや、賢者達が観測した結末が一つだったとしたら、支配はあくまで過程でいずれ世界の終わりが来るのかもしれない。


「そちらの力は理解できている」


 相対する『オルディア』は発言しながら自身のまた剣を構えた。


「星神という存在を倒すために修行を重ねた……その力は見事なものだ。しかし、無限に広がる世界の中で、より強い存在がいるのは間違いない」

「それがお前だと言いたいのか?」

「さあ? どうだろうな」


 ずいぶんと斜に構えた発言だな。この世界にいるオルディアからは考えられない。

 やがて『オルディア』の隣にいる人物もフードを外す。奥から現れたのは、


「……まさか、その顔を再び拝むことになるとは思わなかった」


 警戒を込めながら呟くと、相手は口の端を歪ませた。


「僕は君のことを知らないけれど、この世界では因縁があったみたいだねえ」


 ――それは、あの魔王との戦いで遭遇した魔族シェルダット。


「驚いてくれたのならここに来た甲斐があったね」

「……そちらの世界では魔王はどうなっている?」

「どうなっているも何も、僕は陛下の指示を受けてここへ来た。偉大なる星神の神託だったかな?」


 ……どうやら、彼らがいる世界は俺達が想像を絶するようなものになっているらしい。そして相手側からすれば俺達の世界は異常……なぜ星神に楯突くのか。そういう風に考えていることだろう。


「なるほど、魔王でさえも星神の配下……だからこそ、そういう風に手を組んでいるのか」


 左右にいる残り二人を見ながら告げると、両者は揃ってフードを外す。


 とはいえ、その姿に見覚えはなかった……が、俺から見て右側にいる男性は、明らかに天使の気配を匂わせていた。

 なおかつ、左側は竜族……まるで俺達が旅を通して知り合ったように、様々な種族が俺達へ攻撃を仕掛けようとしている。


「そちらは、色々苦心して種族を集めたようだね」


 やがてシェルダットは語り出す。


「しかし僕らは違う。偉大な星神という存在の下でその力を受け、世界秩序の一端を担っている……その力の大きさを、君達は予想できるかな?」


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