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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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刺客

「制約、というのが何なのかは不明だけれど」


 と、アンヴェレートは俺達へさらに続ける。


「様々な策を施して……今回の一件だけではない。ネフメイザという存在や星神の使徒……そうした物事は、あくまで降臨を促すためのファクターであり、辿らなければならない道筋であった」

「破壊には、条件がいると」


 オルディアが呟く。それに対しアンヴェレートは頷きつつ、


「自らの手足となる存在を生み出すか、人間などから作り出すかはわからないけれど、単純に星神を地上に出したらそれで終わり、という形では力を発揮できないのかも。これは私達にとって朗報と言える事柄かもしれないけれど、決戦までに新たな障害が発生したことを踏まえると、面倒なのは確かね」

「しかしそれは逆を言えば、俺達が敗北しなければ星神は――」

「そうね、降臨できない……古代、星神が降臨した状況を克明に理解できれば精査できるのだけれど、さすがに無理だし現状ではこのくらいで推測も限界かしら」


 と、そこでアンヴェレートは俺を見た。


「星神の意図……考えられるとしたらこのくらいかしら」

「そうだな……俺がなぜこうまで考えるのかは、敵の意図がわかれば次の一手も推測できるかも、と思ったからだけど……」

「仮説を立てて、次の戦いで検証するほかないわね……そして、よ。問題はここから。星神が使った次の一手を踏まえると、鍵となるのはルオン……あなたがもっとも重要な立場となる」

「転生者である俺、だな」


 ――星神を討った未来。それを踏まえると、星神にとって俺はもっとも厄介な存在だと言えるはずだ。


「今回星神が用いようとしている策について、俺のことは例外的な存在となるだろう……決戦前に頑張らないといけないかもしれないが」

「ルオン様ばかりに背負わせるわけにはいきません」


 と、ソフィアは毅然とした物言いで俺へと話す。


「敵の出方がわかっており、既に仲間の皆様にも周知されている以上……対策はできるはずです」

「……町を離れたら、すぐに戦いが始まるだろうな」

「可能な限り町から離れたいところですね。敵の出方がどうなるかわからない以上は」

「問題は、敵が町を狙ってきたらどうするのか」


 俺の指摘にソフィア達は沈黙する。


「……さすがに俺達と対峙して、町狙うべく動くなんてことはしないと思うけど、念のため警戒はしておいた方がいいだろうな」

『ここと周辺の町には、精霊を配置しておこう』


 と、突如子ガルクが話し出した。


『魔王城に来ている精霊達にも連絡した。すぐに精霊が派遣される』

「精霊なら対応できるか?」

『相手の技量が不明であるため、断定したことは言えないが、食い止めることはできるだろうと我は考える』

「……魔王城に来た精霊達も、相応に強いってことか」

『可能な限りの備えはしているからな』


 盤石とは言えないが、敵の出方次第でも対応できるだけの能力をこちらは保有している、というわけだ。


「わかった。なら食事の後……すぐに出発して町から離れよう。それで敵の出方を窺いつつ、場合によっては戦闘に入る」


 その言葉に、仲間達は一様に頷いた。






 その後、俺達は速やかに町を出て北へ進む。周囲を索敵するが、町近くには気配がない。よって、俺達は歩調を速め魔王城へと向かう。


『町には精霊が張り付いた。何かあればすぐに連絡が来る』


 ガルクからそういう言葉がもたらされたことで、俺達の移動速度はさらに増した。そして町からずいぶんと離れた段階で一度立ち止まり、周囲を確認。

 人の手が入らないようになってしまったため、街道自体は荒れ果てているけど……まあ移動に問題はないので許容範囲だ。


「そろそろ出てきてもおかしくないが……」

『決戦時に戦うのではないのか?』


 ガルクからの質問だが、俺は首を左右に振る。


「それだったら町で眠っている間とかじゃなくて、俺達が魔王城へ到着した際に夢の中で披露するだろ」

『む、確かにそうか』

「明らかに俺達を邪魔してやるぞという意思があるからこそ、このタイミングだったんだと思う……ガルクは以前、リーゼの道具について星神は知らないと言及したわけだが、実際は自身が潰えた未来は観測できていないにしろ、星神は数多の未来を見えていた。だからこそ――」

『今回の計略というわけだ』

「そうだ……と、アンヴェレート、どうした?」


 進行方向を凝視して動きを止めたアンヴェレートに、俺は疑問を告げる。


「何か見つかったか?」

「……この先に、何かあるようね」


 それだけ。俺は目を凝らしてなおかつ気配を探ってみるが、何も感じ取れない。


「ああ、私がわかるのは違和感程度よ。魔力を感じ取ったわけではない」

「……どういうことだ?」

「大気中に存在する魔力に揺らぎがあったという話よ。ルオンは敵の気配には敏感だけれど、大気中にある魔力を捕捉して変だと察することはできないでしょう?」


 なるほど……俺は頷きつつ仲間達に警戒するように告げ、先頭を歩く。

 魔王城まではまだ距離がある。本来なら野営して向かうのだが、敵が普通に街道にいたりするのだから、野営も危険だろうか?


「ガルク、魔王城から人を呼ぶことは?」

『夜になったらまずいため、人数が欲しいというわけか』

「ここにいる面子は、徹夜とかしても問題ないくらいの体力だろうけど」

『確かに、魔王城から味方を寄越した方がよさそうだな……と、待て。フェウスから連絡が入った』

「何かあったか?」

『どうやら向こうも、始まったようだ』

「……戦闘が既に起こっているか」


 情報は伝えているので、対処はしてくれると思うが、問題は――


「ガルク、逐一状況を伝えてくれるように頼む」

『わかった』

「それと、敵について詳細を。数は多いのか?」

『今はまだ少数のようだが……ふむ、敵の強さなどもちゃんと伝えるべきだな――』


 その時、ガルクの言葉が止まる。俺も何が原因かはわかった。街道の先……そこに、どうやら複数人の人が立っている。

 どう考えても普通の人間ではない。間違いなく、刺客だ。


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