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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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宣戦布告

 夜、俺は宿の一室で眠りにつく。ベッドに潜り込んで明日は北へ進路を向け、荒れ果てた街道をひたすら進むことになる。

 先行した仲間達は既に準備を済ませているだろうか……などと考えた時、意識が途切れ――俺は、真っ白い空間にいた。


「これは……」


 夢の中であると認識がある。そしてこの空間は――どうやら、呼ばれたらしい。


「決戦間際ということで、ずいぶんとお節介を焼くんだな」


 振り向く。そこに、鏡かと錯覚するほど俺に似た自分自身が立っていた。


「星神としては、戦いたくなくて警告しに来たのか?」

「そういうわけじゃないさ」


 肩をすくめる星神。自分自身を見つめているようで、ひどく妙な気分だ。


「そちらは準備万端で、決戦までもうすぐ……せっかくこうして会えるんだ。色々話をしてみたくなるというのは、当然じゃないか?」

「どうだか……」

「ま、そちらが面白くない顔をするのは当然の話だから、非難は甘んじて受けるけどね」


 笑いながら話す星神……目の前の存在を認識し、本格的に戦い始めて以降、こいつの出現には何かしら意味があった。今回もおそらく何か――


「そう警戒しなくてもいいじゃないか。まあ、決戦間際でこんな舞台を用意したのだから、当然か」

「……俺が城へ戻る前にもこうして話をした」


 俺は口を開く。


「騒動がどういうものかわかっていたのか知らないが、少なくとも問題が発生していたのは認識していた……今度は何だ?」

「何もしていないよ。少なくとも自分は」


 含みのある言い方だ。ただ同時に、引っかかるものを感じる。

 自分は――まるで星神の周辺に誰かがいて、その誰かが行動するつもりのようだと聞こえる。


「今回ここへ呼んだのは……平たく言えば、宣戦布告だ」

「地底で待ち受ける、と?」

「そうだね……ただ、果たしてそこまで来れるのか、という疑問があるのだけれど」

「どういうことだ?」


 夢の中で意味はないが、俺は戦闘態勢に入る……現実に即したものなのか、右手に剣を生み出すことができた。


「これ以上無意味な問答をするなら、ここで終わらせてもらうぞ」

「気にならないのかい?」

「どうせ現地へ行ったらわかることだろう? それに、例えば凶悪な魔物がいたとしても、魔王城にいる戦力ならば、問題はない」

「……確かに、多種多様な種族がいる上に最大限強化された面々だ。例え魔物であっても、勝てる道理はないな」


 涼やかに応じる星神。やはりどこまでも含みのある……単なるハッタリなのか、あるいは――


「ならばこちらも戦い方を変える……と、誰かが言っていたな」

「誰か?」

「ああ、そうだ。地底に眠る力が戦うわけじゃない。決戦に際する、前哨戦……とでも言えばいいかな? まあ、こちらはあくまで手を出さない。本当の決戦をしたければ……これから来る障害を、振り払ってからだね」


 一体何が――そう思った時、星神は俺へ笑みを浮かべた。


「君は一つ、疑問を持っているはずだ。なぜ、城で騒動が起きているのか観測できたのか。まあこちらが常に見ているから、と理由付けすることは可能だ。しかし、その騒動の詳細をどこまで把握しているのか、疑問だったはずだ」

「それに答えてくれるのか?」

「ああ、答えを提示しよう。把握していたか否か……知っていた。そして、どういう状態だったのかも知っている。あの王女様は」


 と、星神は笑みを絶やすことなく、


「――様々な選択を探った結果、意識を飛ばしてしまった」

「もしかして、お前も見えているのか?」

「予言能力……とはいえ、星神として宿っている力は類似品で、賢者が保有していたものとは違う。しかし、この世界に存在する様々な選択が見える。その中で君達は何を見た? 星神という存在が、消える未来というのを見つけ出した?」


 俺は何も答えない。ただ目の前の存在は何やら答えを知っているようで、


「……賢者は見つけられなかった。しかし、君は見つけただろう」

「お前も、そういう未来が見えると?」

「残念ながら見えない。これは転生者特有の能力なのだろう。数多の選択肢……観測できない未来は、どうやらこの世界の出身ではない存在だけが見れる特権だと」

「お前はアランを取り込んでいた。転生者の力を保有しているのだとしたら、見れるんじゃないのか?」

「残念ながらそれが無理なんだよ。力のあり方ではない。転生したという事実……これが何より重要らしい」


 やれやれ、といった様子で星神は言う。


「そこについては、悔しいけどね……とはいえ、どうやら君は見いだしたらしい。ならばこちらも、相応の対策をとらなければならない」

「ただ待っているだけではないと」

「そうだ。先ほども言ったとおり、前哨戦だ……さあ、果たして君達は勝てるかな?」


 よほど自信があるということか? こちらがさらに口を開こうとした矢先、星神は消えた。

 白い空間に、俺一人だけが取り残される。こちらは息をつき、さっさと夢から覚めろと心の中で呟いていると――背後に気配を感じ取った。


 まだ何かあるのか……と、俺は反射的に振り返った。そこで、


「なっ……!?」


 呻いた。目の前にいる存在を見て、俺は凝視し絶句した。

 星神が言っていたこと。その前哨戦とやらが何なのか……答えが、目の前にあった。


「なるほど、な……これはずいぶんと悪趣味だ」


 俺は笑みを浮かべながら、星神のやり口に怒りすら覚える。


「そういうことか……星神は、そういう能力も保有しているというわけか」


 もしかして、魔王城付近にも目の前の存在が……加えて、俺達が現地へ辿り着く前に星神が出てきたということは、道中に何かあるのか?

 その疑問について結論が出るより先に、俺の意識は浮かび上がって目が覚めた。窓からはカーテン越しに明るい日差し。決戦の地へ向かう、新たな一日の始まり。


「……すぐに、出立した方がいいな」


 俺はそう呟いて飛び起きる。そしてソフィア達に事情を説明しようと、頭の中を整理し始めた。


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