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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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奇妙なメンバー

 魔王城への進路については大陸北部へ進む街道を用いるのだが、その途中に一つ大きな町があり、そこから先には人がほとんど住んでいない。

 魔王が現れる前は、町の北にも人がいたけれど……間違いなくシェルジア大陸においてもっとも傷が深いのは魔王城周辺だ。城が存在している限り、人が立ち入ることはないのかもしれない。


「元々、魔王城周辺はメルナ王国の領土でしたが、魔王出現によって放棄されました」


 と、町に到着してから、ソフィアは改めてという形で解説を始める。


「魔王が滅び、城だけ残った現状でもさすがにメルナ王国が領地として組み入れることもせず……」

「まあ当然と言えば当然だよな」


 ここもメルナ王国領内なのだが……バールクス王国からの行商人などを含め、人通りは多く店も盛況な様子だ。


「この町は交易の中継地ということで、規模も大きいですね」

「とはいえ……」


 俺は使い魔を使って町の北側を眺める。町は城壁に囲まれており、バールクス王国からの人間を迎え入れるために南側には人が多く、東はメルナ王国の首都へ向かう道であるためこちらも同様に人が多い。西側は海へと向かうのだが、行商人らしき人が一定数通行するくらいで、人は少なめ。まあ港町はあるけど規模はそこそこといった具合なので、南と東に比べたら、といったところだろう。


 しかし、北側は……門は固く閉ざされ、街道もロクに整備されておらず、人は見張りの兵士がいるくらいで不気味なくらいだった。


「兵士ですら北側に近づかないとか……そんな雰囲気だな」

「魔王が消滅した後は、問題ないはずですけどね」

「魔王との戦いが歴史となってようやく、この町の北門が開かれるかもしれないな……まあそもそもこの大陸の北部は土地が痩せている所も多い。町などが形成されるかはわからないけど」


 ――俺達はここに宿をとり、いよいよ明日魔王城へ一気に進むことになっていた。この町が最後の中継地であるため、ここからは一気に歩調を速め、仲間と合流することになっている。

 問題なく宿をとって、俺は個室に入り椅子に座る。仲間達のほとんどは既に魔王城へ到着し、着々と決戦準備が進んでいるはず。ありとあらゆる種族が、星神と戦うために集結している……ある意味歴史の転換点ではあるが、これが表に出ることはないだろう。


「裏の歴史……という感じかな」


 たぶん教科書に載るような出来事ではない。俺達がやるのは間違いなく世界を救う戦いではあるが、これが人間達の間で誰もが知る出来事として語り継がれていくというわけじゃない。


 ガルクを始めとした神霊達にはしっかり憶えていてもらうし、こういうことがあったと何かしらの形で記されるかもしれないけど……俺はそれでいいと思う。人知れず世界を救う。なんというか英雄の物語でありそうな展開である。


「……ちょっと、心が浮ついているかな」


 なんだか落ち着かない自分がいる。やれやれと息をつくと、次に気になったのはリーゼの道具を通して見た選択肢について。

 やはり星神という存在を討ったあの選択は俺にとって非常に得るものが多かった……それと共に、垣間見えた戦い方において色々と見えるものもあった。


 あの世界の星神と俺達が戦う星神とでは状況なども違うだろうから、同じように戦うことはないだろうけれど……俺は一度目をつむる。これまでやってきたこと。旅を通して得たもの、知ったこと。そして手に入れた技術……その全てを思い返し、ようやく心が穏やかになる。

 やれるだけのことはやった……そういう気持ちを抱きつつ、俺は仲間と食事をとることに。アンヴェレートを除けば道具で見た選択と同じようなメンバー。それを意識してかリーゼの方もなんだか奇妙な表情をしていたのだが……それを気にせず俺は席につく。


 選択のことについては、結局話していない。ただ賢者ですら見えなかった未来の中で、星神に勝った結末があったことだけは伝えたし、それにより仲間も希望を抱いたのは間違いない。


「……なんだか、奇妙ですね」


 と、ふいにソフィアが発言する。


「偶然残った面々が顔を合わせて戦地へ向かっているわけですが……」

「まあ変なメンバーであるのは確かね」


 水を飲みながらアンヴェレートは言及する。


「でもまあ、理由は説明できるのよ。私はデヴァルスに変わりリーゼの容態を確認。ルオンやソフィアは主役ということで、最後の最後まで入念に調整。で、オルディアがその護衛という役割になって同行した」

「あたしもいるよー」


 と、ユノーが喋る。それにアンヴェレートはクスリと笑い、


「変わった組み合わせだけど、こんな旅路も最初で最後、楽しみましょう」

「……ま、堅苦しい雰囲気よりはその方がいいな」


 俺は苦笑しつつ、アンヴェレートへ一つ質問をする。


「そちらは直接戦闘に携わらない……けれど、援護という形で立ち回るんだよな?」

「そうね。あいにく私は戦えるだけの力は持っていないから。後方支援という形にはなるけれど……あ、そうだ。今のうちに話しておこうかしら」

「何を?」

「戦いが終わったとのことについて。ルオンが旅に出ている間、ユノーとも相談して結論が決まったのだけれど」

「どうするつもりだ?」

「元堕天使、という肩書きだし正直どこかに身を置くというのは微妙なのよね。けれど、あなた達に頼るしかないのもまた事実」


 ――彼女やユノーは、どこかに拠点を置いているわけではなからな。


「当面は魔法技術の顧問としてバールクス王国に滞在する、ということでクローディウス王から了承を得たわ」

「いつの間に……」

「自分の身の振り方は戦いが始まる前にちゃんと決めておきたかったからね。とはいえ、私は一度滅んだ身。いつ消えてもおかしくないような泡沫だと考えている。それでも、何か伝えられるものがあるのなら……恩を返すのに、ルオンやソフィアへ協力するわ」

「それはありがたい……けど、アンヴェレートの力に頼るような事件が起こらないことを願いたいな」

「ま、確かにね」


 と、彼女が笑うと俺達も笑う……そうして、奇妙なメンバーの食事は、和やかに進んでいった。


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