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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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ある世界の結末

 ――俺達が見ている世界のルオンは、まさしく天下無双の活躍を見せた。なおかつ、その旅路については似通ってはいるものの、俺が辿ってきた道とはまったく異なるものだ。

 ジイルダイン王国の騒動を片付けると、五大魔族との戦いに入り……そして、神霊フェウスから依頼が来た。その行き先はアラスティン王国であり、そこで俺も戦ったわけだが――


「ずいぶんと、違う選択ね」


 リーゼが言う。俺達はアラスティン王国でのルオンとソフィア達の戦いぶりを眺め、リーゼの言葉に小さく頷いた。


「……どうやら、設定そのものも少しずつ違うらしい」

「設定?」

「俺の生い立ちなんかは同じだけど、時折耳に入れる俺自身やソフィアとの会話から、どうやらこの世界のルオンは生まれ変わったのは事実にしても、冒険者として活動している時に転生したみたいだな」

「それだけで違うと?」

「俺一人……と思うところだけど、賢者の力によって転生された影響からか、結構色んな変化がある……いや、もしかすると根本から違うのかもしれない」

「根本?」

「この大陸に住んでいる人々は俺達の世界と同じ人々かもしれない……けど、俺が転生したことで普通のやり方だと観測できないほどの道筋になった……もっと根本的な違いがあってこの世界が成り立っているとしたら……」

「ルオンや私はいるけれど、私達の世界からこの世界を選択することはできない、ということかしら?」

「そういう解釈でいいと思う。たぶんだけど、賢者がどのように干渉したか……それによって、生まれた選択肢ってことだろうな」


 おそらくこの世界のルオンは魔王を倒すだろう。そう確信させられるほどに的確な動き……ただこれは偶然の産物だ。あくまで物語の流れに沿って動いているだけで、それが最適解だという自覚はない。


「この調子だと、バールクス王国の解放に乗り出すかもしれないな」

「本当に、違いすぎる選択肢ね」

「そうだな……」


 リーゼはさらに道具を操作して、その後の戦いを追っていく。俺の言葉通りにバールクス王国へ攻撃を仕掛け、そこでこれまで出会った仲間が一堂に会し、決戦に臨む――


 そうした光景を見て、リーゼは何か思うところがある様子だった。それに対し、


「この選択が良かったか?」

「……これは私が任意で選べるものではないでしょう? だから別段良い悪いで評価しているわけではないわよ」

「そうか」

「ただ、ちょっとだけ悔しいとは思う」

「悔しい?」

「ジイルダイン王国を守護するため、私は魔王との戦いで表立って動かなかった。それにより国民は守られたし、私は結果的に良かったと思える……でも、もし能動的に動いていれば、もしかしたらこれに近い未来はあったのかもしれないわね」

「……まあでも、状況から考えてそういう選択をする可能性は低かったんじゃないか? ソフィアは、必要に迫られて動いていたのもあるし」

「だとしても、よ」


 ……もしかすると、魔王との戦いでそうした考えが頭に浮かんでいたのかもしれない。親友であるソフィアの国が――自分達はどうにか魔族を追い返した。ならば助力するために動く……リーゼの権限でそれができたのかはわからない。でも、それをするべく何かしらアクションを起こしていたのならば――


「ただ、リーゼが俺達と共に行動したかどうかはわからないよな」

「そうね。それこそ、目の前のように、私とソフィアが顔を合わせるタイミングなんてものは、奇跡に近い。でもこの世界ではそれが起きている……私達の世界のルオンも、奇跡の連続だったでしょうけれど、この世界のルオンもまた、同じように奇跡の連続によって、成り立っているのかもしれないわね」


 さらにリーゼは道具を操作する。次に見たのは南部侵攻……ここでも大きな違いがあった。どうやらこの世界のルオンは、この場所で魔王と戦うらしい。


「魔王を倒すことで戦いは終わるみたいだけど……」


 俺はこの世界のルオンと魔王の会話を聞く。それは――


「……リーゼ、時を巻き戻せるか?」

「え? ええ、可能だけど……」

「……もしかして、これは」


 俺はリーゼにあれこれと説明して、ある場面へと辿り着く。それは聖樹コロナレシオンが存在する場所。俺達の世界と同様に神霊の剣を生み出すために訪れたわけだが……そこでユノーがいたことで、星神の中に存在していた賢者の残滓と会話をすることとなった。


「これは……ルオン」

「俺達とは違う形で、星神に挑むようだな」

「私達は相当な準備をした上で挑むのよ? それに対して、この世界のルオンは――」

「力の大きさだけで勝負が決まるわけじゃないと思う。どうやらこの世界にはまだ賢者の意識が星神内にあった。よって、賢者の助力に加え……先ほど見た俺と魔王の会話。そこから考えると、魔王自身が準備していた策が用意されていた。その二つによって、星神に挑むってことだろう」

「……先を見れば戦いの結末がわかるわね」

「そうだな」


 返答をした時、リーゼの動きが止まる。どうしたのかと問い掛けようとした矢先、俺も感じ取った。

 魔力が、俺達の体を取り巻き始める。どうやらアンヴェレートが干渉し始めたらしい。


「……リーゼ、確認だけど目覚めたらこの選択肢を再び見ることは可能か?」

「探さないといけないけれど、そもそもルオンの干渉がなければ見れない選択肢だから――」

「見れないかもしれない、ってことだな。時間はもうない……最後にこの戦いの結末だけ、見ないか?」


 リーゼは頷く。そして道具を操作し始める。その間にも魔力が強くなる。意識が引き戻されるのは時間の問題だ。

 けれど、その間に俺とリーゼは……やがて俺達は魔王と戦い、その先にある星神との戦いに目を向けた。


 さらに言えば、その先の出来事もわずかではあるが……ほんの一瞬しか視界に映すことはできなかったが、俺はある確信を抱いた。

 同時、とうとう視界が真っ白になる。引き戻される――そう自覚した瞬間、俺の意識は現実に戻り、覚醒したのだった。


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