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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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観測できない理由

「ルオン!?」


 俺の唐突な行動に驚き、リーゼは後を追ってくる。だがこちらは答えられなかった。その理由は、驚くべきものを見たためだ。


「どうしたの!?」

「ついてきてくれ!」


 俺は一方的に告げてひたすら走る。先ほど、町に人影――見覚えのある人影を見つけたのだ。

 町中を歩いているだけなので、すぐに見つかるはず……そして当該の人物を見て取った時、それを見たリーゼは納得したように声を上げた。


「なるほど……これは、予想していなかったのかしら?」


 ――俺の目の前には、この世界のルオンがいた。町中を歩いて何やら情報収集をしている様子。


「ルオンはこの町に来たことは?」

「魔王との戦いでジイルダイン王国の首都へ来ることはなかった……というか、俺自身行ったことがない」


 答えながら俺は、ここがどういう世界なのか、頭の中で答えが出始める。


「……リーゼ」

「ええ、何?」

「この世界の俺は、転生者としての俺か? それとも、ルオン=マディンとしての俺か?」

「それは……わからないわね。観察していればおそらくは、判断できると思うけれど」

「そうだな……とはいえ、所作を見ていればなんとなく想像つくな」


 一介の冒険者として活動しているのであれば、情報収集なんてする必要性はない……というか、根本的な話として転生者ではないルオンはおそらく、フィーントの村で死んでいるはずだ。

 運良く生き延びたという可能性もある。けれど、そうではなく別の予想の方が正解だと俺は半ば確信した。なぜなら――


 やがてこの世界のルオンは町を離れる。そこで、


「ついていってもいいか?」

「いいわよ。私がいないのが疑問だけど」

「……もしかすると、その辺りの答えだって出るかもしれないぞ」

「どうして?」


 俺は自分自身を見据えながら、リーゼへ答える。


「あのルオンは間違いなく、転生者としての自分だ……装備などを見れば、明瞭にわかるよ。だとすれば何かしら理由があって……もしかするとリーゼを助けるために、ここを訪れたのかもしれない――」






 俺の推測は、正解だった。この世界のルオンへついていった結果、彼は帝都の郊外、誰にも見咎められない場所でキャンプをしていた。そこで、


「これは……」


 リーゼは驚き声を上げる。俺もまた、同じような心境だった。


 この場にいたのはルオン以外に、ソフィアとシルヴィ……ここまでは旅をしていたメンバーと変わらなかったが、それに加えてリーゼとオルディアがいた。なおかつ、本来なら出会っていないはずのユノーの姿まで……この世界のルオンはそうした面々に町で得た情報について話し始める。それを見て俺は地面に座り込んだ。


「なんとなくだけど、あらましはつかんだ」

「どういう、こと?」

「ソフィアがいる以上、間違いなくあれは転生者……つまり、俺と同じように前世の記憶を……ゲーム知識を保有しているルオンだ。でも、この場にいる面々の中でユノーとオルディアが同行していること。そして、リーゼの存在……この世界は、おそらく俺が違う選択をしたこと世界なんだ」


 そう言いつつも、俺はさらに思考する。


「いや、もしかすると転生した経緯とか、その辺りから違っているのかもしれない。でなければユノーが一緒にいるのはおかしいからな」

「遺跡に踏み込んで、仲間に加えたのではなくて?」

「ユノーが眠っていた遺跡が同じだとするなら、俺がそこへ行く道理がまったくない。だって俺は小さい頃から強くなるために一人で修行をしていた。アーティファクト目当てで遺跡に潜るにしても、わざわざ故郷から遠く離れたバールクス王国の遺跡へ足を踏み入れる理由がない」


 返答しつつ、俺は自分自身の会話を聞く。どうやらリーゼは、旅についてくるらしい。


「そして俺の存在によって、わかったことがある。見通せなかった選択の世界……それは俺みたいな転生者……つまり、賢者の導きによって転生した人間がいる選択なんだ」

「ルオンが触れて見えるようになったのは……」

「同じ転生者だから、見る資格があるって話なんだろうな……いくつもそうした世界があったということは、目前の光景みたいに俺が立ち回っている世界の選択がいくつもあったということなんだろう。あるいは、俺以外の転生者が、って可能性もある」


 もしそうなら、俺に関連する世界以外は触れても干渉できないかもしれない……と、ここで俺はリーゼを見た。和気あいあいと喋るこの世界の自分に、思うところがある様子。


「……もし俺がジイルダイン王国へ来ていれば、この時期から共に戦う可能性があった、と思っているのか?」

「そうね。もしかするとこの選択を通して魔王を倒せば、私は星神との戦いにも早期に加わっていたのかもしれないわ」

「……国王が許可すると思えないけど」

「会話を聞く限り、説得したみたいよ?」

「押しの強い性格はここでも同じってことか……」


 立ち上がりつつ、俺はリーゼへ一つ尋ねる。


「なあリーゼ、この選択は魔王との戦いだが……これより先の未来を見ることはできるのか?」

「調整すれば可能なはず。ただその場合、急激な視点移動を行うことになるし、私がいる場所がクローズアップされるけど」

「この世界のリーゼが俺と同行するなら、すなわち俺がどういう戦いをするのか見届けることができるはずだ……魔王との戦いについて、どこまで変化があるのか……それを見てみたい」

「これからの決戦に対し、ヒントになるものがあると?」

「そこまでは考えていないけど、この世界のルオンは俺とは違う技法を得ているかもしれないからさ……ま、参考までに見てみたいってことだ」

「物好きねえ。ま、いいわ。そういうことなら戦いの経過を大雑把にでも確認する?」

「ああ、それで頼む」


 頷くと、リーゼはいくらか魔力を腕へと込める。それで視界が切り替わり――俺は、この世界のルオンの戦いぶりを観察することとなった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 書籍版7巻の情報を見落としていて今日買ってきました。 教訓:公式ページはチェックしよう。 あっちのルオンはあっちで「多種族の力を集結とかまだ道半ばもいいところだったんだな」とかどこかで苦笑…
[一言] ……ここが、書籍版の世界か
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