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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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道具の詳細

 俺とソフィアはアンヴェレートに連れられて研究室へと戻ってくる。そこにカティなど調査に加わっていた人員もいて……彼女達を横目に見ながら、俺はアンヴェレートから説明を聞いた。


「腕輪にはめこまれた宝石内にある魔力が活性化すると、効果を発揮する……で、その効果は転移だけではなく……」

「この世界とは違う異相……その扉を開く道具、と言うべきかしら」


 と、アンヴェレートは言うのだが……正直ピンとこない。

 彼女が言うには、いわゆる平行世界へたどり着ける道具らしい。


 正直、荒唐無稽な道具ではあるのだが、俺の出自……転生したという事実を踏まえると、別にあってもおかしくはない。賢者に由来する物であるならば、なおさらだ。


「異相世界へ、という表現で不安に思うかもしれないけれど」


 と、アンヴェレートは解説を続ける。


「賢者に近しい人物が考案したこともあって、決して害意のあるものではない。先ほど異界の扉を開くと言ったけれど、そもそもこれは平行世界へ体ごと移動できるだけの力はない。あくまで、のぞき見する程度ね」

「のぞき見、というのは……」

「ここからは私の推測だけれど」


 と、アンヴェレートはさらに述べる。


「賢者には無数の未来が見えていた。そして星神が世界を滅ぼすことも……けれど無数にあるのであれば、星神が降臨しない分岐だって存在するかもしれない」

「それを見つけるために、道具を作った?」

「そうね。無限の可能性が見えているからこそ、ならば実際に調査しなければ……賢者自身が見えていなかった未来だってあるかもしれない」

「……そう考えれば別にそうした道具があってもおかしくはないけど、どういう原理で生み出されたんだ?」

「賢者が持つ予言能力を、参考にしたのでしょう。今の技術ではそうした能力を持つ存在がいたとしても、さすがに同じ道具を作るのは難しいでしょう。古代の技術がまだ残っていた賢者の生きた過去だったからこそ、可能だった」


 ……賢者に手を貸す人間で、賢者とは異なるアプローチで検証しようと思っていた、と。


「実際にそうした未来があったのかは不明だけれど、もしそうだとしたらこの道具と共に情報が残っていてもおかしくない。けれど――」

「残っていなかった……つまり、星神が降臨しない未来というのは、存在しなかった」

「おそらくは」


 やはり倒さなければいけないという話か……おおよそ道具の詳細はわかったが、問題はどうやってリーゼを目覚めさせるか。


「それで、事態の解決はどうやるんだ?」

「魔法を用いて、リーゼの意識を引き戻す……ただ、星神の力を減衰させる道具と併用したことで異常が発生したと仮定すれば、単純に魔法で干渉して彼女を目覚めさせることができるのかは不透明ね」


 アンヴェレートはそう解説した後、腕を組んだ。


「道具はあくまで平行世界をのぞき見るだけ。つまり、本来なら意識が飛ぶようなことはあり得ない」

「他の道具との兼ね合いでそうなったのだとしたら……リーゼの意識を戻すには、魔法を使うにしても一工夫必要ってことか?」

「そうね。具体的にどうするかは今から精査する。もう少し待ってもらってもいいかしら。道具を組み合わせて異常発生したメカニズムさえわかれば、それを利用してリーゼ王女の精神が赴いた平行世界だって特定することは可能なはずよ」


 俺やソフィアは同意し、ひとまず食堂へ戻る。リーゼのことは気になるが……今はアンヴェレートの検証を待つしかなさそうだ。


「平行世界……」


 ふいにソフィアが呟く。俺としても気になる話ではあるのだが――


「この道具を開発した人は、どんな未来の果ても星神の降臨が待っていると知り、何を思ったのでしょうか……」

「この道具を残しているということは、少なくとも未来には託したのかもしれない……成し遂げられるかわからないけど、俺達は星神打倒を手の届くところまで来ている。この人の思いなんかも背負って、戦わないといけないかもな」


 こうした道具が決戦寸前で姿を現したことも、何かしら縁を感じる……。


「リーゼ姉さんは無事でしょうか……」


 不安げにソフィアは告げる。それに俺は、


「見ることができる道具ってことは、さすがに精神そのものがどこかへ飛んでいったというわけじゃない。道具の効果がより強く働いて、夢を見ているような状態に近いんじゃないかと思う。なら、大丈夫さ」

「そうだと良いのですが……」


 ――色々と不安を持ちながら、俺達はひたすら待つことに終始する。やがて新たにアンヴェレートから報告が来たのは、夕刻前。研究室へ再び呼ばれ、説明を聞くことに。


「ある程度道具については解明したわ。星神の力を減衰する道具と組み合わせれば、リーゼ王女が陥っている状態に近しい魔力の流れを作り出すこともできた」

「なら――」

「魔法を使って対処はできる。ただ、ここで一つ問題があって」

「問題?」

「現在リーゼ王女は道具の魔力を受けて眠っている……それは道具の魔力の一部が体に入り込んだため、なのだけれど……この魔力を取り除くのは、多少面倒な処置が必要になりそうなのよ」

「俺やソフィアなら、どんなことでも協力するけど」

『ふむ、ルオン殿達が率先というのは微妙だな』


 と、ガルクが発言する。


『道具そのものを使用することについては、さほど問題はない。例えばの話、ルオン殿達が同じように道具を行使しても、検証が済んだ今ならば魔法を使い意識を引き戻せるが……道具を使用することによって、体に影響が出ないとも限らない。なぜなら――』

「星神を打倒するために準備したことで、俺やソフィアは結構特殊な力を得ているためか」

『その力が濃ければ、おそらくリーゼ王女の意識に接触はしやすくなるだろう。しかし同時にその力こそ、眠った要因の一つだと推察できるからな』

「ガルク達が心配するのはわかるけど……話通りなら俺達が適任であるのは間違いない。なら、俺達がやるべきだろ?」


 ――ガルクはアンヴェレートは思案した様子を見せたが……彼らもこちらの言葉が正解だと考えたか、やがて小さく頷いた。


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