幕間 洞窟の中で
視点が変わります。
誰もいない。
暗い。
いつから私はここにいるのだろう。
よくわからない。
出口もない。
洞窟に閉じ込められたらしい。
壁の隙間から何か見える。
宝箱とそれを守るように入口を向く黒いドラゴンの後ろ姿。
声をかけたが、反応はない。
それからずっと、一人で過ごした。
朝も夜もわからない。
春も夏も秋も冬もわからない。
お腹もすかないまま。
のどもかわかないまま。
何秒経ったかわからない。
何分経ったかわからない。
何時間経ったかわからない。
何日経ったかわからない。
何週間経ったかわからない。
何月経ったかわからない。
何年経ったかわからない。
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ある時、誰か入って来た。
四人の男女。
剣を持っている二人がドラゴンに向かって来る。
残りの二人が人差し指をドラゴンに向ける。
「「火。」」
ドラゴンの眼前に火の玉が現れる。
火に驚き一瞬止まったドラゴンは、一人に腹を、もう一人に首を切られ、倒れた。
私は思わず声をかけた。
「聞こえますか。」
反応はない。
「聞こえますか~!」
やっぱり反応がない。
「うそでしょ……ねえ、聞こえないの!」
何度叫んでも声は届かなかった。
四人組は宝箱を開け、中の水晶を取り出し、そのまま去って行く。
「ねえ!聞こえないの!?ここから出してよ!お願い!行かないで!あぁ……。」
四人組は行ってしまった。
「一人に……しないで………。」
いつの間にか宝箱は閉じられ、黒いドラゴンは復活していた。