九話
「おぉ、自己紹介がまだだったな。妾の名はピア、
ピア・エルフォバリアだ
坊やは?」
「名前はナナミヤ メイ
今は異邦人に関する情報を集めている。
ここでは文献を探しているんだが、ピアさんは知っていますか?」
エルフは皆長寿だと聞くし
ここで何か情報が得られれば得だな
「ほほぅ。興味深い
それに黒髪黒目、片目は魔力の
後天的発動による副作用か…
面白いぞ坊やよ
妾の事はピアでいい。
それにしても随分と寂れた
情報を探しておるのぉ
まぁ、知りたいなら付いて来るが良い…」
何か知ってるのか…?
ピアは本棚の奥に歩いていった。
*///ピア///*
「そこの坊や、探し物かい?」
この時声をかけたのは
長すぎる年月で暇を持て余して
いたのと視界に入った坊やを
誘惑して遊んで野郎と言う
ただの気まぐれからだった
「そうです。あ、あなたは?」
「ッ!!…おぉ、自己紹介がまだだったな。妾の名はピア、
ピア・エルフォバリアだ
坊やは?」
驚いた…
後ろ姿で黒髪だったのには驚いていたが
まさか瞳の色まで黒だとは
しかも右眼は金と来るか…
普通オッドアイは
体内のマナの後天的発動によって
引き起こされる侵食作用だ
だが基本この世界に生をうける
つまり母体の体内に居る時点で
既に体内のマナは覚醒して
マナによって髪の色や瞳の色は
侵食される
自身が持つ属性の色の髪か瞳を持つモノは強力な魔法を放てる
と言う学説もあるが定かではない
しかもこの世界で魔力を持たないモノは居ない
草だろうが虫だろうが
魔力がゼロ。 なんてことは無い
だから黒髪黒目の人間はこの世に存在しないハズなのだ
だがこの少年はどうだ…
まるで物語の伝承にでてくる
黒髪黒目の英雄勇者ではないか
まぁ黒髪黒目の勇者の説は眉唾ものだが。
その勇者は左の瞳が青だったそうだが、
興味深いな
「名前はナナミヤ メイ
今は異邦人に関する情報を集めている。ここでは文献を探しているんだが、ピアさんは知っていますか?」
ほほぅ
異世界人の文献を探すか…
古の同族…
いや、考えすぎか?
だがあの文献の文字が読めれば…
かけてみるか
「ほほぅ。興味深い
それに黒髪黒目、片目は魔力の
後天的発動による副作用か…
面白いぞ坊やよ
妾の事はピアでいい。
それにしても随分と寂れた
情報を探しておるのぉ
まぁ、知りたいなら付いて来るが良い…」
そう言い
自分の予想が当たれば御の字。
ハズれても暇潰しにはなる
そんな軽い気持ちで
案内を買ってでたのだった。
*//////*
少し歩くと丁度図書館の真ん中あたりに着いた
そこには縦3m程の石造りの柱が4本建っていて
上に屋根が乗っかっている建物の様なものが本棚の隙間にあった
大体横は5m位の隙間にひっそりと建っている
最初は休憩所かと思ったが
その建物の真ん中に古びた両開きの扉があった
淵は金色のツタの様な意匠が施されていて
かなり綺麗だ
「ここに創世記から現代までの
歴史書や古文書更に奥の鍵の着いた部屋なら禁書があるはずだ、
妾が知ってる事なら口頭で説明してやろう
それに妾も先程ここに入る許可を貰ってきた所だしな」
そう言ってピアは古びた両開きの扉に手をかけゆっくりと内側に押していく
中は急な階段になっており
5分程かけて降りていく
するとまたさっきと似たような扉があった
ピアが手をかけると
滑る様に扉が開く
そして
ボッ ボッボッボッボッボッボッ…
部屋中の松明に自然と火が付いていく
全てに火が付いた時
その威容に圧倒された
全部て何冊あるだろうか…
数えきれない程の本が大理石の様な継ぎ目の無い棚に収められている
地上の図書館の3分の1ほどか
それでも十分過ぎる量だな
まるで時間がその資料を収めた時から止まってしまっている様な
感覚に陥る
ピアが静かに一言ずつ言葉を紡ぐ
「地下図書館
それがここの名だ、
さぁ坊やが知りたい情報があれば妾が探してやろうぞ
流石にこれ程の量だと右も左も分からんだろうしな。」
「あ、あぁ、そうだな
それと奈々宮芽衣、名前で呼んでください
坊やは少し恥ずかしいんだ。
俺が知りたいのは異世界から来た人間についての話だ、
それと使えそうな魔法もここに無いかな?」
「ふふっ 恥ずかしいか
うぶだのぉ…少し興奮してしまうでわないか」
「うっ…」
やばいその表情はエロい!
ほんのり赤みを帯びた頬
そして切れ長の目でこっちを見てくる
てか、この人いったいいくつなんだ
口調が口調だしエルフは長命種だからな…
聞かない方がいいな
「ま、まぁ、異世界人についての
文献なら何冊かあるうちの1冊を持ってくるとするか…
だが魔法となると特に必要無いと思うぞ?」
「ありがとうございます。必要無いって?」
「うむ特別に教えてやろう
想像しやすいように言うと
魔法は事象を改変する
時に精霊に力の元を貰う許可を貰う様なものだ
火の魔法であれば火の精霊に火種を貰い自分の魔力で増幅させる
そんな風にイメージすればいいのじゃ
自分が消費する魔力数を大体で
100の内5にするなら
頭の中で5程度の魔力を手に取る感覚じゃ
よく使われる攻撃魔法でポピュラーな詠唱は
火の精霊よ 我の魔力を糧に、《火弾》!
と言った感じに詠唱する
詠唱は人それぞれ、唱えやすく
覚えやすい、これが大事だ
使う魔法の属性の精霊を呼び
精霊に願う言葉と使用する
大まかな魔力量と
技の名前の4つを組み合わせれば発動しやすく
威力も高くなるのじゃ
それに込める魔力が大きければ初級の魔法でも強力になるらしい
これは眉唾ものだが
5の魔力を込めた《火弾》と
50の魔力を込めた同じ魔法が違う威力になるらしいの
妾は詠唱の時にも短縮魔法を使う時も
自然と魔力が変換されるから分からんのだが
まぁそんな強い魔法なんぞ使えばすぐに魔力が切れて魔力枯渇になるがの
後は基本的に魔法で何をしたいかを頭の中で明確にイメージする事だな
最初にその魔法を使う時に強くイメージを定着させれば
後は詠唱を唱えれば
魔法は正確に発動しやすくなるぞ
これが出来れば決まった
詠唱は特に必要ないのだ
確かに魔法学院などの教科書には参考で頻繁に使われる魔初期の攻撃法や回復魔法が記されているがそれを覚えればやりやすいと言うだけじゃな
短縮魔法は殆ど発動のキーを唱えるだけじゃ
さっきのだと
放て!《火弾》!
でも発動する
まぁそれだと十分魔力を込めないとそこまで威力がでないがの
5の魔力を込めて詠唱のするのと
5の魔力を込めて短縮詠唱する《火弾》では当然威力違う
そう言う事じゃな
それと大人数で発動する魔法は詠唱が必要となるのもあるな
集団魔法と言う物も大きい魔法を使い威力も欲しい時は詠唱するのぉ
大人数だと自分が使える魔法の一階級上が使えるだけじゃがな
まぁ人数にもよるがな
分かったか?」
なるほど…
様はイメージ力が大事なのか
でもアイリは律儀に詠唱してたな
でも戦闘の時にダラダラ詠唱してたら
先手打たれるのは確実だな
「ありがとう
外にでて時間がある時に試す事にしますよ。」
そこまで説明して満足したのか
ピアは異世界人の資料を探しに
棚の奥に消えていった
それから10分程してピアが
あまり分厚くない本を
一冊持ってきた。
「またせたなメイ、これが
異世界人と行動を共にした従者が記したとされる本だ
あいにくこの言語はどの言語にも当てはまらなくて妾も解読されている所3文ほどしか読めん。
すまんな」
ピアはニヤッと笑ったが
本に目が行き気がつかなかった
タイトルは掠れてしまって分からなかったが
とりあえずページをめくっていく
だがめくっていくうちにある事に気がついた…
「こ、これって…日本語だ…」
「こ、この言語ががわかるのが!?」
「わかるもなにも…俺の故郷の
言語だよ。俺の世界の…」
「な、なっ!!?!?!?」
ピアがクワッとなる
お互いにとても興奮している
ピアはこの言語が異世界語で
それを俺が読めるから
そして俺はこの世界で
始めて向こうの世界との繋がりを見つける事が出来た喜びだ
それがたとえどれほど昔の事だろうとも
「さ最初からよんでくれぬか!」
「わかりました。読みますね
『私の主人は言葉は通じるのに
書く文字は謎の文字だった…
だが私は勇者であった主人亡き後も主人の書き遺した文字を研究し解読する事に成功した。
この本はその
《ニホンゴ》と言うの言語で
記す
後世にこの本を読める
人物が現れるのを願う。』 」
冒頭はこんな感じか…
やっぱりこれを書いた人の主人
ってのは俺と同じ日本人か
勇者は亡くなったとかも気になるけど
それはこれを読み進めないと分からなさそうだ
「す、素晴らしいぞこれは!?
メイも良くやった!
これで勇者の…」
「勇者の?なんだ?」
なんか怪しいな…
「まぁよいか
実はな、魔王時代から明暗時代に時代が移る時に魔王は封印されておるんじゃが、誰に討たれ封印されたかが分からずじまいでな
古文書や歴史書にも詳しくは書かれておらんかったのだ
だがこの文献を見る限りこの本の筆者の主人が勇者と来た!
これはかなりの確率で勇者説が決まりじゃよ。」
かなり興奮しているみたいだ
さっきっから抱きついたりしてくるし胸とか太ももとか適度な弾力でムチムチだけど全然当たってる事に気がついてないもんな
やばい反応してしまいそうだ
ん?、何がかって?
しるかっ
「ピアは考古学者かなんかなの?」
とりあえず気になっている事を
気を紛らわせる為に聞いた
だが帰って来た答えは予想とは違い普通の回答だった
「ん?違うぞ?妾はエルフ
知識を求めて旅をしているのだ
昔はギルドでクランを作って
仲間と冒険者をしていたがな
そのうちの1人が結婚するからって解散になってな
それからはずっと各地を回って知識を貯めておる」
なるほど見聞を広める旅ってか
「取り敢えず妾はこの文献をこっそり盗ん…借りて自宅で研究させて貰う
メイよ、お主は興味深い
気に入ったぞ
暇な時メイも来るが良い
分からない所を聞きたいからな」
「盗むって…
まぁ、かまわないよ。でも俺が読んだ方が早いんじゃ?」
メイは妖艶な笑みを浮かべている
誘っているかのようだ
俺は日本語を読めるし意味も分かる
でもピアは読めないし家に持ち帰っても只の紙切れだと思うんだが…
「わからないのか?まったく
簡単に内容が分かったらつまらないじゃないか、さっきメイが読んだ部分は憶えておる
後は少し自力で試して見たいのだ
まぁ分からなければ頼るがな。」
綺麗な顔ならドヤ顔も似合ってしまうのは悔しいな…
でも、なるほどねぇ
自力でなんとかしてみたいってか
凄い向上心だな
「さて、そろそろ戻るか」
そう言うと
ピアも分かった
と言い
行きに下った階段に向かって歩いていった
地上に出て
少し歩くと
数冊の本を胸の前で抱えた
アイリがそわそわして
辺りをキョロキョロ見回していた
「ちょ、どこ居たの!?
いろんな所探してたのよ?」
どうやら少し前に本を探し終え
少し目を通したらかなり
有用な事が書かれていてホクホク
しながら見せてやろうと思い
探していたらしい
悪い事したかな
「お、おうすまないな
それと後でその本見してくれ。」
「し、しかたないわっ
後で見したあげる
て、そっちの方は?」
「自己紹介がまだだったな
妾はピア・エルフォバリア
種族は見ての通りのエルフじゃ」
斜め後ろに立っていた
ピアは髪をサッとかきあげ
様になっていた
「(エルフォバリア?いやや
お母様のクランメンバーでしょ?若すぎでしょ…あっでもエルフなのか…うーん)」
アイリはなにかブツブツと言っている
「アイリ?アイリも自己紹介しなって。」
「あ、すみません!わたしは
アイリーン、アイリーン・オル・バルティシェルですっ!」
バルティシェルの辺りでピアの
眉の辺りがピクッとなったのを
見逃さなかった
「バルティシェル…まさか
ナタリアの子か?そういえば
ナタリアの面影が…」
「え、じゃあやっぱり貴方が
お母様のクランメンバーの
ピアさんだったのね!(若っ!)」
大体の背景はわかったけど…
そうするとこのエルフさん本当に
歳分からないな
それにアイリの話だと帝都に住んでるアイリの母親の友人って
いったらピアなんじゃ?
「アイリ?師匠ってピアの事?」
「え?あぁ!あ、あのっ!
ピアさん!わたし達強くなりたいんです!わたし達に魔の者達との戦い方を教えてください!」
アイリは思い出した様に腰を綺麗に90°に折り曲げた
つられて曲げる事
数秒
「教える事自体は構わん。
ナタリアからもいずれ子供が頼みにくるだろうと言っていたしな
だが、理由を聞こう、
生半可な覚悟や弱い意思では必ず死ぬぞ。」
ピアは一瞬悲壮な表情をしたがすぐに顔を引き締めた。
その表情が気になったが
今は聞ける雰囲気ではなさそうだ
一瞬の静寂を破ったのはアイリだった。
「強くなりたい、強くなって
強くなって、お母様の様に強く、
仲間を見捨てない勇気と実力が欲しい!
それで絶対にお母様よりも強くなりたいの!」
アイリは確固たる決意をその
青い瞳に宿らせて決意を話した
「力があるんだ、無い人を守らないでどうする
この先力が欲しい時、誰かを守りたい時に力が無くてどうする
悔しいだけじゃダメなんだ
この前は運が良かっただけだ
運が悪けりゃ2人とも死んでた
だから強くなる
それに面白いからな、この世界は
それを敵なんかに潰されてたるかっ!」
強くなりたい
いろんな魔法を使いたい
元居た世界の知識もある
魔法も絶対に面白いモノを
創れるハズだし
剣術も習いたい
そうすればいずれ来るであろう
敵にも立ち向かえるハズだ
こんな面白い世界
魔王や魔人や魔物達に蹂躙されて良い訳がねぇよな
邪魔する敵は全部凪倒せる力
自然と口角が吊り上がる
「ハハハハッ 面白いぞメイ!
それにアイリも良い目をしている!いいだろう!
ただしこのピア・エルフォバリアが
教える限りお前達は最強にならねばならん!
特にメイ!お前は絶対にだ!
おなご1人程度小指で守れる様になれ!
アイリだけでない世界中のおなごをまもってみせよ!フハハ
ついでに妾も守れーフハハハ
おとこはまぁついでにまもってやれ!ハハハハッ面白くなりそうだ!」
ついて来い
そう言って上機嫌のピアは図書館を出て行った
「ピアさんって凄い人だね…」
「あぁ、すげぇよ最高だよ」
世界で最強にならなきゃ
弱肉強食ってやつか
決意を胸に
ピアをおって図書館を出て行く。
アイリも急いでいるのか
借りた本を近くの机に置きっ放しにしながら追いかけていた
これから楽しくなりそうだ
フィテリア歴 真明時代4558年
フィテリアに1人の異世界人が召喚された
その異世界人の周りから
滅びの歴史に
徐々に変化を与えていく
それが果たしていい事なのか
わかる者は僅かしかいない
そうして
フィテリア界は
大きな変化の渦に巻き込まれていく。




