八話
「うへぇ…こんなデカイとは。」
帝都の城壁の前で、
おのぼりさんの様に惚けている芽衣をみて得意げにアイリがとセシリーが腰に手を当てている
「ここが帝都、いや、大陸最強の防御力をもつリアンガルドの城壁よ。この城壁が数多の魔物たちの進行を食い止めて森の中に押し返す拠点となったのよ!」
「そう!この城壁は帝国の象徴!誇りなのよ。」
なるほど、
それなら
アイリとセシリーが得意げになるのも無理はない
この城壁の放つ威厳ともいえる
そびえ立ち、崩れる事のない
まさに人族たちの希望の象徴なのだろう
城壁の上を見ると等間隔にバリスタが置いてあるのと、
軽装の鎧を付けた兵士が巡回しているのが見える
そして城壁15m辺りに等間隔に空いた穴からはトゲトゲしいバリスタが顔を覗かせている
既にリノン帝国より西側に隣接していた国々は殆ど魔物の進行により滅亡しておりリノン帝国が最前線になるのもそう遠く無いうちに実現してしまうとの見解もあるようだ
前回の進行からかなり時が経ってるとは言え、流石に油断は出来ないのだろう
「す、凄いな
ところでアイリ、自分はこの国に入れるの?」
この世界に居なかったんだし
身分を証明する物もない
「うん、大体の国は軽い持ち物の検査と税の徴収だけよ。」
税は入場料みたいに考えとけばいいか
門番の衛兵に税金の100エル
を2人分払って城門をくぐる
少し暗い城門をぬけると
眩しい光とともに
思わず声がてる…
「う…うぉぉぉぉ……」
中世ヨーロッパ風の外観の建がならぶ街並み
石畳の道
掠れるほど奥を見るとそこにはとてつもなく大きい純白の帝城、
ツァンベルク城が建っていた。
リノン帝国の道ゆく人は殆ど人族だが、
時折獣人族や竜人族といった種族も見られる
アイリが言うには
人族の括りは曖昧で中には今では少数だがエルフやドワーフなどの
外見人族と大差ない種族
亜人族が居る
数年前までは
この大陸の人族は6割でのそのうち1割は
エルフやドワーフなど
古来からエルフやドワーフはアヴェルン大陸の秘境から旅や移住してくるだけだったそうだ
しかし大戦中に、人族の戦力を
集結した際に亜人族であるエルフとドワーフは大戦に備えて秘境を捨てて都市に集まったらしい
竜人族は1割程
獣人族は全体の2割程らしい
「メイさん、アイリさん、私達は邸宅に帰ります。ありがとう御座いました
このお礼はいつか必ず。」
「メイ様、アイリ様
お嬢様を助けて頂いてありがとう御座います
ではこれで失礼します。」
リディアがセシリーの肩を持ち、
お辞儀をしていた
「いや、俺は当たり前の事しかしてないよ、お礼なんて。」
「そ、そうよ!お礼なんかより早く傷を治しにいかないと。」
「ありがとう!でも傷が治ったら必ずお礼をしに行くわ
でわ!いずれまたどこかでお会いしましょう!」
…これは多分フラグだ…
「「じゃあ(ねー)なー」」
セシリー達と別れた後
「アイリ、帝国の図書館はどこにあるんだい?」
この国に来た目的を果たす事にした
目的とは伝承にある異邦人に関するの
文献を探しに来たのと
自分とアイリの魔法を鍛えるための魔法書などを
帝都の図書館で探すことだ
「図書館は帝城の隣にあるわ
取り敢えず今日は何処かの宿を探しましょう!図書館には宿を取ってから行きましょ!」
城門から真っ直ぐ伸びる道を歩いていると
ベッドの上に猫が立っている看板がありアイリがここは多分宿だと教えてくれた
ー寝猫亭ー
うん。そのまんまだな
3階建ての大きめな宿で
1階の壁は取り払われ人が出入りしやすくなって居る
受付には猫耳を生やした
ナイスなバディのお姉さんが
暇そうに座っていた
「あら?お客さんかい?寝猫亭へようこそ
部屋はどうするよ。」
そういえばアイリの手持ちは後
6000エル程だった気がする
隣のアイリを見るとぷるぷる
震えながら
しまった!お金の残額計算するの忘れてた!
みたいな顔をしていた
「し、仕方ないわ…お姉さん、
1番安い部屋はいくら?
私たち手持ちがあまり無くて…」
「はいよ、それとお姉さんじゃなくていいよ
私の名前はグリセルダ、仕方ないわね
本当は3000エルの部屋だけど…
貴方たち初々しいから本当に特別に2500エルにまけといたあげるわ
こんな事絶対にないんだからねっ
その代わりに後で彼氏さんベットに連れ込んじゃおうかしら
じゃあ貴方達は、205号室ね
狭いのは我慢してね〜。」
「は、はい!グリセルダさん。
って初々しいってなんですか!
それと彼氏なんかじゃありませんってば!
それに貸しませんっ!」
「あ、ありがとうございます
じゃ、行こうアイリ。」
「えっ…ちょっと待ってよー」
「ふふふっ初々しいわぁ」
なにやら怪しい雰囲気になったのでさっさと退散する
部屋には小さめの2つのベットが置いてあり大きめのテーブルと
椅子が2脚だけの
質素な部屋だった
もちろん水道などは通っておらず
庭の井戸から水を組み上げて
桶に入れて部屋に持ってくるのだそうだ
まぁ安くしてくれたんだし
十分かな。
「お金かせがなきゃ…」
アイリがなんか呟いている
「アイリ?金稼ぐのか?」
「えぇ…でもここで定職を探すのは難しいわね…
となると
やっぱし冒険…「冒険者あるの!?」者しか…ひゃっ!?」
やばい
テンション上がって
言葉被せてしまった…
「ご、ごめん。」
「ええ大丈夫よ。冒険者、あるわよ
興味あるの?」
ぼふっ
アイリはベットの1つに腰を降ろした
「わたしはまだ冒険者登録してないから登録するならユウトと一緒に登録するけど、どうする?」
やばいめっちゃ冒険者とかかっこよさそう
前にケータイの小説でみた異世界の主人公は冒険者で、他の作品も
冒険者はよく出てきた。
まさかこの世界にあるとは…
「で、でも、実際ロクに戦闘の経験とかないし、まともには戦えないとおもうよ。」
「確かにそうね…」
アイリは俯いて考え込んでしまった
そして5分ほどしてアイリの頭に電球が光ったかと思うと
アイリが顔を上げて言った
「師匠を頼みましょう!」
はい?
アイリが言いたいのははこう言う事だった
わたしのお母様のね、友達だった人で帝都にまだ住んでいる人がいるのよ!
小さい頃にあった事しかないけどね
それでね!その人はとてーも
剣が強いのよっ!
魔法も凄い強かったからわたしもついでに訓練してもらえるかもしれないわ!
と興奮気味におっしゃっていた
確かにその人に教えてもらえば
随分マシになるかもしれない…
図書館で調べ物が終わったら
冒険者登録しにいくか
それでその師匠ってのに会いにいくか
「よし。アイリ、今日は図書館に行くからその人の所を訪ねるのは明日にしよう。」
「わかったわ 。それじゃあ、行きましょ?」
部屋に荷物を置いて
アイリと街を散策する事にした
といってもたいしてお金は
たいして持って居ないからただの散歩になるけど
「アイリ
図書館に行かないか?
場所はどこにあるんだっけ?」
「ん。
帝立図書館はこの通りを真っ直ぐ帝城の方に歩いて行けば右手に見えるはずだわ。」
帝都の道を帝城に向かって歩いて行く
しばらく歩いていると右斜め前の方に薄っすらと大きな建物が見えてきた
その建物の前に立つとその大きさが良く分かった
高さは30m程か…
全体的に白く
大理石の様な2本の石の柱の間には重厚な木の扉が付いている
「ここならなんでも置いてありそうだね…」
「ええ…
この図書館には国が出来る以前の歴史書も眠っているそうよ
取り敢えず入ってみましょ?」
帝立大図書館のドアを開け中に入ると視界は本で埋まった
実際には棚の間には隙間があるさのだが、
正方形思っていた図書館の中は円形で今自分たちの立っているエントランスの場所を除いた全ての壁には本がびっしりと詰まっていた
軽く億は超えているかもしれない
隣にいたアイリも思わず子供みたいに声を漏らしていた
「……わぁぁぁぁぁ…」※アイリです
とか言う俺も声に出して驚いてしまう
「…こりゃすげぇ…」
ここなら俺の知りたい事が
あるかもしれない
「ち、ちょっとわたし魔術の本みたいかなーって…」
「はいはい
いいよ探してきて
俺は異邦人辺りの文献を探しとくから。
あ、でも俺にも見せてな」
そわそわしていたアイリと別行動にした
俺も魔法は興味あるしな
うんわかったわっ!
アイリは嬉しそうに
トテトテと走り去ってしまった
それにしてもこの図書館…
やはり異常に広い
上を見ると掠れるほど先に天井がある様な錯覚をおこす
もちろんそこまで高くはないが…
この中から探すのは骨が折れそうだ
ふと後ろから声がかかる
「そこの坊や、探し物かい?」
良く透る声色に知性的な
言葉遣い…
振り返ってみれば
身長は自分と同じくらいだが骨格からして決定的に違う八頭身で、髪は肩より少し伸ばしていて、肩を出した珍しい形のローブの様な物をつけている
脚はストッキングみたいな物を履いていて
異性どころか同性ですら虜しかねない色気を放っている
肌の色はかなり透明な白
睫毛は驚く程長く目は切れ長
唇は瑞々しく鼻筋は高い
髪の色はシルバーで
瞳の色は緑でとても綺麗だ、
まるで女神の彫像に命を吹き込んだ様な完成された美があった
しかし良くみると耳が長い
振り返った瞬間
エルフの顔がわずかに引きつるが
それには気がつかなかった
ー森の民エルフー
正直フィクションでしか知らない
エルフを目の前にした時
一瞬で虜になりそうだった
だがエルフに会えたというテンションが
僅かに勝り、いくばか平常心を
取り戻せた
「そうです。あ、あなたは?」
「ッ!!…おぉ、自己紹介がまだだったな。妾の名はピア、
ピア・エルフォバリアだ
坊やは?」




