七話
整備された土の道をアイリと2人で歩いている
かれこれ1時間ほど歩いているのではなかろうか
アイリによればあと30分程歩けば帝都アレンに着くようだ
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
先の方で悲鳴が聞こえた
「もう目の前は帝都なのに!
盗賊に襲われてるっ!」
「なっ!…クソッ!」
目を凝らすと100m程先で
馬車が倒れているのがわかった
周りには三人程の大柄な男に
囲まれている小さい人影が
2人程
地面に倒れている人影もちらほら見えた
頭が思考を始めるより早く
動いていた
速く地を蹴り進むイメージ
踏み込もうとした瞬間、
身体の奥から不可視の何かが
湧き上がる
これが体内のマナを魔力に変換した時の感覚なのだろうか
それを丁寧に踏み込む脚に集中させ纏わせる
身体保護や身体能力向上や身体強化の術の
最上級技
ー身体覚醒術ー
筋力や運動能力が
飛躍的にUPする
身体弱強化や身体強化の最上級である
これがメイがモンスター戦
無意識のうちに使った
技の正体であると
アイリに教わっていた
この世界に来てからメイは無意識にこの術を使っているらしい
これをつかえばどうなるかは
自明の理
何故発動するのかわからないが…
踏み込みと同時に
地面が砕け地面に平行に
飛ぶ様に走る
隣のアイリを置いていってしまったがこの際仕方ない
盗賊の1人が手入れされていない
少し錆び付いた
両手持ちの両刃剣で人影の1人に斬りかかった
くそっ!まにあえっ!!
世界がゆっくりと流れる
感覚が冴え渡る
もう一つ常に発動しているのは
ー感覚覚醒術ー
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、
脳、思考回路など感覚器の機能が
飛躍的に上がる
感覚弱強化や感覚強化の最上級である
もちろんこの世界に来てから感覚は冴え渡っている
やはり身体能力と同じで常時発動してるらしく
制御出来ない限りどーしようもない
これをつかえば
とてもわっしょいな事になるのは自明の((ry。
日常で常に発動しているので
どちらの能力もすこぶる面倒な事になっている
モンスター戦の集中力も
こ今思えばこれでは無いだろうか…
アイリから貰った護身用の魔法剣を左腰から引き抜く
そして引き抜くと同時に地下室で
起きた事を再現する
あの後も幾つかアイリの説明を受けているから体内のマナを変換しやすくなっている
体の中心で力が湧いてくる
魔力に変換出来ている証拠だ
右手に持つ魔法剣に魔力が集中して短剣が光を纏い刀身がのびた
うまくいったようだ
ガキイイィィィィィィン!!
剣を振りかざした盗賊と人影の間に滑り込み魔法剣で盗賊の剣を受け止めた
だが盗賊の剣はしっかり手入れされて無かったのか鍔迫り合いを
する前に折れてしまった
イキナリの乱入者に剣を折られ
盗賊も一瞬驚く、だがすぐにエモノが増えた事に声を上げた
「くそっ!どっから来たこのガキぁ…もお終わるってのによ!」
盗賊が距離を取る
今斬りかかろうとしていたのは
どうやら盗賊の頭のようだ
周りには二人程盗賊が倒れている
残りの盗賊は頭を入れても
三人だけだった
小規模な盗賊団のようだ
これだけでも運は良い方だろう
盗賊の1人が斬りかかってくる
真上から錆び付いたシミターが振り下ろされる
後ろにはまだ人の気配があるから
避けられないか…
盗賊と目が合った瞬間
そいつの表情は地下室に居たモンスターと変わらなく見えた
口角を吊り上げ
にんまりとワラった
しかし殺しなど許されない日本からきたメイにはたとえそれが盗賊だろうとも躊躇われた
でも、…やらなきゃければならない…
やらなきゃ殺られる
これはこの世界では常識だ
弱肉強食
向こうの世界では
忘れ去られていた
本能に火がつく
その声は呟きにならず聞こえた者はいなかったが
ユウトはこの世界に少しずつ
慣れていった
視力も強化されている為
振り下ろされるシミターを完全に見切ってから魔法剣で左に受け流す
ガッ!キィィィィィィィ!!
軽く耳を塞ぎたくなるような金属音が鳴る
体制を崩し左脇に逸れる盗賊
そこでさらに集中し
身体の中心から変換され湧き上がる魔力をさらに短剣に上乗せさせる
一瞬光りが増し、短剣に
より一層強く光が纏わりつく
そして短剣を右上から斜めに振り下ろす
盗賊はあり得ない事に上半身と下半身が分かたれ地に転がった
その盗賊は自分の下半身が膝をつき倒れるまでを見たところで
地面と抱擁し息絶えた
残った盗賊はたじろぎすこし距離をとったその時
「火の精霊よ!我の魔力10を糧に!!!
《双子の火弾》!!」
追いついたアイリの合わさった両手から放たれたのは
2つの火の玉
それが直線的ではあるが高速で放たれ自分と盗賊の間に落ち盗賊たちを囲み燃え上った
「逃げるわよっ!!」
アイリの言葉のまま生き残った二人のうち一人の手を引きその場から全力で逃げる
あれが…魔法…
「あっつぅあああ!!!チクショオォ!
しかたねえ!ここに居ると目立っちまう!引くぞ!!」
生き残った盗賊たちは脇の森へ走って消えて行った
後ろをみると既に盗賊は姿を消していた
もう大丈夫だと思いスピードをゆるめると
後ろから声がかかる
「あ、あのっ。」
意識が戦闘に向いていて助けた子達の顔を見ていなかった
「あ、はい」
どうやら2人とも女の人のようだ
「先程は危ない所をありがう御座いました
私はアンマグル魔法学院1年のセシリー・デュノア・アルフォンス
リノン帝国の貴族ですわ。
気軽にセシリーと呼んでくれて構わないわ
そしてこっちが」
「わたくしはセシリー・デュノア・アルフォンスお嬢様のメイドを務めております
リディア・ベリエフと申します」
へぇ、アンマグル魔法学院か、
面白そうな所だな
「わたしはアイリーン・オルコットです わたしも気軽にアイリって呼んでね」
「ナナミヤ メイ よろしく
それより。
大丈夫でしたか?怪我はない?」
手を引いていた女性に出来るだけ丁寧な口調で話す
よく見ると2人とも綺麗な女の人だ
1人目は濃紺のストレートな髪を腰まで伸ばした濃紺目の女の子顔はヨーロッパ系の顔をしている
腰には細身の剣を吊るしている
なにやら制服のの様な服を着ていて
上から黒めのローブを羽織っていた
これがアンマグル魔法学院の制服か
2人目は濃緑の髪を肩まで伸ばした緑目のメイド服の女性
メイドなのに
腰からダガーをさしている
年は2人ともアイリと同じくらいか
「私は大丈夫ですがお嬢様が脚を…」
メイドのリディアさんは
不甲斐なさそうにしている
セシリーさんが右足を怪我してるみたいだ…
「ちょっとじっとしてて。」
傷口は5cmほど太腿が切られていた
傷は浅いみたいだし水ですすぎ、アイリの持っていた薬草
_キズの治りを早めるらしい_
を傷口にぬる
そして中に着ていた自分のシャツを細めに引き裂き傷口をふさぐように巻き縛る
こんな感じでいいだろうか…
知識が曖昧なのだ
回復魔法でも習いたいものだ
しかし今セシリーの血を処理していて改めて思ったが、
この世界に来てから血を見ても日本にいた時にあった吐き気とかは無い
盗賊を殺した罪悪感はあるが、
なぜか心はいつも通りだった
殺したのが盗賊じゃ無ければ
違ったのだろうか
でも今は答えもでなさそうだし…
とりあえずは思考と意識を現実に戻した
「よしこんなもんかな
帝都に着いたら直ぐに病院にいかなきゃな
じゃあセシリーさんは背負って歩くよ。」
「あ、ありがとう御座います
中々の手際でしたね!
って…い、いえっ!
メイ様の背中に乗るだなんて…
それとメイ様は命の恩人ですので私の事は呼び捨てで呼んでください。」
「ちょっと!セシリーさん傷口が開いちゃいますよー ここは素直にメイの背中に乗ったほうがいいよ?」
(私もメイにおんぶされたいわー)
アイリもその方が良いようだ。
あれ?機嫌わるくなってる。。。
しかも様付けかよセシリー
頬をやや赤く染たセシリー
そんな細かな事に気がつかないほど
メイはセシリーを背に背負って
悶えていた
「(む、胸がぁぁぁぁ。
セシリーの胸があたってるー!
しかもお、大きい…これ、絶対アイリよりある…)」
背中の感触的には多分Dくらいあるのではないだろうか
なんかアイリがなんか睨んでくるがそんなはずは無い
「メイ…声、漏れてる。」
「えっ…ひやっ!ちょっとメイ様!?」
「ふふふ。青春ですわね。笑い」
「そ、そんなっ…ち、違うんだ!これは!ふ、不可抗力なんだ!」
どうやら自分の思考制御は甘いようだ
ちなみにセリフは上からアイリ
、セシリー、リディアさんだ
帝都の城壁の前に着いた時、
門の前の衛兵が俺の頭に大量のたんこぶが出来ているのを見て
小声でがんばれ
と言ってくれたのには
思わず
惚れた




