四話
俺は一瞬呼吸をする事を忘れてしまった
リノン?フィテリア?アヴェルン?
そこまでならまだ地球の中から探す気にはなった
だが、帝国?
そんな名前が付く国なんて無い
少なくとも、俺の世界には…
そこでやっと頭が慣れて来た、
いや、諦めたとでもいうべきなのか
取りあえずもたつくばかりだった俺は一歩踏み出す事にした
「ここは地球じゃないのか?」
「メイはどこの国から来たの?そのチキュウって所?」
アイリは地球がどこか別の国の名前だと思ったようだ
「いや、日本って言う国から来たんだ。」
「ニ…ホ…ン聞いたこと無いわ。少なくともこの世界の地名には無いわ。」
アイリはさらっととんでもない事を言った。もちろん聞き逃さない。
「じゃあ。ここは異世界!?」
「ごめんなさい…メイにもメイのの生活があったはずなのに…
でも、どうしても助けが必要だったの……」
アイリの目尻に涙が浮かぶ
故郷の風景が、友達が、家族が
頭に浮かんで来た…
こんな事ならゆめに一回でいいからじゃんけんで勝ちたかったなあ
くだらないけど
もう二度と手に入らないかもしれない日常
そんな小さな幸せの事も頭の隅で考えながら…
もしここで帰る事を強く望めばアイリは帰してくれるかもしれない
逆に帰す方法がないのかもしれない
なんとか言葉を紡ぐ…
「いや、来たからにはやる事やらなきゃ帰れないでしょ!」
自信など何も無い
だが不思議と今すぐ帰りたいとは思わなかった
帰る方法はいつかアイリに聞くか
自分で探せばいいじゃないか
アイリはその言葉を聞くと
ありがとう、と言い
涙を流した
しばらく寄り添って背中を撫でて落ち着かせてあげていると
泣いて居たアイリが顔を上げた
目元は少し赤くなっているがもう大丈夫そうだな
「ありがとう。メイは優しい人ね。
でももう大丈夫よ、そろそろここを出ないと危ない。」
元の調子に戻ったアイリは途中から険しい口調になった
「どうかしたの?何かここには長居出来ない理由でも?」
「まぁ、そんな所よ。
ここは最前線から近いの、
今は賢竜がわたし達を守ってくれて居るから大丈夫だとは思うけど
最近はまた奴らの動きも活発になってきているの
夜は奴らの動きも活発になるわ!
奴らは血の臭いを感じ取ってくる。
早く近くの街に逃げましょう!。」
アイリの危機迫ったような口調に本能的な危機感を感じた。
賢竜はどうやら味方のようだがどうやら奴らの残党、
とやらは俺らの敵のようだ。
他にも聞き慣れない単語があったが、
ここでは聞いている暇はなさそうだ…
この世界の時間は分からないが
太陽の位置からして大体
日本で言う所の4時頃のはず
もちろん用心に越した事はないがアイリの言う敵が来る時間まではまだ時間がある筈だった
ーそのときだった。
首筋にチクリと嫌な感じがする
アイリが何か言いかけたのでその口を指で塞ぎ静かに、と指示をだす
さっきのはアイリのセリフはフラグか…
どうやらアイリも気がついていた様で素直に頷き、ベッドの左脇から短剣を取り出した
アイリはメイに聞こえる程度の小さい声で、
「…護身用よ…この短剣は魔法剣で
魔方陣が込められてるの
メイは魔法の事は知らないと思うから使えなくて当たり前だけど、
魔力を込めれば切れ味が上がったりするの
まぁ
魔法使えなくても普通の短剣として
勿論戦闘には使えるわ、
ちょっと貴重な物だけど
一応持っておいて。」
有難い…
魔法は気になるし使って見たいけど
今は我慢しなきゃな
流石に手ぶらは心許なかったから少し安心した。
アイリは大きな杖を両手で胸の前にもち緊張しているのか肩を強張らせていた。
軽く肩に手をかけ、
「心配しなくても大丈夫だよ」
少しアイリの緊張がほぐれた所で
先に部屋からでる。
もちろん短剣など使った事もなく
戦闘経験などチンでピラな方々との
メンチビームからの
軽い肉弾戦位だ…
でもここは異世界だ何があるかなんて分からない
この場所が今、かなり危険な場所に居る
というのも。
あの時の殴り合いも少しは役に立つのかも知れない…
だが数秒後
地下室に降りたメイは異世界で最初の壁にぶちあたる




