木こりの息子
森の入り口に住む木こりの息子は笑わなかった。
木こりの仕事を手伝うときも、同じくらいの子どもと遊んでいるときも小さな口をきっと結んで決して笑顔を見せることはなかった。
ある日森に住む魔女が村の人々にこう予言をした。
「木こりの息子を笑わせた者には大金が手に入るだろう」
それを聞いた村の人々はこぞって木こりの息子を笑わせようとした。
ある者はご馳走を用意し、またある者は曲芸一座を呼び寄せ、物語を語り、名品珍品を見せ笑わせようとしたが、息子はくすりとも笑わない。
それどころかご馳走には手をつけようとしないし、曲芸は顔を覆って見ようとしない。
一体どうしたものかと不思議に思って村の人々が息子の生活を観察してみると、木こりは息子がご馳走を食べたり、曲芸を見て楽しんだりすると嵐のように怒るのだ。
これでは木こりがいる限り息子が笑うことはないだろう。
そこで村の人々は皆で木こりを裁判にかけることにした。容疑は息子への虐待だ。
裁判はとんとん拍子にすすみ、木こりは絞首台へと上ることになった。
処刑には木こりの息子も立ち会った。
足台が払われ、木こりが生き絶えると、村人たちは息子にこう言った。
「さあ、おまえを苛める者はもういないよ。笑いなさい」
すると息子は笑った。
しかしその笑いはまるで悪魔が笑ったかのように冷たく不気味で、人々は凍り付いた。
そして恐怖のあまり、息子をも殺してしまった。
木こりの家からはたくさんの金貨や宝石が出てきて、魔女が予言をしたように村の人々は大金を手に入れたが、彼らは誰一人として生涯笑うことができなくなった。