勇者と伝説の剣
魔王に返り討ちにあった僕は、まず魔王に対する切り札となる伝説の剣を探すことにした。
そしてついに伝説の剣が眠るという祠にたどり着いた。
『よく来ました、勇者よ。わたしは精霊。古の勇者との盟約により、そなたに伝説の剣を授けましょう。ですが、その前に頼みがあるのです』
「頼みですか? それは構いませんが、まず伝説の剣をいただくわけにはいかないのですか?」
『この剣を私に託した古の勇者曰く「平和のための労を惜しむ者に勇者の資格なし」と』
「なるほど、剣を手にするための資格を示せと。わかりました。それでなにをすれば?」
『近くの村が魔物に脅かされています。その村を救ってもらいたいのです。ただし、その魔物は特殊な魔道具がないと倒せないのです』
「その道具はどこに?」
『その村のどこかにあるようです。その辺の民家のタンスとかを片っ端から探せば見つけられるでしょう』
「いや、勝手にそんなことしたらダメでしょう。勇者としての前に人として」
『大丈夫です。古の勇者曰く「お前の物は俺の物、俺の物も――』
「わかった、わかりましたから! あまり僕の中の勇者像を壊さないでくださいよ、まったく」
精霊との会話に疲れた僕は、とりあえず精霊の頼みを聞き、村の魔物を倒して戻ってきた。
「精霊様、お願いされた件を解決してきましたよ」
『おお、あなたこそ真の勇者! 今こそこの伝説の剣を授けましょう』
精霊の力により目の前の空中に、ほのかな光を放つ一振りの剣が現れた。
その剣を握ろうと手を伸ばした時――
【持ち物がいっぱいでもう持てません。何か捨ててください】
「あー、荷物袋がいっぱいだったの忘れてた。とりあえず両手は空いてるから受け取ってから整理しよう」
【持ち物がいっぱいでもう持てません。何か捨ててください】
「……はい。じゃあせっかく伝説の剣が手に入るんだし、ひとまず今まで使ってた剣を」
僕は腰に下げていた剣を鞘ごとはずすと、その場にそっと置いた。
そしてあらためて伝説の剣に手を伸ばす。
【勇者は伝説の剣を手に入れた!】
ついにやったぞ! これで必ず魔王を倒してみせる!
伝説の剣を手に入れた僕は、精霊に一礼し踵を返した。
するとその背中に精霊が声をかけた。
『勇者よ、ひとつ言い忘れていました。その剣はまだ封印が解けていませんから武器としては役に立ちませんよ』
僕はあわてて先ほど床に置いた剣を探した。
確かにそこに置いたはずの剣は、なぜかいくら探しても見つけられなかった。




