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はじめましてから始まる新婚生活 ~少子化対策で相性抜群(?)の美少女と同棲することになりました~  作者: 岩柄イズカ


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7話『よくあることです』


 ペンタブが届いた土曜日の夜。

 夕食の準備を終えた蒼太は、エプロンを外しながらましろの部屋がある二階へ声をかけた。

「ましろー、ごはんできたよー」


 返事がない。

 しばらく待ってもう一度声をかけるが、やはり静まり返っている。


(……寝てるのかな?)


 部屋の前まで行き、軽くノックしつつ呼びかけてみる。が、やはり無反応。


「……入るよ?」


 そっとドアを開けて中をのぞき込む。

 部屋の中は薄暗くて、モニターの白い光でぼんやり照らされていた。

 そしてましろはと言うと、パソコンの前に座り買ったばかりのペンタブに筆を走らせていた。

 耳にはヘッドホン。シャンシャンと、最近やってる深夜アニメのアニソンが僅かに聞こえる。

 少し近づいてみるが、やはり蒼太に気付く気配はない。完全に絵を描くのに熱中しているようだ。


(……やっぱり、絵を描いてる時のましろって格好いいよなぁ)


 職人のオーラというかなんというか、普段はぐうたらして家猫みたいにゴロゴロしているましろが別人みたいにかっこよく見える。

 ペンの動きは迷いがなく、パソコンに表示される画面にどんどん絵が描き上げられていく。

 描いているのは蒼太が昼間リクエストしたアニメのヒロイン。夏の砂浜で、主人公たちと遊んでいるワンシーンだ。


(僕のリクエスト……こんなに真剣に描いてくれてるんだ)


 適当にやってもよさそうなものなのに、ましろは脇目も振らず集中している。

 あのましろが自分の為にこんなに頑張ってくれてるんだと思うとちょっと感動もので、蒼太はしばらくましろが描く様子を見守っていた。

 

 ただしばらくして、ましろの手がふいに止まった。

 ちょうどヒロインの胸元を描いている最中。ペン先が宙に浮いたまま、じっと画面を見つめている。

 さっき描いた線を消して、また引き直す。だがそれも気に入らないのかまた消してしまう。どうにも納得がいかないようだ。


(どうしたんだろ……)


 息を潜めたまま様子をうかがっていたその時だ。――ましろが、いきなり自分のシャツの裾を掴むとそれを胸元までめくり上げた。


「……っ!?!?」


 咄嗟のことに、思考が完全に止まった。そして悲しいかな、思考が停止していると男はついその光景を目に焼き付けてしまうものなのだ。

 モニターの光に照らされた肌は白くて、どこか妖しい雰囲気があった。行ったことは当然無いけど、夜のお店ってこういう雰囲気なのかなとつい場違いなことを考えてしまった。


 ましろはブラジャーに包まれた自分の胸をジッと観察する。

 シャツの裾を口で咥えると、左手で胸を揉んだり、持ち上げたりして形を確かめている。

 右手の方はペンを握り、自分の胸を見ながら再びすらすらと線を引いていく。どうやら自分の胸を参考にしているようだ。


 そしてようやく納得がいったのか、ましろがシャツを戻すのと同時に蒼太は正気に戻った。

(……はっ!?)


 幸か不幸か、ましろはこちらに気付いていない。


 蒼太は息を止めたままそっと後ずさり、音を立てないように外に出る。

 扉を静かに閉めた瞬間、ずっと止めていた息を一気に吐いてその場にしゃがみ込んだ。


「~~~~っ!」


 顔が熱い。心臓がバクバク鳴っている。

 以前にも風呂上がりのましろを見てしまったことはあったが、今回はあの時よりだいぶじっくりと見てしまった。


『あらら、蒼太さんまたやっちゃいましたねー』

「わああっ!?」


 突然頭上から声がして、蒼太は飛び上がりそうになった。見るとアイがニマニマしながら蒼太を見下ろしている。蒼太はワタワタしながら弁解した。


「い、いやあの、アイ、さっきのは……」


『大丈夫ですよー。先ほどのも明らかに事故ですので、特にペナルティはありません。……まぁ、蒼太さんはなかなかのラッキースケベ体質なようなのでもっと気をつけた方がいいとは思いますが』


「うう……」


『女性イラストレーターの方は自分の身体をモデルにする方が結構いらっしゃいます。ましろさんもそのタイプみたいですね』


「そ、そうなんだ……」


『ちなみに一昨日も同じように自分の身体をモデルに絵を描いてたんですが……その時に遭遇しなくてよかったですね~。流石にあれを見られたらましろさん、泣いちゃってたと思いますから』


 ……一昨日、ましろはいったい何をしていたのだろうか? そんなことを考えないように、蒼太は必死に妄想を振り払う。

 何にせよ、今後ましろの部屋に入るときは気をつけようと蒼太は胸に誓うのだった。


 †


 その後の夕食。

 ましろはデザートのプリンを美味しそうに食べていた。


「ん~、美味しい♪ あんた、こういうスイーツまで作れるのね?」


「う、うん。今日は学校休みで時間あったし、ましろに喜んでもらえるかなって」


「ふーん……ところで、なんか私のプリンの方が乗ってるクリームとかフルーツとか明らかに多かったけど……」


「それは……その……お詫びというか……」


「お詫び?」


「あ、いや、何でもないです。はい……」


 アイがまたニマニマしているのを横目に見つつ、蒼太はちびちびプリンを食べるのだった。

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