漆 暗い道筋
「陸...か。」
数ある部屋の中でも異質な漢字一文字の部屋。
絶対、何かあるに違いない。
「もしここにどぉなつが居たら...」
「その時は走って逃げればいい。」
「俺足遅いんだけど!?」
「じゃあ気持ち後ろで待っとけ。」
アツシは少し後ろへと下がり、俺は鍵を使い、陸の部屋を開ける。
中は、これと言って変なところも無い。小さな本棚にテーブル、椅子だった。
安心した顔でアツシは俺の横に戻ってくる。
「よし!じゃあ探索だな!」
さっきまで怖がっていたアツシはどこへ行ったのか勢いよく部屋の探索を始めた。
俺たちが部屋の中を探して見つけたのは、【赤い本】だ。
テーブルの上に1冊だけ置かれていたが、開くことも持つこともできなかった。
「これは...飾りか?」
「多分な。なんでこんなもんがここに固定されてるかはわからないが。」
「だな...。あ。おい、あれ見ろよ。」
「ん?え?...本棚の上に何かあるな。」
アツシが指刺す方向には、小さなかごが置いてあった。
ただ、本棚は固定されているから揺らすこともできず、どうにか取る方法を探さなければいけない。
俺はその場にあった椅子に目を向けた。
「なぁ、この椅子足場にして届かねぇかな。」
「いやーどうだろうな、ツバキの身長でも...ぎり無理なんじゃねぇかな。」
俺の身長は170後半程だから決して低いわけではないが...まあ難しいか。
「あ!じゃあさ、俺が足場になるからお前が上乗れよ。」
「俺がアツシの上に?」
「おう。椅子の上に乗った俺の上にさらにツバキが乗る...。どうよこれ!」
あまりにも危なすぎると思ったが、やってみるしかないとも思った。
本棚のすぐそばに椅子を置き、その上にアツシが乗った。
幸い椅子は少々大きいものだったから、そのまま肩車になれた。
「んっ......お、おい!早く取れよ??」
「わかってるよ...。来た、」
俺はかごの取っ手をつかんだ。そのままゆっくりと肩から降り、何事もなくかごを手に入れた。
かごの中に入っていたのは、パイナップル。
「パイナップル?」
「お!パイナップル!俺好きなんだよ!食べようぜ!!」
「いや...これ多分中身詰まってないぞ。」
かごを持った時に感じた重量は、中にパイナップルが入っているにしては軽すぎる。
それに...振ると何か音がする。
「中に何か入ってるな...」
「えぇー...というかそうだとしてもどうやって開けるんだよ。」
「それは......あ、これだ。」
俺はずっと持っていたナイフを取り出した。
これなら上手いことパイナップルを2つに切れるはずだ。
まな板は無いけど、まあ仕方ないだろ。
「お前そんなの持ってたのかよ!?」
「念のためな?最初ここに来た時に見つけたから持っといたんだ。」
そのままパイナップルを2つに切ると、やはり中には物が入っていた。
それはライターだった。
「.......なんでパイナップルの中にライターがあるんだ?」
「...知らんよ。もう何でもありだ。」
確認すると、そのライターはまだ中身が入っており、火が付いた。
ほんの小さな明かりだが、これがあればあの暗い部屋もどうにかなるかもしれない。
リビングまで戻ることを決めた。
「アツシ、戻るぞ。」
「そうだな、これがあればあの部屋もどうにかなる!」
「どぉなつには気をつけろ?」
俺らは部屋を出て、リビングまでの道を辿る。
「俺ちょっと走っていくわ!」
「止めとけ、出くわしたらどうするんだよ。」
アツシは俺の言葉も聞かずに走り出した。
すると、T字路の部分でアツシの動きがピタッと止まる。
「...アツシ?」
「......うわぁぁぁぁ!?!??!!?」
アツシは階段へと急いで走り出した。
そしてもう何度も聞いたあの大きな足音も同時に聞こえて来る。
どぉなつだ。どぉなつは一目散に曲がり角を曲がり、アツシを追いかけ階段の方へと走り出した。
幸い、俺には気付かなかったみたいだ。
「はぁ...だから言ったのに。」
心の中で死ぬなよーと祈りつつ、俺はリビングへと向かった。
リビングに着くと、もう1度あの暗かった部屋に入る。
やはり暗いが、ライターを付け、何とか見えるようになった。
あまり部屋は広くないようだ。
適当に歩いていると、少し変わった足音の床があった。
「ん?なんだ、?」
俺はそこにしゃがみ込み、手で軽く叩いてみる。
金属だ。
「これは...床というよりも、扉だな。」
少し周りを見ていると、部屋の端にスイッチがあったのでそれを押した。
すると、部屋の明かりがついた。
そのことに安心した俺は、ライターを消し、さっきの床をじっくり見てる。
「見た感じ、地下室の扉だろうか...。ノックしても中で響いている感じがする。」
何度か開けようと試みたが、鍵がかかっている。
取っ手の横にある鍵穴に入れなければならないのだろう。
「ここには、きっと何かある。」
それを確信した俺は、その部屋を後にし、再びこの館を練り歩くことにした。
1つだけ気になった部屋がある。1度行き損ねてしまった部屋。
脱衣所だ。




