零 プロローグ
「お前ら...どこ行ったんだよ...」
静寂。
時計台のカチカチという小さな音だけが響く。
そんな中俺は1人で呟いた。
仲間たちとはぐれたという事実に直面しながら。
ー数日前ー
学校の帰り道、いつものメンバーと俺は声を交わす。
入学してからずっと5人で一緒に出掛けたり、遊んだり、そこらの友達とは違う。
俺たちは親友だ。
「あ、てか知ってる?」
「ん?なんだよ。」
シュウヤがみんなに声をかける。それに1番に反応したのはアツシ。
シュウヤが言うには、この近くの森の奥に、幽霊のような「何か」が出るという噂の館があるらしい。
そこにみんなで行かない?的な話だ。いわゆる肝試し。
「めっちゃ冬だけど?肝試しにしては寒すぎるでしょ。」
「そうそう、こんな冬にはこたつでみかん食べてんのが1番だよ~。」
サキとセナが続けて言う。
しかしセナに関しては興味ありそうなのが顔に出てる。ニヤついてるし。
「まあたまにはいいんじゃない?冬だからこそおもろいのもあるだろうし!」
乗り気なのはシュウヤ、アツシ、セナ。
ちょっと乗り気じゃないのは俺とサキ。
「ツバキはどう思う?」
「え、俺?」
急に話振られた。
うーん、行ってもいいんだよなぁ、別に。
でもサキが乗り気じゃないし...
「ツバキ、私の事気にしてるんだったら別についてくよ。こういうのって何もいないのがオチだし?」
「なら...行くか。」
「よっしゃ!決まり!!」
シュウヤのテンションが上がったところで俺らはその館に行くことが決まった。
その週の日曜日。
「よし!ここだな!」
「なあ、ほんとに入っていいのか?もし人とかいたら...」
「大丈夫だって!!ツバキは心配性だな!!」
それなりの森を越えた先にあるあまりにも異質な館。
誰か人がいてもおかしくないが...大丈夫なのか?
「はい!行くぞー!!」
シュウヤを先頭に、俺たちは中に入る。
鍵は...開いていた。
ガチャンとドアが閉まる音が鳴り、俺たちは全員中に入った。
「おぉー思ったよりも広いんだね。」
「サキちゃんあれ見て!時計動いてる!」
「えほんとだ、やっぱ人住んでるんじゃない?」
「館の中も......人がいないにしては綺麗すぎるもんな。」
全員がシュウヤの方を見る。
全責任をシュウヤに擦り付けるつもりだ。
「あ、いや、その......うん!帰ろう!!!」
シュウヤは1人で足早に玄関へと引き返す。
ガシャン!!!
「......え?」
その場の空気が凍り付く。
シュウヤは勢いよくドアノブを捻ったが、ドアは開かなかった。
鍵が閉まっていたのだ。
「な、なぁ...これって...」
「.........閉じ込められたな。」
焦るシュウヤに俺ははっきりと伝える。
ドアに鍵がかかってる、入ってから誰も触っていないのに。
俺たちはこの館に閉じ込められたんだ。
「うーーん...参ったね、」
「えこれって...脱出ゲーム的な!?!?」
1人だけテンション上がってるやつがいるが...
ともかく非常にまずい状況だろう。
人がいるにしても突然鍵が閉まるのはおかしい。
「とりあえず、落ち着いて...」
俺が話をまとめようとしたとき。
ドカン!!!
廊下の向こうで大きな音がした。
「っ!?」
全員の背筋が凍る。
何かがいるという決定的証拠に近い。
「今......音したよな...」
「うん、それも結構大きめの...」
「な、なぁどうするんだよこれ!!」
「落ち着けシュウヤ。焦っても何にも解決しないぞ。」
このままここで立ち往生していても、一つも変わらないだろう。
俺は覚悟を決めた。
「ちょっと見てくるよ。」
「はっ?1人で?」
「あぁ、1人で。みんなはここで待っててくれ。」
「危ないだろ!お前だけなんて!」
みんなが必死で止めてくるが、こういうのは1人で行った方が後々こいつらの行動が楽になるってもんだ。
だから俺は1人で行く。
「絶対戻ってくるから、な?」
「わかったよ...気を付けてな。」
「ツバキ、これ。」
サキが俺に渡したのは、お守り...のようなもの。
よくわからないが、それを受けとる。
「何かあったら、開けてみて。」
「わ、わかった。」
俺は4人の姿を後ろに、音が鳴った方向へと向かった。




