人生の交差点
休日。
イオンに買い出しに来た。
やっぱ時代はトップバリューだよな。
洗剤にトイレットペーパー、
聞いたこともないメーカーの菓子。
安い理由は考えない。考え始めると戻れなくなる。
カゴを片手にブラブラする。
さすがイオンだ。
家族連れ、年寄り、カップル、
それから程よく尖ったマイルドヤンキー。
ここは人生の交差点だぜ。
…とか考えてる時点で、
俺もまあまあ終わってる。
買い物を済ませて、帰る前の一服。
屋外の喫煙所へ向かう。
いた。
金の刺繍の黒のパーカー、下は黒いジャージ。
休日仕様のマイルドヤンキー。
壁にもたれて煙を吐いてる。
若い。でも、軽くはない。
よし!
「すみませーん」
彼女はちらっとこっちを見る。
「ナンパなんですけど」
正直に言った。
「今、暇です?」
「見ての通り」
「じゃあ一本吸う間だけでも」
「……いいよ」
火をつける。
「このあと帰る感じです?」
「別に」
少し間があって、
「帰りたくないけど」
「じゃあこれからご一緒に……」
「まさか」
即答。
乾いた一言。
「イオン、よく来るんです?」
「うん」
「地元?」
「そう」
全部短い。
全然掴めない。
「仕事は?」
「色々」
逃げ道が完璧すぎる。
「誰か待ってるとか?」
「私が全部やらないとダメな人、いるし」
さらっと言う。
「彼氏?」
彼女は煙を吐いて、こっちを見る。
「あたま、それだけ?」
完全敗北。
俺は困って、
逃げるみたいに煙草の話を始めた。
「煙草ってさ、悪いって分かってても
やめらんないっすよね」
彼女は黙ってる。
「別に吸わなきゃ死ぬわけでもないのに」
間を埋めるみたいに続ける。
「こんなの、
やめれば済むだけなのに」
一拍。
彼女は煙草を見て、
少しだけ考えてから言った。
「…でも、そうだよね」
声が、さっきより柔らかい。
「やめない理由、ないんだ…」
そう言って、
煙草を灰皿に押し付けた。
じゅっと音がする。
まだ半分残った煙草を揉み消しながら
「煙草以外も…」
ボソッと独り言みたいに言って、歩き出す。
「じゃ」
「名前、聞いてもいいです?」
振り返らずに、少し間。
「紗季…」
それから、立ち止まって一言だけ足した。
「ありがと。元気出た」
それだけ言って、歩いていった。
次の週、
同じ時間に喫煙所へ行った。
いなかった。
その次も、
その次も。
俺は煙草に火をつけて、
紗季とのやり取りを思い出す。
「やめれば済むだけ。」
フィルターを見る。
…俺もやめようかなー?煙草…
煙を吐きながら、
まだ分からない自分のままで、そう思った。




