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第三生徒会ルート 第六話

次回拠点と書き込んでおきながら、本編が続きます。

ごめんなさい

第三生徒会ルート


第六話


~曹巍カリン「・・・歯がゆい感じ、ね」


 集まった報告書をよんで、少しだけ安心した。

 第一生徒会でも浪人学生問題は看過できない問題としていたが、関われば引き取ることになり、再教育を必要とするため、そのための予算と平均成績低下を余儀なくされる。

 関わるべき問題ながら触れざる問題、それが浪人学生問題とされていた。

 が、報告書をみれば理解できる。

 第三生徒会は第一とは全く違うアプローチで事に当たり、極めて有用な人材を発掘しているようだ。

 音宮ねね、布宮恋、両名は、構成・目的・目標すべて謎とされる第二生徒会の中枢近くにいた生徒であり、この南洋校舎における謎の一つに肉薄している生徒のはずだった。

 そのために第二生徒会からの追っ手は多く、逃亡に次ぐ逃亡の生活を送っているはずだった。

 最終的には学籍を改変してでも第一に引き込むことを検討したが、先頃第三生徒会幹部に抜擢された旨の発表があった。

 布宮は総務で順当だろうが、音宮がなんと「主計」とずいぶんと古風な役職で就任していた。

 主計は過去、構内建設が多かった頃の名残の役職で、おおよその供給システムが形成された現在では、名誉職としての立場でしかなかったはずだった。

 が、主計といわれて私も思い至る。

 そう、再び校内建設の時代を引きずり出そうとしているではないか、と。

 つまり、第一生徒会である私へのサインだとも読みとれる。

 なるほど、と腕組み一つ。

 現在、生徒会幹部の拡充は難しい。

 なにしろ新学習手法の徹底により幹部候補学生の学習時間も必要とされているため、新たな役職や職種を振るわけにはいかない。

 ともなれば、既存の幹部で優秀な者に兼任させつつ、必要な人材を引っ張ってくるほかない。 

 いや、逆に妙手とも言える。

「・・・桂花!」



~音宮ねね「・・・信じられないことばかりですぞ」


 第三生徒会の主導で行われていた自習会は恐ろしい効率でした。

 少なくとも、通常授業の効率の10%増しという状態が全教室で維持されているという異常事態をみれば、本土の教員だって見学に来るだろうと思います。

 もちろん、ついてこられない生徒もいましたが、少なくとも落ちこぼれてはおらず、全体の2割落ち程度の成績は保てている状態です。

 同志一刀曰く、「南洋校舎に選抜されるんですから、この程度の成績はあたりまえでしょ?」とのことだった。

 確かに言われてみればそのとおりで、本土から選抜されているのだからこの程度の成績でいいはずもない。

 しかるに、われら「南洋ぼけ」してしまっている我らのはその自明の理すら理解できていなかったのが恥ずかしい。

 学力が低めであった脳味噌筋肉系だった幹部も中間試験では大きく点数を上げ、頭脳労働向きの幹部もさらに飛躍させていたという。

 加えて、中間試験まえに組み入れられた元第一の生徒の存在がおもしろい具合に作用しています。

 編入前の成績が嘘ではないかというほどの好成績。

 第一生徒会による身上書で書かれていたような無気力者など皆無で、みな親衛隊や総務部隊に組み入れられて生き生きと活動しているのです。

 配給の活動の時に、それとなく聞いてみると、北郷支隊の一人はあっけらかんという。

「ああ、確かに身上書は嘘じゃないし、成績も悪かったなー」

 キャベツを刻みながらいう彼女はにこやかだった。

「・・・でもさ、第三に入ったらさ、ご飯もおいしいし勉強はおもしろいし、こういう活動だって楽しいじゃない?エアコンの中の生活じゃあ解らなかったと思うんだ。」

 南洋校舎にあって部屋の中しか知らなかったんだ、と苦笑いの彼女。

「最初はさ、隊長かわいいじゃん? 粉かけよーかなー、なんて思ったけどさ、でもさ・・・」

 優しい笑顔の彼女はいう。

「隊長ってそういうんじゃないし、桃香様は泣かしたくないしさ・・・・・、わかるだろ?」

 かわいいウインクに私もうなずいてしまいました。

「ま、鞘当てしてる幹部連中を冷やかしてみてるのだけで大満足なんだわなー」

 あはははは、と笑う彼女の言葉が、よくよく解ってしまう私は彼女と同じ立場なのかもしれないと思いました。

 今までにない優しい気持ちで周囲をみると、浪人学生という者がいかに追いつめられている存在かを理解しました。

 食を、衣を、住を持たない、誰にも庇護を求められない。

 先日までの自分がいかに何も見ていなかったかを知ることができた気がします。

 人の余裕とは、やはり衣食住を満たされないと生まれないものなのだと考えさせられます。

「・・・違うんじゃないかな?」

 私の独り言に彼女は答えた。

「衣食住が足りなくても、余裕はありそうじゃない。」

 誰、という言葉はありませんでした。

 でも、私たちには、ある一人の人間の顔が浮かんでいました。ふわふわ髪のホエホエ少女。

 確かに今期以前は困窮と困難の固まりのような生徒会だったことを思い出す。

 それでも「お人好し」の評判は変わらなかったはずだ。

 あいもかわらぬお人好し生徒会が何故化けたかなんて決まっている。

「・・・おかげで体重計が怖いのです」

「ちがいない!」

 大きく笑う私たち。

 こんな自分を私は想像していただろうかと心の中で思っていました。



~李 真桜「なんでこんなところに建設したんやろ?」


 インフラの整備にあわないということで、投棄された校舎がある。

 主に第一が投棄するのだが、第二・第三にも組み入れられない校舎もある。

 何で、こんなところにたてたんだと思わせる山の上にある校舎や、崖から半分海に突きだしたような校舎とか。

 その中の一つの「洞窟校舎」に隊長とうちらは調査にきていた。

 先日の感冒少女の事があり、投棄校舎の一斉調査をしようと第一のカリン会長に提案したところ、了承されたからだった。

 そんなわけで、うちと隊長の支隊が第二との境界方面、凪と沙和が第一との境界方面に分かれて調査をしていた。

 成果はというと、思いの外大漁というと不真面目だけど、かなりの体調不良者や骨折などで動けなくなっている浪人学生を見つけた。

 その都度合同保健室へ運び込んでいるうちに日が暮れてしまった。

 そんなわけで調査対象になってる「洞窟校舎」で夜明かししようと思ったんだけど・・・


「なんで、こんなとこにたてたんやぁーーーー!!」

 うちの絶叫に苦笑いの隊長。

「何でっていっても、しかたないかなー」

 解ってる。

 仕方ないのは十分解ってる。

 でもな、校舎に着くまで五度もけつまづいたうちには理解でけへん!!

 工事車両かてはいっとるはずやろ?

 重機やてはいっとるはずや!

 なんでこんな鍾乳洞状態なんや!!

 危ないやんかぁ!! 

「確かに変だけどねぇー」

 隊長は手元のカンテラを高くあげて周囲を見回す。

 埋めた後も削った後もない、まるで自然の鍾乳洞っぽい。

「ま、あとちょっとで校舎だし、気にしない気にしない。」

 隊長の後に付いていったうちらは、目の前の校舎に度肝を抜かれた。

 自然の鍾乳洞の中に、違和感バリバリの中型校舎。

 中に入ればかすかに乾燥している空気。

 つまり、建物の中で結露なんかはおきとらんつうはなしや。

 逆にしけった装備を乾燥できるかもしれんな、とすら思えた。

 そんなお気楽なうちに隊長はまじめな顔を向ける。

 真剣な視線は、言葉じゃない何かを伝えようとしてるのが解る感じ。



 ・・・あかん、あかんで、抜け駆けはあかん。


 そりゃ、隊長がうちの胸を「ガン」見しとるのはしっとるで? うちよりチト劣る副長やら桃香はんの胸にも、桔梗先生や紫苑先生の胸にときめいとるのはしっとるで?

 せやけど、せやけど、こんなみんなみとるとこじゃぁ・・・


「真桜、静かに」

 優しくウチの口を手で覆う隊長。

 見れば支隊のみんなも口を手で覆ってる。

 ・・・耳を澄ませば、上の階で物音が。

「告げる。全隊員は休息準備を中止し、対応準備に移れ。北郷支隊は急ぎ校舎内探索、真桜支隊は救援対応。」

「了解や!」『了解!』

 桃色の思考が一気に抜けた。



~北郷一刀 「・・・もっと早く助けを呼んでくれれば!!」


「ええな! 一班二班は即応パッケージ展開、三班は周辺インフラの確認及び報告。三分でやりぃな!」

『了解!!』

 校舎前に展開する真桜支隊を後目に、僕ら北郷支隊は二回に到着した。

 ライトを照らせば、そこには真っ青の顔で転倒している女子が五人ほどいた。

「大丈夫ですか? 声は聞こえていますか?」

「聞こえていますか? 私たちは第三生徒会親衛隊緊急援助班です」

「政体に関わりなく援助が受けられます。助けはいりますか?」

 定格の声かけに、力なくうなずく女子たち。

「・・・ぅぅぅぁ・・・・」

 力なく指さす方にはまだ人影があった。

「真桜! ヒト班まわして! 総勢一五人だ!」

「了解や、三班インフラ確認中止! 隊長支援にいきや!」『了解!』

 やってきた真桜支隊三班は、スポーツドリンクを何本も持ってきた。

「よし、救護開始!!」『了解!!』

 てきぱきと始まった救護行為をみつつ、校舎の外に叫ぶ。

「真桜! 展開が終わったら、伝令とばしてくれ!!」

「わかっとる! 救護プランEXやな!!」

「たのむ!!」

 何とも優秀な奴は違うなー。

「・・・隊長、お話が・・・。」

 北郷支隊第一班班長、縁 のどかが囁く。

「彼女たち大半が第二なんですが、二人ほど元第一がいます。」

「・・・うん?」

 彼女が声を潜める理由が解らず、首をひねる僕。

「・・・元第一の二人は、追放された『元生徒会会長』と『元幹部』です。」

 どうしますか? と真剣な目できく彼女に、コツンと拳を立てる。

「要救護者、だよ?」

 でした、とばつが悪そうに彼女は苦笑い。


これより本編の話はシリアスに傾き、加速的な展開を迎えます。

疑問や謎は置き去りに、答えもなしにジェットコースター。

謎や伏線は後回しの展開の先をお楽しみください。


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南洋校舎では基本的に、小学4年生以上大学課程までの人間がいます。

小学生から高専レベルまでいると考えるとわかりやすいと思います。

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