第三生徒会ルート 拠点フェイズ1(改)
メインシナリオでは外れがちな日常と、メインの話では外れがちなキャラに焦点を当てていきたいと思います。
聖フランチェスカ学園 南洋校舎
第三生徒会ルート
拠点フェイズ1
~飛張 鈴「・・・さすがお兄ちゃんなのだ。」
今日は巡回をお兄ちゃんと回ることになった。
凪ねぇたちは不満いっぱいだったけど、鈴鈴だってお兄ちゃんとデートがしたいのだ。
そういうと、お兄ちゃんや凪ねぇたちが真っ赤になった。
「あのね、鈴鈴。デートじゃなくて「巡回」だってば。」
お兄ちゃんの話は分かるのだ。
けど、
「一緒に歩いてお弁当食べて、楽しくルンルンしてるのは、やっぱりデートなのだ!!」
びしっというと、何故か桃香ねえちゃんが鈴鈴の隣で同じポーズをしているのだ。
「そうそう、ずるいよね、ずるいよね! ねぇ、鈴鈴ちゃん!!」
「そうなのだ! 桃香姉ちゃんはお仕事さぼりたいだけだけど、鈴鈴は巡回の仕事なのだ!」
「ひどっ! まさかの裏切り、ひどっ!!」
崩れ落ちるオッパイ星人を無視して交渉し、鈴鈴はお兄ちゃんとのデート権をゲットしたのだ。
お兄ちゃんと巡回するのは、最近第一から第三に移ってきた人たちのエリアがいっぱいで、みんな嬉しそうにしていたのだ。
嬉しそうな顔のお姉ちゃんたちを見るのは嬉しいから、鈴鈴も嬉しくなれる。
悲しい顔や泣き顔はだめなのだ。
そういうと、お兄ちゃんは優しく頭をなでてくれた。
暖かくて柔らかくて、いい匂いの手・・・・。
「鈴鈴、りんりん! 僕の手は食べ物じゃないっ!!
・・・・あ。
あんまりにも美味しそうな匂いなので、口に入れてしまったのだ。
さすがはお兄ちゃん、侮れないのだ。
~馬場 翠「・・・・なんか、こういうのもいいよ、な」
なんつうか困るんだよな。
あいつ、北郷一刀。
生まれてこの方親族以外の男と口をきいたことがないってなお嬢様育ちなもんで、口をきくだけで一苦労だ。
「めし」「おかわり」「おはよう」「おやすみ」って、どこの亭主関白かってぐらいだ。
こんな無愛想なんじゃぁアイツだって愛想尽かすかな、とか考えてる自分がいやだった。
それでも、ほかの娘みたいに積極的になれる訳でもなし。
どうしたらいいんだろう。
はぁ、と深いため息をはいたところで、背後から声がかかった。
「翠さん」
柔らかなこの声はアイツ、北郷一刀。
見れば背中に鈴鈴が背負われてる。
「おいおい、巡回中にダウンかよ。」
拳を当てようとした私を笑顔で止めるアイツ。
「翠さん。」
あー、わかってるよ。
すぐに暴力に訴えるのは、ってんだろ?
解ってる解ってる、わかってるさ!
「・・・翠さんは子供好きなんですね。」
・・・・は?
「妹さんの面倒も、鈴鈴たちの面倒も、すすんでかってでたりしつけをしたり。」
常識ないことを怒ってるんだよ、ガミガミしてるだけだ。
「誰かがいわなければならないことがあります。それそすすんでできるって人って、なかなかいませんよ?」
だーかーら、なんであたしが子供好きなんだよ!
「そりゃ、大嫌いなら無視しますよね?」
思わず脱力。
「大好きでも甘やかしすぎると良くないって事は、僕も知ってますけど・・・・」
苦笑いで背中の鈴鈴をみた。
「・・・こう、無防備に『好き』ってされちゃうと、どうしても拒めません。」
そんなもんかな?
「そんなもんです。」
にこやかなアイツをみてると、胸の内がざわめく。
だから正直にそのことを言うと、アイツはにこやかにほほえんだ。
「それはね、『好き』って気持ちをちゃんと言葉にしていないからですよ?」
瞬間、私の頭は茹であがった。
「・・・そ、そ、そんなこと、恥ずかしくていえるかよ」
そうですか? っと首を傾げるアイツ。
「僕は結構いえますよ。」
と言ったところで、ひょいっと鈴鈴をおろす。
「もうちょっと乗ってたかったのだ。」
「お客さーん、サービス終了ですよー」
「残念なのだ。」
そんなやりとりの後すぐに、私の横に立つアイツ。
その隣に鈴鈴がたつ。
「じゃ、ちょっと練習してみましょう」
そういったアイツは、胸を張って大声で言う。
「だいすきだーーーーー!!!!」
周辺の生徒が驚いてこっちをみた。
「だいすきなのだーーーーー!!!」
鈴鈴も恥ずかしげもなく叫びをあげる。
「空も海も南洋校舎も、」
「ご飯もお肉もラーメンもみんなみんな・・・」
『だいすきだーーーーーー!!!!』
二人の叫びをきいた生徒たちは最初は驚いていたけど、そんな叫びをきいて頬をゆるませる。
二人の叫びが終わったところで拍手が響きわたり、アイツと鈴鈴はハイタッチを交わした。
「・・・と、こんな感じで思いの丈を口にしてみると、見る見る健康ですよ」
「鈴鈴はおなかが空くのだ。」
「そりゃよかった。」
そういいながら二人は再びハイタッチ。
「・・・そんなことできない、よ」
私の言葉ににこやかな笑みのあいつ。
「じゃ、ふつうの声で」
隣にたったままのアイツは言う。
「ハヤシライスは?」
少しの逡巡。
「・・・大好きだ」
いえた、そう思った瞬間、何故か胸の奥が軽くなった。
「第三生徒会は?」
「大好きだ」
今度は瞬間的にいえた。
「晴れた青い空は?」
「大好きだ」
そう、大空が好き、青い海も好き、星空も好き、流星も好き、満月も好き。
好きだ、好きだ。
「じゃ、僕は?」
「大好きだ!」
・・・あれ?あたし何を言ったんだ?
見ればニヤリと笑うアイツと鈴鈴がハイタッチ。
「僕も」「鈴鈴も」
『大好きだーーー!』
叩きつけられたマグマのように熱い言葉。
灼熱の想いに私は失神した。
気づけば自分お部屋だった。
胸の内にはあの声が響く。
北郷一刀のあの声が。
「・・・大好きだ、か。」
・・・なんか、こういうのも、いいよ、な。
~忠 紫苑「いいわー、青春ねぇー」璃璃「ねー♪」
翠ちゃんをかついで帰ってきた一刀君は、そのまま部屋に彼女を置いてきた後、キッチンに立った。
あまりに似合っている姿に感動してか、娘の璃璃が一刀君をまねしようとしていた。
食器を洗ったり配膳したりしかできていないけど、専用エプロンを作ってもらってからは、かなり張り切っているようだった。
「カズにぃ、おわったよぉ」
「ありがとう。」
優しく撫でつけるその姿は、この島にはない父性を体現したかのように思える。
女子校同然の離島に男子が来るときいて、猛然と反対したものだったけれど、今となっては押しやりたい過去に思える。
「あ、紫苑先生。今日は晩酌なしですか?」
「・・・もう、いい気分だったのに」
不満を漏らす私を見ていた一刀君は、ちょっと赤くなった。
あら? なにか見せちゃったかしら?
ちょっと自分でチェックしてみたけど、色気ポイントは見せていなかったはず。
何というか、彼も若さが溢れる年代なので、脂の乗り切った世代である私や桔梗は、あまり彼の刺激にならないように気をつけているのだけれど。
私が小首を傾げると、さらに赤くなった一刀君。
「・・・その、紫苑先生が余りにもかわいかったので。」
私の方こそ赤面させられてしまった。
「な、な、なに言ってるの、もう。」
思わずどもってしまった私の隣に座った璃璃は、にっこりと笑う。
「おかーさんかわいいー!」
あーもー、からかわないのー!
~馬場蒲公英「・・・いい雰囲気ですが・・・・」
もちろん空気は読みません。
あえて無視する、それが蒲公英クオリティー!!
そんなわけで、自己主張を開始した。
「ここにいるぞーーー!」
ずばーん、と勝手口からはいると、深紅ともいえる顔色になった紫苑先生が、ばたばたと食堂から退散した。
「ありゃ?」
予想以上の反応に驚く私へ、璃璃ちゃんが抗議満載。
「もー、いいところだったのに~」
「にゃははは、ごめんごめん」
でもねー、若い身空としては、貴重な若い男子をくわえ込まれるわけにはいかないのですよー
「くわえこまれません。」
いやいや、あぶなかったってー。
大人の手練手管で陥落寸前だったんだよ?
「あのですね、僕は紫苑先生を尊敬してるだけですよ?」
それじゃ、先生には女を感じない?
「いや、それは・・・・」
もじもじとした一刀君は、それでも正面から答えた。
紫苑先生の魅力は三点だと。
「成熟した女性の色気」「いろ?」
「愛情、友情、なんかの情愛」「じょう?」
「担当教科によらない幅広い教養」「きょう?」
・・・・・・
「りゃくして『しきじょうきょう!』はうっ!!」
~北郷一刀「・・・撤退」忠 璃璃「・・・了解」
タンポポ登場と共に一度去った紫苑先生が、音も無くぱんぽぽの背後に舞い戻ったのを見て、なんとなく寒気を覚えた。
それでも薔薇色に頬を染める紫苑先生が視線の先にいたから、色々と答えたんだけど・・・・
「略して しきじょうきょう・・・」
瞬間、真っ黒な表情になった紫苑先生を視線の端に捕らえつつ、璃々を抱えて緊急脱出。
「うわぁ、黒いママってひさしぶり~」
ひ、久しぶりなんだ・・・。
「きょうはお部屋が怖いから、桃香お姉ちゃんのところにとまろっと」
・・・いやぁ、流石にたくましいなぁ・・・。
~馬場 翠「・・・・?」
朝起きてみると、なぜかタンポポが布団を被ってガタガタ震えていた。
何かあったかな?
・・・まぁいいか!
今日も北郷の朝飯だ~
「だいすきだ~♪」
拠点フェイズ、いかがでしょうか?
メインシナリオはがちがちですが、拠点フェイズでは色々とグダグダやっていきたいと考えています。
御意見ご要望ありましたら、お願いします・