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第三生徒会ルート 第四話(改)

第三生徒会ルート


第四話



~北郷一刀「桃香さんって、ひとたらしだよなー」


 物資の分配や輸送保管が終わった頃、授業再開がされた。

 第三生徒会始まって以来の成績と他の生徒会への交易収入の影響でモチベーションは高く、高い学習意欲に直結していた。

 加えて、第一・第二からの正式な学習現場視察などが行われたことから、さらに優越感に近い感情をくすぐられていた。

 ともあれ、そんな優越感も一週間ほどで弾ける。

 劉蜀桃香会長から、第三生徒会で実施されている学習方法を第一生徒会にも開示した、という発表があったからだ。

 驚きとともに抗議が殺到し、生徒会本部まで人が集まるまでになった。

 全員を生徒会棟に入れるわけにはいかなかったので、代表者だけを引き入れてみれば、不満を持っているのは当初から第三生徒会を贔屓にしてくれていた人たちだと判明した。

 苦しい時期を耐え、この世の春を謳歌し始めたと思っていたのに、その春を捨てるのか、と怒りを弾けさせている彼女たちの手を桃香さんは握る。


「・・・あなたたちの求めるものは、贅沢な生活?」


 はっと息をのむ音が響く。

 正直に言えば、彼女たちの成績があれば、第一に移籍して贅沢な暮らしもできるし、そう考えて移籍した人間も多いと聞く。


「私たちはね、最高の学習環境と楽しい生活が目標」


 それは桃香さんが就任直後からいい続けてきたことだったという。


「百戦百勝は善の善ならざるけり・・・」


 戦争というものはそれ自体が浪費なのでしない方がいい。戦争になる前に決着をつけるのが一番だという話だ。


「みんなが遊んで暮らしたいというなら何もいえないけど、私たちの理想とともにあってくれるなら、こう考えて欲しいの」

「競い会える相手が外にいた方が楽しい、相手の技量が上えなぐらいの方が楽しいって。」


 そう、第三生徒会の影響範囲は狭い。

 しかしその狭い第三生徒会の色が第一生徒会の広大な支配範囲に広がっていくのだ、と。

 彼女たちは瞳を潤ませていた。

 その野心に、ではない。桃香さんの理想に胸打たれたのだ。

 それでこそ支持し続けた第三生徒会だ、と。

 でもしかし、なぜ第二生徒会には開示しないのか?

 そんな疑問に桃香さんは苦笑い。


「だって、いらないって言われるとねぇ?」


 すでに開示を打診しているが、独自の学習カリキュラムがあるのでいらない、と突っぱねられてしまったのだ。

 なんともったいない、と声を上げる生徒代表たちであったが、これからの目標について聞いて目を輝かせた。

 第一と共同の計画が動いており、「クラブ」という名の校内企業を立ち上げようとしているという話を漏らした。

 飲食や運輸、そして通信娯楽様々な分野の構想が語られたが、実のところ、この話がある前から第三では立ち上げたい組織があったのだ。

 そう、インフラの中でも放送報道に関わるクラブの設立は第三生徒会古参の生徒には希望の星であり、最終目標とも言う生徒も多いという。

 それの糸口を今回得たと聞いては心も躍ろうもの。

 さらには曹巍カリンも乗る気であり、来年度には開設開始も視野に入っているという。

 そこまで聞いてしまえば反対とか異議なんて単語は消え失せる。

 すでに説得は終わり、今後の啓蒙の段階に入った会話からはずれは僕は、裏口から抜けた。


「隊長、お待ちしてました」


 最近僕に対して敬語が板に付いてしまった凪。


「さってと、噂をばらまきにいくのー」

「せやせや、がんがん行くでぇー」


 沙和と真桜とともに巡回にでる。

 最近支配学区の拡大により、巡回に時間がかかるようになってしまったことが、苦労に思うよりもうれしく感じるのは何故なんだろう、と思わず苦笑い。



~曹巍カリン「・・・あたしだってビビッタワよ」


【こんな緩くて恐ろしい洗脳はみたことありません。】


 そう報告があがってきた。

 学習という行動や本人の自覚に至るすべてを、徹底的に人格改造するという手法について事細かに書かれたマニュアルをみて、第一生徒会は戦慄していた。

 もしこれが悪意で手を加えるなら、ナチスドイツも真っ青のSS部隊ができあがること請け合いであった。

 いっそ封印すべしと進言する人間もいたが、第三生徒会の勢力範囲の教室をみると首を傾げる。

 そんなに悪いものなのだろうか、と。

 本来学習というものの基礎は思考方法の焼き付けにすぎない。

 効率的な考え方や思考手法を焼き付けた上で高度な学問を修めすものなのだ。

 が、人格的な土台が正常にないと、どんなに積み上げても滑り落ちてしまう。

 そんな土台を固めるところから開始しているマニュアルは、すでに企業新人研修のレベルを超えた恐ろしいものだが、強制的に行われるものではなく、あくまで自主的に事態が進むようにコントロールされている。

 こんなことを知っている人間では、新入生用の客寄せなどに引っかかるワケもない。


「封印? バカを行っちゃ困るわ。これはね、私たちへの挑戦状なのよ? これだけの手法を得ながら、何も変わらないのか? ってね。」


 曹巍カリンの一言に周辺は燃えた。


「ベースはこのままに、学習要項全般に手を入れるわ。次の期末までになんとしてもトップを取り戻すわよ」


 応と答える周辺へ、カリンは満足げな笑みで答えて見せた。



~北郷一刀「生贄って、こういうことかなー」


 共同研究会という組織と校舎ができた。

 第一と第三の共同運営校舎で、いまいち順調ではない新型学習手法の伝達を目的にしたものだった。

 まぁ、キモの部分である「感染」は記載されていないのだから仕方ないかもしれないけど。

 そんなわけで、感染の事実を伏せたまま、指導役として第三生徒会から北郷隊が派遣されたのだけど、試験教室に集まった人員をみて彼らは固まった。

 そこに座る人員は以下の通りだ。


第一生徒会会長 曹巍カリン(そうぎ かりん)

第一生徒会副長 夏峰なつみね 春蘭しゅんらん

第一生徒会副長 夏峰なつみね 秋蘭しゅうらん

第一生徒会書記 遼瀬 シア(わたらせ しあ)

第一生徒会総務 ゆるし 着依きい

第一生徒会総務 悪頼 ルル(あくらい るる)

第一生徒会会計 かつら 花代はなよ

第一生徒会会計 程ヶほどがや ふう

第一生徒会会計 嘉和かかず りん


 つまり第一生徒会幹部全員がそろっていたのだ。


「さぁ、初めてちょうだい」


 意地悪そうなカリン会長の声とともに、模擬授業と称した、一種の拷問が始まった。

 カリン会長以下、夏峰妹、桂、程ヶ谷の猛烈な質問の雨に僕らは打ちひしがれた。



~楽進 凪「・・・隊長、毎日美味しいものをありがとうございます」


 昼休みのこと。

 ディスカッションを含める形で食事会を開いたのだが、ディスカッション部分は消え去った。

 隊長が料理を得意とすると言う情報を聞いた悪頼 ルル嬢が、隊長に料理勝負を仕掛けたからだ。

 次々と出される和洋中折衷の料理の数々に、誰もがしゃべるのを惜しんで口をつけた。

 全員が満腹する頃には楽しそうな会話を交わす二人の料理番が現れて、テーブルの上を見渡した。

 おお、と感心する二人に曹巍カリンが声をかける。


「・・・それで、どちらの勝ちなのかしら?」


 言われた瞬間、真っ赤になってうつむく悪頼ルル。

 怪訝そうに眉を寄せた曹巍カリンへ隊長はいう。


「途中から一緒に作ってたから、勝負も何もないよ」と。

「カリン様、兄様はすごいんですよ!!」と語るのは悪頼ルル。


 火の加減が絶妙だとか、煮蒸しに極まりがあるとか。

 身振り手振りで語る悪頼に、意地悪そうな笑顔で曹巍カリン。


「・・・よっぽど惚れ込んじゃったみたいね、ルル。」


 いわれて真っ赤になる悪頼ルル。


「この島には料理関係に詳しい人が少ないから、結構白熱しちゃったよね。」

「はい!!」


 まるで本当の兄妹みたいだと、ちょっと嫉妬の許 着依。


「きい! あの豚の角煮、兄様が作ったんだよ!」

「え、ほんと!? 絶対ルルが作ったと思ってたのに!!」

「ほんとだよー、作り方も覚えたから、今度作るねー!」

「ひゃっほー! ルル、兄ちゃん、ありがとーーー!!」


 小躍りする許 きい。


「こら、キイ。食卓で暴れるな。」

「春蘭様、ごめんなさい。」


 さて、この二人の成績が足かせとなっていた第一生徒会だが、実のところ四時間目に行った小テストで恐るべき結果がでている。

 ラスト十分で行った小テストは、国語・古文・数学・物理・地学・英語 という科目を2問ずつそろえたものだったにも関わらず、全員が80点以上を出していた。

 そう、全員が。

 少なくとも苦手教科や不可能教科のある人員がいるにも関わらず、全員80点以上。

 現在、桂 花代以外の全員点数を知らない状態だが、理解力という点では、誰もが疑えぬレベルにたたき込まれていることを自覚しているようだった。


「・・・・北郷、聞きたいことがある」


 雑談の中、夏姉妹の姉が口を開く。


「この中で、私が一番理解していることだ。」

「はい。」


 何を、ではない。

 しかし隊長はわかったようだった。


「・・・過去を購えるだろうか?」


 目をつぶって言う夏姉。

 それに向かって隊長は言う。


「過去を購うより未来を作るほうが楽しいですよ」


 言われた夏 春蘭は、ちょっと寂しそうにほほえむ。


「そういう言い回しも理解できていなかったのだな、私は」


 だが、と曹巍カリンをみる。


「カリン様のお役に立てる、そう思うだけで嬉しい。感謝するぞ、北郷」


 いいえいいえ、と首を振る隊長。

 無敵だな、隊長は。

 何というか、ずるいほど無敵だし。



 丸一日の模擬授業で、第一生徒会幹部の分が終わった。

 翌日から幹部による成績不良者向けの補講が行われつつ、前日の経験を確認していた。

 初等部、中等部の成績不良者は、その後の三日にわたる補講による解消され、高等部に至っても週末には成績不良者が激減した。

 これは高等部あたりで成績的にくじける人間が多いせいと、第一生徒会の高等部人口が多いせいなのだが、高等部の成績不良者が激減するだけで平均点はさらに上昇する。

 むろん点数なんて外向けのに言い訳にすぎない。

 本来の目標は南洋校舎全体の底上げなのだから。

 そして学ぶことを知識を蓄えることを知恵を駆使することの喜びを全身に感じ、そして発揮したいと思える環境を作り上げることこそ現在の第一および第三生徒会の目的なのだから。


少し短めの更新です。


徳とか覇とか色分けをされているものの、目指す方向が一緒であったと腹を割って話せたことが、このルートでの分岐点になっています。

では、話せなかったら?

・・・その辺は以後のルートで明らかにしたいと思います。

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