第二生徒会ルート 第三話
第二生徒会ルート
第三話
~曹巍カリン
中間試験の結果は散々だった。
やはり中庸学力層の新入生に注力できなかったことに原因があるだろう。
第三も結果としては散々で、第二も含めた全生徒会の成績は60点台でしかなかった。
これは補給物資や嗜好品が軒並み減量されるラインであり、せめてウチだけでも越えなければならない成績ラインだったが、越えることが出来なかった。
やはり、あの件が響いてる、わね。
新入生の一部が三生徒会に加わらず浪人学生になったことは有名だ。
さらにはその新入生たちが浪人学生を纏め、一大勢力を築いているという情報もある。
基本、補給のない浪人学生に生活を支える手はないのだが、それなりに生活しているというのだから解らない。
幹部の分析でも詳細不明、仔細調査中という状態がもどかしい。
「カリン様、お耳を」
・・・?
私は桂花の言葉に耳を寄せる。
~北郷一刀
目覚めると誰かを抱きしめてる生活に慣れ始めている北郷一刀です。
けっして責任のとれないような行為には至っていませんが、身の潔白を訴えるには些かまずい状況です。
まず、男性の朝の生理現象が発生しており、わたくし北郷一刀の腕の中で寝ていた雪蓮が、興味深そうにいじるんですよ、ええ!
あれはですね、放っておけば収まるたぐいのものじゃないですか!
それをワザワザいじりますかねぇ!?
正直、限界まできたので逃げ出したんですが、その姿を何人もの幹部な人達に見られてしまい、恥ずかしいやらなんやらもう。
トイレから出てきた俺を、舞ってましたとばかりに取り囲む孫呉姉妹。
キャイキャイと盛り上がってくれるのはうれしいけど、そろそろ道をあけてほしいなー、パンツ一丁なのですよ、俺。
赤くなってみせる蓮華はかわいいけど、雪蓮とシャオは興味津々だったりする。
「ねぇ一刀。結構筋肉質よね、あなた」
「そうそう、一刀のからだって、けっこうゴツゴツよね」
「・・・・(ぽ)」
結果としてペタペタ俺の体の品評会。
「なんじゃ、まるで奴隷市場のような情景は。」
苦笑いの祭先生だが、品評会には参加らしい。
「ふむ、北郷。よく締まった体じゃな。」
「でしょでしょ?一刀ったらシャオのために・・・。」
「うんうん、これならば夜の生活も・・・。」
「もう、祭ったら。・・・でも、うれしいかな。」
「一刀一刀、試合しよ、ね?」
こんな日常に流されている俺だが、先日の情景を忘れたわけではない。
ただ、目覚めたそのときにはすでに「彼女たちを信じる」気持ちが固まってしまっていただけだった。
思いこみだと解ってる。
でも、この心の底から沸き上がる確信は嘘じゃないことも解ってしまってる。
「あー、ところで、みなさん。」
そろそろ道あけません?
~
彼女たちの活動は、信じられないほど順調だった。
はじめに不足するであろう予定だった食料や物資が、第二生徒会領地の森の中に点在していたからだ。
腐りにくいものや保存性のよいものがごっそりと。
加えて、森の中自体が食べ物の宝庫だったので、植えること自体があり得ない状態だった。
凪は食に関するそのへんの事情に明るく、サバイバルな状態での活動に意欲的だった。
周辺の人間も三日もするうちに慣れてしまい、放棄された校舎を改造して生活空間を確保していった。
どんな環境でも生きることに苦労しない女、それが楽進凪と言う女であった。
加えて真桜の生活環境改造、沙和の生活環境維持活動は日に日に向上を見せ、密林ジャングル暮らしが加速度的に田舎暮らし程度までレベルをあげてゆく。
ついてきた少女たちや周辺浪人学生たちも、生活レベルの向上という施策に熱中し、暴走していった。
面白いことがあると暴走してしまう、それは仕方ないことなのかもしれない。
だって、面白いのだから。
そんな中、凪は第二生徒会の所属の学生たちが合流していることに気づいた。
こっそりと、ばれないように入り込んでいるが、その見た目の悪さ、というか栄養状態の悪さをみれば一目瞭然といえた。
いや、彼女が目に引いたのは、その姿勢だった。
受動的で後ろ向きで、そして無気力で。
この南洋校舎まで来れたとは思えない有様は、疑問よりも怒りを感じるものだった。
だから、実直に怒りをぶつけた。
前を向いたら全力疾走、崖に落ちたって前を向いている女、それが楽進 凪という女だった。
怒りをぶつけられた第二生徒会一般学生は、おびえと諦観と残念にまみれていた。
いわば心を折られていたのだ。
逃げることもできず、さりとて他の生徒会に移る力もなく、浪人学生となる勇気もなく、ただ、少ない配給を受けて生きているだけだった。
力があるのなら、助けてほしい。
食料があるなら分けてほしい。
そんな泣き言を聞いて、第二生徒会の処置が処置の理由が分かった気がした。
つまり、そういうことなのだ。
自分で切り開くことが無く、自らで得るわけでもなく、そして環境を切り開くこともない。
ただ寄生するだけの、そんな存在を「絆」を謳う生徒会が欲するだろうか?
互いに支えあえるような、そんな関係じゃなければ意味がない。
故の処理だと、凪は看破した。
だから、第二生徒会の行動様式の一端に触れている気がした。
力あるものよその力を示せ、力持つものよ、その力で切り開け。
苛烈にして熱烈なる想い。
正面から受けていれば、私はその思いに共感しただろうと、凪は心の底から感じていた。
~
~思春
ミンメイの調査から、第二生徒会の領内ぎりぎりの廃校舎で生活を始めた手勢がいるとの報告を受けた。
自分たちで水を引き、校舎を清掃し、整地をし、周辺伐採をし、とかなり手慣れた様子であったとのことだ。
私は蓮華様に調査する旨を断り、早速現地に向かった。
廃校舎周辺には簡単な「鳴子」や監視小屋などが造られており、危機意識は十分な様子だ。
さらには、手荒い場、水浴び場なども作られており、衛生管理を十二分に意識している。
食材の乾燥、保管なども実施している様子から、長期生活を主眼においた活動をしているのが分かる。
「ミンメイ、ここの主塊は分かっているか?」
「はい。新入生の楽進 凪という生徒です。」
聞けば、一度も生徒会に属することなく森に入り、浪人学生たちを纏めあげて旗揚げしたという。
まるで劉備の義勇軍だな、と笑うと、ミンメイも苦笑だった。
「・・・じつは、彼女たち、一刀さんの飯ストだったんですよ。」
「・・・ふむ、なるほど」
港で降り立ったところで、北郷一刀誘拐の事実と解放への力添えを頼んだが、断られて出奔、か。
流れとしては稚拙だが、少なくともそれを現実のものにできる力を持っているのが好ましい。
「実に骨がある。好ましいな。」
「そうですね。それに比べて・・・。」
廃校舎の脇に小屋があり、そこにぞろぞろと並ぶ人影が見える。
そこでは少量ながら配給をしているそうで、その配給につられて第二の生徒が集まってきているそうだ。
なにもせず、なにも作らず、なにも行わない。
ただ生きているだけの存在に何の価値があろうか。
「一刀さんや、楽進さんを見ると、人それぞれなのは分かりますけど、第二はちょっとダメッコが集まりすぎですねぇ。」
「・・・いうな。それでも民草を導く役目があるのだ。」
それがたとえ永遠でなくても。
~劉蜀桃香
曹巍カリン会長からの面談が申し入れられたのは昨日のことだった。
面談場所は第三生徒会本部。
まるで自分の居城にいるかのような様子は、王者としての風格を持っているように見える。
とはいえ私も弱小ながら生徒会会長。
胸を張らざる得ません。
きゅっと胸を張ると、なぜかちょっと視線をはずす曹巍会長。
なんででしょう?
それはさておき、議題はすでに確認しあっている。
お互いの会計が話を詰めているからだ。
「・・・で、劉蜀会長。あなたはどう思うかしら?」
「私は賛成できません」
曹巍会長の提案は実に魅力的だった。
しかし、私は即答した。
現在のところ、曹巍会長の提案は魅力的で必要性も有用性も認めるところだけど、やってはいけない事だったから。
「理由を聞いてもいいかしら?」
「理由はいくつかありますが、なんら正統性もなく『第二生徒会解体』を実行してしまえば、生徒会が独自に三つある理由がなくなります。また、同じ理由であらゆる組織の解体を実行できる前例を作ることになります。それは呑めません」
「・・・まったく、今の第二の施行してる内容は知ってるのよね?」
「それでも、その待遇に甘んじ、助けも呼べないほどではありません。」
ふぅ、と深い溜息の曹巍会長。
「腹を割るけどね、あたしは第二のやり方は嫌いなの。」
「第三のやり方も嫌いだとお聞きしてますよ?」
「腹の探り合いはやめて。」
私も姿勢を正します。
「相手のやり方が気に入らないからといって解体では、子供の喧嘩いかです。明確な理由を示してください」
そう、私は解体に賛成できない。
その私の意見を翻らせようというのだから、利ではない「徳」を刺激する説明をしなければならないのだ。
「・・・未確認情報よ。」
そういって切り出したのは北郷一刀君のことだった。
彼は誘拐されてから何度も脱走を繰り返していて、その度に孫呉雪蓮会長に取り押さえられているそうだ。
最近では猛烈な乱闘になり、ボコボコにされて回収されたとか。
で、ここ数日、その姿を見ていない。
もしかしたらマズイかもしれない、と曹巍会長は考えている、という訳だった。
「曹巍会長、そういう話は一番初めにするべきだと思いますよ?」
「確度が低い上に、あんたたちを狙い撃ちのネタなんか恥ずかしくていえるもんですか。」
苦笑いの私たちは背筋を伸ばす。
「私、第三生徒会会長 劉蜀桃香は、本件に関する合意を発行する準備がありますが、要調査であることを提案します」
「私、第一生徒会会長 曹巍カリンは、本件の合意発行についての検討条件を問います」
「条件の確立と情報の共有。」
「了解したわ、桃香会長」
「了解です、カリン会長」
私たちは手を握りあう。
これが一時の休戦であろうとも、一つの真実を探る戦いになることは自覚していた。
書いているウチに暴走しました。
凪、活躍しすぎ。
あと、プロットになかった理由もでっち上げすぎ。
勘違いとか言いたいけど、孫呉の人達を思うと、明らかに「それっぽい」理由になってしまった。
そういう意味では、第三や第一って、上の立場から何とかしてあげる姿勢が強い組織で、見ようによっては口から大量の砂が出かねないリバース組織だったりします。
まぁ、第一はカリン様の支配による愛の組織だし、第三は桃香から溢れる慈愛が組織浸透して動いているような組織なので、トップダウンは仕方ないところなんですが。
次の更新は遅くとも月曜ぐらいを予定してます