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第二生徒会ルート 第二話

第二生徒会ルート


第二話


~孫呉蓮華


 身を寄せた相手に鼓動がある。

 身を寄せた相手に暖かさがある。

 身を寄せた相手に呼吸がある。


 それだけで私は泣きそうになった。

 それだけで私は崩れ落ちそうになった。


 私は彼にすがりついた。

 私は彼を抱きしめた。

 私は彼に溺れていた。



 目覚めても彼が消えない感動は、なににも代え難い感動であり、この幸せを得るために乗り越えた苦行など塵に等しい。

 ちょっと汗ばんだ彼の胸に頬を寄せる。


「ねぇ、蓮華、汗で汚いよ」


 それでも私は彼の胸に顔を埋めた。


「一刀・・・・。」


 彼の鼓動も、彼の体温も、彼の汗も、全部私たちのものだ。

 なぜならば、彼こそが私たちを真の意味で・・・・


「・・・あー、もー、逃げないからちょっと離れる。 俺も汗くさいの嗅がれるの、いやなんだってば。」


 強引に私を引きはがす手もイヤじゃない。

 ああ、私は変態になってしまったのかもしれない。



~北郷一刀


 不満たらたらの蓮華を伴って、風呂まできた。

 つうか、入ってくるなよ、と釘を差すと、今まさに脱ごうとしていた蓮華が驚きの顔。

 散々にグズる蓮華をなだめつつ、どうにか短時間のシャワーででてくることで了解させた。


「私も汗を流すから、まっててね?」


 言外、いなくなったら死んでやる、的な陰を感じるのが恐ろしい。

 なんでここまでデレられてる、俺。

 病む寸前だしなぁ。

 何か変なフラグたててるみたいだなぁ、と首をひねる。


「あら、一刀。なにしてんの?」


 現れたのは暴風生徒会長、孫呉雪蓮。


「・・・いま、失礼なこと考えなかった?」


 ぶんぶんと首を振る俺に「まぁいいけど」と笑う。


「で、なに? のぞき? のぞきなのね?」


 きーめーつーけーるーなー。

 とりあえず、なんかフラグたちっぱなし状態の蓮華にここにいるようにいわれている旨はなすと、ぷぷっと笑う雪蓮。


「なーに? 一刀ってばヘタレ?」


 ヘタレいうな!

 なんでもかんでも食っちゃって、未婚の母とか父とか責任とりきれないでしょうが!?

 きょとんとした雪蓮だったが、深みのある笑みを浮かべる。


「それって、責任とってくれるってこと?」


 俺は胸に手を当てて、反対側の手を挙げる。


「そんぐらいの気持ちでしか出来ないだろ?そういう事って。」


 ふうーん、とうれしそうに関して、その上で、


「やっぱりのぞきなさいよ、相手は蓮華でしょ?」


 あのなー!!!


「蓮華も望んでるし」


 もーーー!!


「怒らない怒らない。モテモテなのよ? 一刀」


 ・・・あああああ、もう、かなわないなーこの人には。


 もちろん覗くことなく待っていた俺に、蓮華に加えた雪蓮がひっついて独房までの道筋をいくことになった。

 なんだかなぁ、もう。

 よく解らない安心感が胸の内に満たされる。

 本当に奇妙だと思う俺だった。





~冥林


 久しぶりに一刀が逃走した。

 いや、蓮華に取り乱し様がないところをみると、どうも蓮華を取り込んで言いくるめたようだ。

 雪蓮は納得しなかったのだろう、全面抗戦の上での逃走らしい。

 私たちもその後を追ったが、遅すぎたことに気づいた。

 二人の交戦が絶対守備範囲を超えていたのだ。


「まずいな、ノン。配下に周囲を取り囲ませてくれ。」

「わかりました。」

「思春、遅いかもしれんが、一刀の接触は・・・。」

「・・・解っております」


 皆が走り抜ける中、私は二人を発見した。

 見る限り、本当に遅すぎたらしい。


 力なくブラブラとさせた両腕、だけど強い意志の力を感じる瞳の一刀。

 そして、一刀の強い抵抗に理性の半分をとばされて狂気の喜びに浸りつつある雪蓮。


「ふふふふふふ、おとなしくなさい、かーずーとぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 渾身とも見とれる蹴りを交わしつつ距離をとる一刀。


「・・・答えろ、雪蓮。・・・ここの生徒はなぜあんな様子だった!?」


 まるで舞うように蹴りを繰り出す一刀だったが、雪蓮に通じるわけもなく、軽くあしらわれる。

 しかし、その動きでさえうれしそうだった。


「あら、解らなかったの? 庶人は生かさず殺さず、為政者の義務よ?」


 拳と足を旋風のように一刀にたたき込みつつ微笑む雪蓮。


「・・・生かさず殺さず?」


 細かくよけていた一刀が、まるで大地に根ざした巨木がごとくに雪蓮の攻撃を受け止めた。

 その目には怒り、その目には悲しみ、その目には・・・


「・・・雪蓮、おまえの孫呉は、おまえの守るべき民は、そんな扱いを望んでいたかぁ!!!!!!!?」


 瞬間、私は凍り付いた。

 いや、私たちは凍り付いた。


 いま、一刀はなんといったのか?

 今、一刀は・・・・。

 真っ白に燃え上がる私たちの心の内。

 視界の中で一刀が崩れ落ちるまで、誰も動けなかった。





 事件はすでに起きていた。


 事の起こりは生徒輸送船から生徒が強奪されたことだ。

 犯人は第二生徒会。

 不可侵を貫かせる謎の生徒会だった。

 それが生徒輸送中の船から、一人の生徒を強奪した。

 その名も「北郷一刀」。

 今年度までで唯一の男子生徒であり、唯一南洋校舎へ入校を許された逸材。

 どの生徒会がとるかと、密かに注目もされていた。

 機会は均衡にということで港から出るまで接触を禁じていたわけだが、すっぱ抜かれた形となった。


「私たちの飯ストを救ってください!!」


 北郷一刀と一緒に船に乗ってきた新入生たちが頭を下げるが、第一生徒会も第三生徒会も動けなかった。

 来る中間試験に向けて新入生の学力調整をしないことには他の生徒会への干渉をするほどの余裕などなかったから。 

 まずは自分たちの足固めからしなければならないことを説明する各生徒会に、新入生たちの支持は暴落していた。


 浪人学生という制度上の抜け道を知った生徒の一部が、自ら生徒会に身を預けずに浪人学生となる道を選んだ。

 現生徒会に「覇」なし「徳」なしと詠う三人に追従した数名が離反しただけだが、それは後々の禍根となるのは明白だった。

 何とか説得しようとした各生徒会幹部だったが、彼女たちの意志は強く、鬱蒼と茂る森の中へ消える姿を止めることは出来なかった。



 第一・第三生徒会にとっては迷惑な話だった。

 第二生徒会の暴挙を阻止できなかった、さらには対抗出来ないと詰られているだけだったから。

 実際のところ、学園法規上生徒会同士の抗争は禁じられているし、現場を押さえているのが生徒会役員でない以上、手の打ちようがないのが事実なのだ。

 基本、亀のように身を縮めて情報すらも出さない第二生徒会。接点がなければ交渉すら出来ないのだ。

 そう、全く交渉の糸口すらつかめずに、中間試験を迎えることとなったのだった。






~北郷一刀


 再び明晰夢、なんだろうと思う。

 先ほど見た光景がひどすぎて、脳味噌に焼き付いて夢に見ているのだろうと。

 やせて体をふるわせる生徒たち。

 一声かけてもおびえて逃げる有様。

 なにが起きているかすら理解できない様子で、瞳に光が失われていた。


「ご、ごめんなさいごめんなさい、もっとせいせきをあげますしけんもいいてんとります・・・・・・」


 誰もが何かにおびえていた。

 いや、誤魔化すのをやめよう。

 明らかに怯えていたのだ、第二生徒会を。


 俺は走り回った。

 まるで難民キャンプか奴隷商人の小屋のような有様を目に納めるために。

 俺は走った。

 森の各所に散りばめた脱出道具の確認をするために。


 そして対峙して問う。

 雪蓮に、この生徒会の長に。


「・・・答えろ、雪蓮。・・・ここの生徒はなぜあんな様子だった!?」


 答えは非常そのものだった。

 だから俺は切れた。


 だってそうじゃないか!

 あれだけ民を愛し、国を愛し、すべてを守ろうとした雪蓮が!!


 思い出す風景、思い出す情景。

 次々と浮かぶそれは、今まで見たことも聞いたこともないものばかり。

 だけどわかる、そこにいるのが「彼女」なのだと。


「・・・雪蓮、おまえの孫呉は、おまえの守るべき民は、そんな扱いを望んでいたかぁ!!!!!!!?」


 王たる者の重みと力のあり方を知る雪蓮。

 君がそんなことをいうなど許せるはずもない!!


『そうだ、雪蓮。おまえはすてきな王様になるんだろ?』




~孫呉雪蓮


 私は泣いていた。

 私たちは泣き崩れていた。

 私たちが待っていた瞬間がそこにあったから。


『そうだ、雪蓮。おまえはすてきな王様になるんだろ?』


 寝言で囁くように言う一刀の言葉。

 それは私たちのよく知る「言葉」だった。

 いや、私たちとともにあった「言語」だった。


『かずと、一刀は帰ってきてくれたの?』

『・・・まだ安心は出来ません。ですが、もうすぐでしょう』


 蓮華と思春が寄り添っていた。

 穏とミンメイが、シャオと祭が寄り添って一刀を見つめている。


 みんなが望んだ、みんなが待ち望んだ。

 艱難辛苦の末のこの瞬間。

 今はまだその瞬間ではないだろう。

 でも、間違いないのだ。

 間違っていなかったのだ。


 疑ったときもあった、絶望したときもあった。

 それでもこれしかないと立ち上がり、そして進んできた。そしてたどり着いた。


『そうね、たどり着いたのよ、ね』

『そうだな、それも大いに時間を残して、だ。』


 これほどの暁光は二度と無いだろう。

 私たちはこの瞬間にすべてをかける。

 すべてを。




 浪人学生を纏める事に成功していた楽進凪は、その意志が強い人間たちと会合を持つことにした。

 彼女たち自身も南洋校舎のあり方に疑問を持っており、限られた人間による陣取り合戦以下の馴れ合いに辟易としていたそうだ。

 無論、直接的な暴力を盲信しているわけではない。

 しかし、ルールに縛られて出来ることをしないのでは本末転倒だと凪が訴えると、会場は歓声を上げた。


「とはいえ、大本は『男を助ける』んだろ?」


 混ぜっ返しの言葉に爆笑が渦巻くが、凪は笑顔で答えた。


「それになんの問題が?」


 その言葉に再び爆笑が渦巻く。


 目的もなく、ただ無為な時間を過ごしていたはずの浪人学生たちが、一つの勢力として纏まった瞬間だった。




えー、第二話です。


なんとなくですが、第二の人たちが走りすぎて、まったく周辺が追いついていません。


いやー、こえー。キャラ暴走。

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