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第二生徒会ルート 第一話

第二生徒会ルート


第一話


~北郷一刀


 久しぶりにあの夢を見て飛び起きた。

 わりと精神的に追いつめられると見る夢で、忘れた頃に思い出したかのようなタイミングで「あの」夢をみる。



「・・・あ、一刀。起きたんだ。」



 目を開けるとそこには少女が一人。

 孫呉シャオレン、自称シャオだった。


「もう、こんなに若い奥さんが尽くしてあげるって言うのに、なんで逃げるかなぁ?」


 そりゃ、口にギャグボールかまされて、全身くまなく縛り上げられている状況が続けば、普通逃げるさ。


「あー、もしかしてシャオに不満があるって言うのぉー一?」


 無いわけがない。

 毎日毎日突進してきて僕の体を打ちのめす行動にどんな好意をもてっつんだ。

 いまだって両手をベットに縛られて、猿ぐつわって、どんなシャイニングだっつうの。


「もう、贅沢なんだから。」


 腕組みで怒りながら部屋を出ていく子供をみつつ、荒縄で縛られた両手の関節をはずす。

 すんごくいたかったけど、抜き出して、かなり泣きそうだったけど、無理矢理関節を入れて、ニギニギ。

 ・・・よし、ということで、猿ぐつわをはずして体を縛るロープもはずす。

 結構な長さなので、、ここが三階だろうと四階だろうと逃げ出せる。

 よしよし、ということで、脱出劇の再開だ。



 僕がすでに二桁回目の逃走が続いている。

 ここ、第二生徒会本部は、数々の罠や待ち伏せが準備されていたけれど、あの「村」のアルティメット鬼ごっこに比べれば、お遊戯程度のものでしかない。

 だから、倉庫から食料や道具を持ち出して、長期戦を目的とした逃走を繰り返しているんだけど、一定の場所を越えるとなぜか捕まってしまう。

 どんなに抜いても、どんなに回り込んでも、必ず孫呉雪蓮が現れて、僕を捕まえてゆくんだ。

 捕縛率100%は恐ろしすぎる。


 そんなわけで、今回も逃げたわけだけど、一応、ルートを変えた。

 今までの動きなら、三階のこの窓からロープでしたまで降りて森の中に潜みつつ逃走というパターンだけど、捕縛率がなぜ高いかを調べるために、わざわざ屋根の上に潜んでみた。


「あーーーー!! 一刀また逃げたぁ!!!」

「もう、シャオ! 見張り一つできないの!?」

「お姉さまを呼びにいっただけよ!!」


 シャオとレンファ登場。


「ならばものの五分ほどで抜け出したか・・・。」

「窓みてください、ロープ!!」

「ふむ、窓から逃走、森に一直線、か?」


 メイリン、ミンメイ。

 よしよし、いい具合に攪乱できてるな。


「・・・お待ちください。普通の人間が、そのような行動が可能でしょうか?」

「アーシャ。そうはいうが、手加減中でも雪蓮と打ち合う人間だぞ?」


 アーシェの言葉に祭先生がツッコミ。

 ・・・って、あれで手加減してんのかよ!!

 人間か、あいつ?


「ごちゃごちゃうるさいわねー。あたしがここにいるって事をよく考えなさい?」


 雪蓮の一言に、周囲が唸る。

 ん?どういうこと?


 そんな疑問の僕の目の前に、突然現れる雪蓮。


「ふっふふ~、やっぱり一刀って面白い」


 僕は屋根の上での乱闘を諦めておとなしく捕まった。

 今度は鉄格子のある部屋に入れられてしまった。




~孫呉雪蓮 


 学園の新入生輸送船から奪ってきた「北郷一刀」は想像と予想を超えた逸材だった。

 衆人環視の中逃げ出すこと12回。

 夜間に逃げ出すこと8回。

 縛り上げられた状態から逃げ出すこと22回。


 面白すぎる少年だった。


 本当に「北郷一刀」なのか疑問に感じるほどだったけど、瞳が、雰囲気が、心が同じだった。

 あれだけの力の差を見せつけても、あれだけの殺気をぶつけても、彼はにこやかに微笑むだけなのが「変わらない」。変わってない。

 それがうれしすぎた。


「しかし、未だ兆しなし、か。」


 冥林の懸念もわかるけど、私やレンファ、そしてシャオは、一刀とじゃれあうことができるのがうれしいばかりだった。

 彼自身は何の記憶が無くてもいい。

 でも、私たちの心が、喜びで悲鳴を上げている。


姉様ねえさま御蔵船みくらぶねの氷柱に反応が・・・」


 かけあがってきたレンファに私は肯く。


「また、夢を見ているのだな。」

「ええ。」


 いつの、どんな夢を見ているかは知らない。

 しかし、一刀の見ている夢が、安らかなものであることを心から祈る私、私たちだった。




 


 目覚めればそこは夢の中だった。

 明確に夢の中で目覚めた意識がある状態。

 明晰夢、だっただろうか?


 夢の中で僕は、体中がしびれるような、体中が焼け付くような、そんな状態なのがわかる。

 瞳の中に写る誰もが涙を流している。

 すがりつくのは、


「***、***!!」


 泣きながらすがりつく彼女の頭を撫でる。


 部屋の入り口で歯を食いしばる**。

 滂沱の涙を流しながらも立ち尽くす**。

 ああ、マズい、みんなを泣かせてる。

 そんなつもりはなかったのに。

 でもまぁいい、***を守れたんだから。





「  一刀ぉぉぉぉぉぉぉ!!」






~北郷一刀


 独房の割にはベットが豪華だな、と思う。


 とはいえ、ここのところ毎日いろんな目を見るんだけど、なぜかみんなが泣いている。

 このみんなというのがクセモノで、人の顔だとわかるのに誰の顔か認識ができないという中途半端さ。

 どこかで、すごく深く関わりがあるはずなのに思い出せない、いや、認識できない。

 直接見ているのに、見ているはずなのに・・・。


「かーずと、げんき?」


 格子の向こうではシャオがにこやかに手を振ってる。


「こんなところに閉じこめられてなければ、ね。」

「だって、一刀ってば逃げるんだもの。」

「そりゃ逃げるでしょ。」


 生徒輸送船から誘拐されたんだから。


「こーんなにみんなに愛されて、シャオの旦那様にもなれるのに、なーんで逃げるかなぁ~?」

「・・・よくわかんないんだよ、君たちが」


 そう、よくわからないのだ。

 第二生徒会と呼ばれる集団の幹部は、なぜか僕に優しい。

 微笑みかけてきたり、笑顔を見せてくれたり、優しく抱きしめてくれたり。

 なんというか、勘違いしてしまいそうなぐらい優しいのだ。

 そんな中でも、シャオなんかはベッタリだし、レンファもなんだか好意を寄せてくれている感じがする。

 そう、その辺の感覚が鈍いんで確証はないんだけど。

 だけど、何でこんなににも好意を持たれているのかがわからない。

 なんでこんなににも優しくしてくれるのかがわからない。

 そして、なんで閉じこめられているのかがわからない。

 そう、何もわからないんだ。


「・・・そんなの気にしないでいいんだよ。一刀は一刀。シャオが大好きな人。それじゃだめなの?」

「じゃぁ、なんで僕のことが好きなの? シャオ」


 瞬間、ちょっと悲しそうな顔のシャオ。

 それでも太陽のような笑顔に戻る。


「シャオはね、一刀が一刀だから大好きなんだよ?」


 くるりと身を翻してその場を去るシャオ。


「・・・わからないよ、シャオ。俺には・・・」




~冥林


 聞けば、北郷は独房で毎日うなされているという。

 さすがに「御蔵船」に近いせいか、影響が大きいのだろう。

 この島に来る前から「あのときの夢」は見ていたそうだから、ここ数日の夢見で近づいていることは間違いないだろう。


「でも、脱走しなくなったのはつまんなーい。」


 さすがに独房からの脱出はうまくいかないだろう。

 どこぞのコミックヒーローじゃあるまいし。


「でもでも、一刀ならやってくれると思うんだけどなぁー」


 まぁ、初めてあって思ったのは、体つきも判断力も恐ろしいレベルの高さだという事がわかるぐらいだったし、逃走に次ぐ逃走は雪蓮なしに追うことすら難しい勢いだった。

 我々ですら追えない一刀を雪蓮は確実に追いつめて叩き伏せ、捕縛していた。

 その武は、かの地で見せた片鱗が現れており、その力を使えることを喜びとしているようだった。

 さすがにこの地の敵に、武を唱えることなどできないのだから。


「あーあ、一刀、脱走しないかなー」


 まるで子供のようにムクレる雪蓮。

 しかし、私は、今の喜びよりも礎を望んでしまう愚かな女だ。


「とはいえ、これだけ捕まれば、かの南蛮大王とて根を上げるぞ」

「そこが一刀の良いところじゃなーい」


 きゃーとかいって自分の体を抱きしめる雪蓮。

 ・・・やはりベタぼれだが、狂気は少ない。

 いい影響ばかりだな、北郷。




~北郷一刀


 とりあえず、逃げ出しました。



 独房に入れられてるし、監視されてるけど、逆になぜか不満が少なくなっていることに疑問を感じている。

 少なくとも、自由の阻害なんつう暴挙は一番許せないはずなのに。

 そんな心の動きを怪しく思い、逆行動、むりやり逃げてみると、ここ数日脱走しなかったせいか、警備が緩い緩い。

 倉庫の警備なんてしてなくて、門の前もガラガラだから、いろいろと持ち出してしまった。

 食料やら道具やら。

 そんなこんなで森の脱出なのです、ええ。


 つうか、こんなしゃべりかたしてたっけ、俺。



~孫呉蓮華


 一刀が最近うなされているという。

 それは間違いなく「御蔵船」の影響だろう。

 あの船の「あれ」が一刀にどんな影響を与えているのか、本当の意味で知っている人間はいない。

 だけど、最近、一刀の視線が優しくなっているのを私たちは感じてる。

 毎日挑戦的で抗戦的で敵意に満ちていた視線が、柔らかなものになっているのを心地よく感じてる。

 昨日も食事を持っていったら、


「・・・ありがとう、蓮華」


 名前で呼んでくれた。

 名前で呼んでくれたのよ、一刀が!

 心が浮き立ち舞い上がるのを感じる。

 ああ、今日も一刀の声が聞けるんだ。

 そう思って独房の前まできて、


「・・・・いない」


 いない。

 一刀がいない。

 またいない、目の前にいない、またいない、姿も形もいない・・・・・。


「かずと、かずと? ・・・・か・・・・・・」





かずとーーーーーーーーー!!!!!! 





~北郷一刀


 まるで胸の内側がえぐられるかのような絶叫が背後から聞こえた。

 なんだろう、まるで精神がつぶされるような、心が壊れるかのような、そんな声だ。

 あまりの声の悲しさに、両足の力が萎える。

 いや、本当に力が抜けてしまった。


「あら、そこにいるのは、一刀さま?」


 やばい、ミンメイに見つかってしまった。


「こんなに食べ物を持ち出して・・・。」


 てきぱきと倉庫に食料が戻される。


「ほらほら、ご飯はまだですよ」


 そういいながら力の抜けた俺を担ぐミンメイ。

 思いの外力持ちだね、君。


「あれー、蓮華様。どうなさったんですか?」


 見ればそこには大量の涙を流して座り込む蓮華。

 その姿を見た瞬間、力が戻った。

 ミンメイの肩から降りて、蓮華の肩に手をかける。


「・・・か・・・かずと?」


 俺がうなづくと、子供のような笑顔を浮かべて抱きつく蓮華。


「か・・・かず・・・とぉ・・・、もういなくなっちゃいやだよぉ・・・・きえないでよぉ・・・しなないでよぉ・・・・」


 子供のように泣く蓮華を抱きしめながら、なんだか絡めとられてしまったかのような虚脱感を感じる俺だった。




~孫呉シャオ


 一刀と遊ぼうかと思ったのに、蓮華ねえさまが独房の中まで入り込んで一刀を抱きしめてた。

 なんでも、おなかの空いた一刀が、どうやってかは知らないけど、独房から勝手にでて倉庫に行ってたそうだ。

 それを知らなかった蓮華ねえさまは、「また」一刀がいなくなったと勘違いして錯乱してしまったそうだ。


 たぶんあの時から、私たちの孫呉は狂ってしまったんだろうなぁ、って思う。

 雪蓮ねえさまは狂気に走り、蓮華ねえさまは悲嘆に狂い、私は日常に狂喜した。

 そんな国がいつまでも続くはずもなく、あれほどの隆盛を誇った国も・・・・。


 私たちはあり得ない光明をつかむためにここにいるんだ。その一点を支える一刀には申し訳ないけど、私たちの心をここまでつかんだ責任はとらせないといけない。



 絶対に逃がさないんだから。



~北郷一刀


 泣きつかれた蓮華を腕の中においたまま、独房のベットに戻った俺は、どうしたものかと悩んでいた。

 蓮華はそのまま寝てしまったし、独房の入り口をのぞきにくる人たちは「ニヤニヤ」してるし。


「・・・もぉ、つぎはあたしだからね?」と雪蓮。

「・・・正妻はシャオなんだからね。」とシャオ。


 ・・・なんだろう、本当に。


 こんな可愛い女の子を抱きしめているのに、ドキドキするどころか「安心」している自分がいる。

 泣きつかれた蓮華の顔を優しく縫うっている自分に違和感を感じなかった。

 そんな違和感を感じない自分に戸惑っていた。


 ・・・本当にわからない。


 なのに、心が凪いでいる。

 スタイルバツグンの美少女を抱きしめてるのに、劣情が・・・・・

 いや、全くない訳じゃないよう?

 でも、我慢ができる範囲っていうのが変だし。

 ・・・うん、へんだ。


 俺はどうなったんだろう・・・。


 あれ?


 おれ?


 自分のこと、おれ、なんて呼んでたっけ?

一応、第二生徒会ルートは7月中までに終了する予定です。


お付き合いいただければ幸いです


7/3誤字の修正を行いました。ご協力感謝です。

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