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第一生徒会ルート 第五話

第一生徒会ルート


第五話



~秋峰秋蘭「・・・錯乱できるものならしたかった」


 緊急集合かけられた第二幹部たちを前に、カリン様は冷静さを真持つのに精一杯であった。

 あの場所から一時間と経っていないのだから仕方ないだろう。

 姉上もしっかりと一刀を抱きしめ、その存在が嘘じゃないことを確かめているかのようだった。

 わたしとて、私と手それを確かめずにいられず、彼の右手を離せないでいる。


「で、なんなのよぉ。まだ夜はあけてないんだけどぉ?」


 孫呉雪蓮の言葉にカリン様の気配が変わる。

 しかし、その激情を押さえ込んだようだ。


「孫呉雪蓮、及び第一生徒会幹部に問うわ・・・」


 一度、ほんの一瞬言葉を着るカリン様。

 このまま続けて言葉を発してしまえば、感情が先走ってしまう。それを押さえるために。


「あの、船の中の「あれ」は何あのかしら?」


 思い出されるあの脱力感。

 見た瞬間、私たちは全身から力が抜けた。

 あの顔、あの髪。

 瞳は閉じられていてわからないし、肢体は大きく違っていた。

 筋肉の付き方もバラバランスも全く別人。

 しかし、しかし私たちにはわかってしまった。

 そこにいる人物が誰なのかを、全く冷気を感じさせずに立っている氷柱の中にいる人物が、誰なのかを。




「・・・・一刀、一刀ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 なぜ、なぜなんだ!

 姉上と共に探査していたはずの一刀が、なぜ氷柱に・・・。いや!?


「姉上!! 一刀は一刀はそこにいるかぁ!!!」


 そう、ここに一刀だけいると言うことは、姉上は無事。

 ならばと思い、


「・・・なにを言ってる、一刀はここにいるぞぉ!!」


 安心、その言葉が胸の内にともる。

 カリン様もようやく正気の色を戻す。


「・・来てくれ、一刀を連れてきてくれ!!!」


 立ち上がる気力を取り戻した私は、カリン様に手をさしのべる。


「だいじょうぶ、よ、たてる、わ。」


 言うほど大丈夫ではないことはわかる。

 しかし、カリン様が立てると言うならば、私はそれをサポートするだけだ。


 しばらく、ほんのしばらく体を震わせたカリン様だったが、何とか立ち上がる。

 しかし、ふらつく体を押さえることができず、私を支えにせざるえなかった。


「・・・ごめんなさい、ちょっとだけ支えていてちょうだい。」

「・・・はい。」


 カリン様と共に、氷柱の人物を観察していると、背後に現れた人影が絶叫する。


「な、なんだこれは!!」


 駆け寄る姉上は氷柱を殴りつけたが、何の影響もでていない。

 姉上の顔面は蒼白だったが、それ以上に、それ以上に一刀の表情が気になった。

 振り向けばそこには、困惑を浮かべた一刀が棒立ちだった。


「一刀、あなたに兄弟は?」「・・・いないよ」

「一刀、あなたに従兄弟は?」「・・・いるけど、見た目は別人」

「一刀、この腕の傷に見覚えは?」「・・・わからない。」


 深いため息のカリン様は、すっと息を吸い身を奮い立たせる。


「一刀、上半身、脱いで」






~夏峰春蘭「・・・一刀。」


 なにがどうなっているかわからない。

 でも、あの不思議な氷の向こうにいたのは一刀で、北郷一刀で間違いなかった。

 なぜとか、どうしてとかわからない。

 でも、あそこにいたのは一刀だった。

 今、私に抱きしめられている一刀と変わらない、いや、傷や怪我の跡が違うし、身長や筋肉の付き方が別人のようだけど、でもわかる。

 カリン様も、秋蘭も、私もわかる。

 あそこにいたのは一刀だった。


「春ねぇ、くるしいよ。ちょっとゆるめて」


 だめだ、だめだ!!

 今離してしまっては、離してしまったら、あそこに行ってしまう、あそこに入ってしまう。

 私にはわかる、私たちにはわかる。

 だから秋蘭も一刀の手を離していないのだ。


「春蘭、ちょっとだけゆるめてあげて。一刀は窒息しそうよ」


 あ、すみませんカリン様。

 というか、一刀。




~北郷一刀「なにが起きてるんだ?」


 会見の名を借りた事情聴取の場で、孫呉会長はちょっと驚いた顔。


「あら、もしかしてあれ見つけたの?」


 まるでちょっとした隠し事が見つかったかのような顔。


「あの、船の中の「あれ」は何あのかしら?」


 先ほどと同じ問い

 とぼけることすら許さない、そんな気迫に満ちていた。


「・・・・・」


 無言で、ゆっくりと表情を固める孫呉雪蓮。

 無表情に近いのに、それでいて透明な何かに支配された表情。


 そう、それは、まるで、透明な狂気に。


「・・・わざわざ説明が必要かしら?あれが何なのか、その肌で感じたんでしょ?」


 瞬間、カリンが総毛立つのを感じた。


「・・・答え合わせをしたいわけじゃないわ。答えなさい、孫呉雪蓮!!!」


 裂帛の覇気を浴びせられた孫呉雪蓮は不敵に笑う。


「・・・ふふふ、結構楽しませてくれるわね・・・。」


 がらりと雰囲気が変わる。

 まずい、そう思った瞬間に走り出していた。

 かなりまずい、非常にまずい!!


 春ねえの腕の中から抜け出して、カリンの座るイスを引き倒して・・・・


「「「か、かずと!!」」」


 カリンを、カリンを守るんだ!!!!



~孫呉雪蓮「・・・・・・あ。」


 隠していたナイフは立食パーティーのときに手に入れた。

 危機意識の薄いヤツラは、未だ勝敗を決められていないことに気づいていない。

 本当なら、こんなバカなことはしない。

 また「ツギ」があるのだから。

 しかし、見つけた。

 可能性という砂漠の中で光る宝石を。

 だから少しばかりの無茶だってできる。


 ねらいは調印式だろう、そう思って早々と寝ていたところで、呼び出しがあった。

 あいては曹巍カリン、春蘭、秋蘭、そして一刀。

 彼らの顔色を見れば一目瞭然だ。

 「あれ」を見つけたのだろう。

 私たちの「・・」を。

 ちょっと意外だったのは、彼女たちもまた、あれが何かを瞬間的に悟っていることだ。

 それだけで酷く不快に思う。

 あれを一目でわかってしまう関係に。


「あの、船の中の「あれ」は何あのかしら?」


 わかっているはずだ。

 だが、理性がそれを認められないのだろう。

 なんたる愚かしいことか。

 だから私は答える。


「・・・わざわざ説明が必要かしら?あれが何なのか、その肌で感じたんでしょ?」


 私にはわかるけど、あなたはわからないのかしら?

 そんな私の問いに、曹巍カリンは覇気をみなぎらせる。

 幼く稚拙な覇気だが、あの覇気を思い起こさせるものだった。

 瞬間、私の体に火が付いた。

 付いてしまった。


「・・・ふふふ、結構楽しませてくれるわね・・・。」


 隠していたナイフが滑る。

 体が歌うように踊る。

 突き出されたナイフが、曹巍カリンに・・・。



「「「か、かずと!!」」」




 一刀に吸い込まれ・・・・・・っ!!!




「・・・・あ。」




 一刀の腕に吸い込まれた。

 あの腕に。




「・・・あ、ああああああ。」




 あの逞しかった腕に。




「・・・・・・・・・・ああああああああああ!!!!」




 私が、私が傷つけてしまった。



「かずとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」




 一刀が、一刀がまた、また死んじゃう!!

 今度は私が、私が・・・・・・!




「かずと、かずとかずと・・・・・」


 あふれる血潮を押さえ込む、腕周辺で止血する。

 何でこんなに冷静二からだが動くのかわからなかった。


「いや、いや、いやだ、しなないでしなないで、しなないで、かずとぉ・・・・・・」


 言葉はだめ、思考もだめ、でも体は一刀を助けるために動いた。

 二度目はない、二度とない、今この瞬間こそ・・・・。


 さわ。

 優しく私の頬がなでられる。


『・・・雪蓮、また泣いてるのか?』


 あの声が聞こえる、あの言葉が聞こえる。


『泣き虫の王様だな』


 その目、その声、間違いない、間違いないのよね?


『・・・雪蓮。おまえは兵を率いるんだろ? 将だろ? 王だろ? 泣くな。立ち上がれ。そして勝ってこい。・・・俺は待ってるから。』


 そういって、そういって死んだじゃない!!


『いいや、死なない、死んでたまるか。おまえを守って死んだなんて格好よすぎるから・・・・な。』


 一刀の手が私の頬から離れる。

 いやだいやだいやだ、また、また私を残して、私たちを残して往ってしまうの!?






「かずとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」






~曹巍カリン「・・・意味不明ね」


 イスごと引き倒されて凶刃から守られた。

 手荒な手段に文句の一つでもいおうかと起きあがろうとしたところで、春蘭秋蘭が盾となった。

 予想された第二刃は起きず、腕を刺された一刀を孫呉雪蓮が抱き起こしていた。


 放心の孫呉雪蓮を、と一歩前にでたところで春蘭が止めた。


「・・・・あ。」


「・・・あ、ああああああ。」


「・・・・・・・・・・ああああああああああ!!!!」


「かずとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 錯乱状態にも関わらず、見事な措置で止血や応急処置を始める孫呉雪蓮。


「かずと、かずとかずと・・・・・」

「いや、いや、いやだ、しなないでしなないで、しななで、かずとぉ・・・・・・」


 幼子のように泣きわめきながら、てきぱきと処置する姿は滑稽で異常だった。

 そんな中、一刀の手が孫呉雪蓮の頬をなでる。


 ささやくように何かを言っているのだが、私たちには理解できなかった。

 日本語ではない、別の国の言葉、そんな言葉。

 小さくささやきあう二人だったが、しばらくすると、一刀の手が落ちる。


 ゆっくりと、ゆっくりと、孫呉雪蓮の表情に狂気がともる。

 顔色は白く、いや、青く。

 数秒の空白の後、彼女は叫んだ。











「かずとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」









 瞬間、周囲は光に呑み込まれた。






 





 私たちが気づいたときには、第二生徒会本部がなくなり、地面をさらすだけになっていた。

 校舎内にいた第三幹部及び第一幹部は全員無事元の敷地に投げ出されていた。

 腕を刺された一刀も、一応は無事であった。


「・・・わけわからないわ。」


 彼女たちは消えた。

 一刀の腕の応急処置を残して。


「・・・意味不明よ」


 一刀と彼女らになにがあったかはわからない。

 でも、これだけは言える。


「私の一刀ものに手を出すんじゃないわよ」


 その後、第二の幹部の消息が一切つかめなくなっていた。






 傷の癒えた一刀の腕には、あの人物にそっくりの傷跡が付いていた。



はい、どうにかこうにか5話です。


いかがでしたでしょうか?


謎の一端、更なる謎、というかぶっちゃけ確信の一端。


とはいえこの話も時間切れ。


あとはエンドロールと後片付け。


最後はやはり「謎あかし」。


最後のルートまで、おつきあいください。

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