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第一生徒会ルート 第四話

すんごくおまたせしました。


第一生徒会ルート 第四話です。



第一生徒会ルート



第四話


~夏峰春蘭「・・・まるで歯ごたえがない」


 およそ無茶とも言える強襲作戦が実施された。

 実働員は第一及び第三の総務。

 そして私たちだった。

 限りなく無茶苦茶なものだったが、着実な成果が出ていた。

 少なくとも、進む方向の第二生徒会所属の生徒による妨害はなく、救助必要者の山が出迎えるばかりだった。

 進行班は後の処理を後方班に任せ、さらに前進する。


 先頭を走っていた一刀が息切れを始めている。

 とはいえ、自分からさがれる奴じゃない。


「一刀、先頭を代われ」

「・・・まだいける、よ」

「おまえの速度にあわせてたら、行軍が遅れる」

「・・・うん、わかった。」


 先頭を変わる瞬間「・・・・春ねぇ、ありがと。」なんていうのだから、自分でも限界だったと理解したのだろう。

 素直じゃなさすぎるが、そういう愚直なところも嫌いじゃない。


「これから先は情報にあった防戦エリアだ。気を抜くな!!」

『おう!!』


 武に優れたるんかまが続いてくれる。

 それだけで私の力がみなぎる。


「姉者、そろそろ中間地点の構築位置だ。」

「わかった。・・・一刀は中継地点の構築指示、その場で風を待って拠点を!」

「わかった、春ねぇ!」

「あとのものは私に続け!!」

『おお!!!』


 めざせ、そして落とせ!




~孫呉雪連「・・・なに、何のこの早さは?」


 細作からの報告で、第一生徒会及び第三生徒会の連合による第二生徒会への侵攻が始まったという。


 どうにも早すぎる。


 少なくとも、周辺収集にあと一週間。

 さらに侵攻決定まで時間がかかるはずだった。


「冥林、どういうこと?」

「わからん。少なくとも劇的に行軍を早めさせる要因があったのだろう。」

「・・・連合保健室の情報もあてにならない、か」


 聞けば最近、第一も第三も連合保健室へ来ていないという。

 たしかに、第二の支配下にあると、あからさまな示威行為はしていたが、我々の性別は薬品の類一切を不要とできる性別ではないのだ。

 しかし、連合保健室へ支給を求める声がない。

 ということは、何らかの手段で補給物資を偽装して入手しているということになる。

 この地の戦いは温く緩慢だが、動きが早い。

 何度も感覚の修正に手間取る。


「で、どこまで侵攻されてるの?」

「全面包囲寸前だな」


 あっそ、と軽くため息。

 ならば次の戦いは・・・・・


「舌戦か」

「舌戦ね」


 この辺は昔から変わらない、本当に。


 しかし早い。早すぎる。




~曹巍カリン「観念なさい。」


 包囲は完了した。


 すでに中継陣での救援活動が開始され、重傷者は後方に送られている。

 細かい指示などしなくても第三と連携をとって動いてくれるのが助かる。

 本当に一刀は良い男になって帰ってきてきれた。

 あの子に目を付けた過去の私に感謝したい気持ちでいっぱいだった。


「カリン様、後方から難民収容完了の報告と、幹部への協力者の説得に移るとの報告です。」


 なんだか本当に順調すぎて怖い。

 はじめに計画された内容の三歩先に行っている。

 本来であれば本部包囲後の第二幹部解体を実行し、その事実を持って難民救済をするつもりだったが、時間の関係で越権ともいえる実行救済を先に行うことにより、第二幹部に意味なしの状態を実現しようと言うのだ。


「どちらにしても、はやく桃香には来てもらってちょうだい」

「はい、カリン様。包囲完了の伝令が戻るのにあわせて急がせています。」

「・・・いいわ、ありがとう」


 目的が徹底されていれば、その目的に向かって全員が全力を尽くす。

 曖昧な目的設定ではなく、確固たる明確な目標を提示できれば組織は恐ろしくまとまる。

 わかっていたけど、今日ほど実感したことはない。


「さぁ、無能な統治者を引き吊りおろす、その瞬間よ!!」

『おおおおおおお!!!!』





~桂 花代「・・・なんなのよ?」


 およそ理性を越えた、異常な口調でまくし立てる孫呉雪蓮の言葉は急に止まる。

 絶句と言うよりも、何かの衝撃を受けて全身を固めたようだった。

 見開いた目から涙がこぼれ落ち、ガタガタと震える体を支えながら崩れ落ちる。

 なにが起こっているのか、と思ってみれば、何故か第二幹部の大半が同じような調子だった。


「・・・なにが起きてるの?」


 突如現れた北郷一刀が私の隣でささやく。


「・・・わかんないわよ。って、耳元でささやかないで」


 ごめんごめん、と離れる一刀に、前のような嫌悪感は感じていなかったけど、恥ずかしくて邪険に扱ってしまう。

 そんな一刀がカリン様の方へ歩いてゆくのだけれど、なぜか第二の幹部の視線が一刀に注がれていることに気づいた。

 そんなに男がほしいなら、本土に戻りなさいよ。

 そんな風に感じたけど、その視線はもっと違い色だと気づいていた。


「・・・大丈夫なの?」


 思わず声をかけたカリン様に視線を合わせる孫呉雪蓮。


「・・・ええ、もう大丈夫よ、もう。」


 ゆっくりと立ち上がった孫呉雪蓮は、ぼろぼろに流した涙をそのままに不適な笑みを浮かべた。


「・・・いいわ、第二の凍結を受け入れるわ。」

「雪蓮!!」

「冥林、わかったでしょ? 今回はここまで、ここまでなのよ?」


 きゅっと孫呉雪蓮が隣の女性を抱きしめた。

 お互いに抱きしめあった後、強い意志を秘めた瞳でカリン様をみた。


「調停や条約は明日でも良いでしょ? 今日は飲みましょう。あなたたちの戦勝祝いよ?」


 どこまでもふざけた言いようだったが、誰もそれを口にしなかった。

 どこまでも彼女の視線が負けていないことを感じていたから。



 


~北郷一刀「・・・・なんなんだ、この雰囲気」


 戦勝祝い? なんだろうか。

 第二のホールで始まった立食パーティー(?)は、オモイッキリ盛り上がりにかけるものだった。

 だって、ほら、なんというか、負けてないんですよ、第二の幹部の人たち。

 僕やルルが作った料理を「すごくおいしい」と堪能していたし、いろんな人に話しかけて華やかだし。

 圧制を引いていたとか飢饉寸前まで生徒を追いつめたって罪悪感とかいっさいないんですよ、ええ。

 予めカリンから「生徒会運営に関する一切の干渉の禁止」が言い渡されているので、誰も口にできないけれど、内心では面白くない、というよりも理解不能だった。


「どないなってんねん。」


 と呟く真桜の言葉が、みんなの共通意識だった。

 とはいえ、表面上は「にこやか」に会話する三生徒会長の意図があるのだろうから、従わないわけにはいかない。

 まぁ、こっちとしても死人がでたわけではないし、ギブアップや本土介入なんて事態は真っ平なので、呑み込むところは呑み込むべきなんだろうけど。

 そんな中、呑み込むべき感情について吟味している僕の隣に、一人の女子が現れた。

 褐色で目つきが鋭いところは、孫呉会長に似ている気がする。


「・・・あ、あのぉ、はなしても、いい?」


 険しそうだった眉をゆるめ、気弱そうな表情。

 なにが彼女をそこまでさせているのかわからないので、肩をすくめてみせると、ちょっと明るくなる。


「か、かず・・・・いえ、あなたは、その・・・」

「第一生徒会所属 北郷一刀です」


 瞬間、彼女の瞳にブワッと涙が浮かぶ。

 両手で口元を多い、まるで口から何かが漏れるのを押さえ込むようだった。

 ぶるぶると震えるからだを押さえ込んだ彼女は、一度深く呼吸した。


「・・その、大丈夫ですか? 体調が悪いなら・・・」

「い、いいえ、いいの、気にしないで。・・・ちょっといろんな事を思い出して・・・感極まっただけだから」


 なんだろう、今までの僕との会話の中で、どこでそんな要素が?


「立っているのが苦しいなら、ほら、そこに一度座りましょう、ね?」

「・・・うん、ありがとう、うん。」


 その女子の肩を抱き、会場端のイスに導く。

 一度厨房まで走り、水をいっぱい持ってくつもりだったが、何故か僕の裾をつかんでいる彼女。

 何事だろうか、と覗き見ると、真っ青な顔。


「あの、その、おねがい、もう少しそばにいて、くれないかしら?」


 どうしよう、と思ったけど、僕は元の位置に戻った。

 彼女の隣の壁の役。

 彼女は申し訳なさそうに、それでいて、安心を込めたため息をついて僕に寄りかかった。





~楽進 凪「・・・沙和について行けばよかったか?」


 沙和の危機回避能力はスゴいのかもしれない。

 隊長やルルさんの料理につられた私と真桜は正直にそう思った。

 なにしろあの「戦勝会」会場はスゴいいやな気配が渦巻いていたのだ。

 思い出すだけでも、胸が痛い。

 中でも第一幹部の視線が一部に集中していた。

 隊長、北郷一刀が第二幹部女子と仲むつまじく会場端で会話したり、イスを勧めたり、水を持ってきたり、みをよせあったりりりりりりり・・・・・。


「凪、なぎ、しっかりせぇ、なぎ!」


 いけないいけない。

 思い出して暴走してしまった。


 戦勝会会場を片づけながら、私と真桜は少しはなしていた。

 そう、第一幹部数人が私のような調子だったので、明らかに会場の雰囲気は悪かったはずなのに、第二の幹部が異常なテンションで盛り上がっていたため、ほとんどカオスな状態だった。


「しかしな、凪。あいつ等なに考えてるんやろ?」

「・・・全くわからん」


 そう、全くわからないのだ。

 今までの運営状態から見れば、よくて停学本土送還、悪ければ本土送還のうえ退学、刑事告訴なんて線もある。

 捜査の関係があるので、警察の手がこのしまにはいる可能性すらあるのに、彼女たちは気楽に酒宴を楽しんでいるようだった。

 いや、一つだけ、本当に一つだけ、邪推としか言いようがないけれど、一つだけ可能性がある。

 それは、


「隊長やろ?」

「ああ。」


 第一幹部が隊長を追う視線、視線の色合い、表情、すべてが女の感覚に訴える。

 いや、女だからこそわかる色合いを醸し出していた。

 理論も論理も時間感覚も越えて。

 あれは、恋する女の目ではなく愛を確認する女の目、だと。


「・・・うちはそこまで確信はもっとらんけどな。」

「しかし、大まかには一緒の考えだろ?」

「・・・せやな。」


 ばりばりと頭をかく真桜。


「言われてみれば、ストンと落ちるもんがあるなぁ。」


 自分で言うのもなんだが、私にそんな感覚があることに驚いたが、それでもこの感覚は、この共感は嘘ではない。

 そう、彼を愛した女の共感だ。


「しかし、うちの隊長、どこでそんな大量のナンパしとるんや?」

「わからん、しかし・・・・うむ」


 考えがまとまらない。

 とてもいやな、本当にいやな感覚だけ感じていた。





~遼瀬 シア「酒がまずくていかんわ」


「カリンちゃんの命令で、文句一つ言われへん。」


 ムットしていたが、目の前の応急処置が先と言うことで気合いを入れる。

 ホンとなら戦勝会にでようと思ってたが、絶対におもしろくない目に遭うことがわかっていたので、沙和と共に中継砦まで戻って応急処置の手伝いをすることにした。


「ホンマは一刀の料理にも興味があったんやけどなー」

「隊長は、料理も家事も得意なのー」

「ええよなー、嫁にしたいわ」

「沙和も隊長は嫁にしたいのー」


 本当に北郷一刀は嫁向きだ。

 料理洗濯掃除はもとより裁縫も得意ときては女の自分を疑いたくなる。


「ま、でも、いろいろと男って面がいいのー」

「せやなぁ、あれでもいろいろと男やしなぁ。」


 処置を受けていた第二の女子がぐぐっと顔を寄せる。


「おや、興味があるん?」

『ぜひ詳しく!』

「ええでーええでー、詳しくはなしたろ。」


「おまかせください」


 ふらりと現れたのは風。


「ちょうどよいところに、泣かせるビデオが」


 取り出しいたるは「桂花代の涙」と書かれたディスク。

 うっわー、それ破棄されたんちゃうんか?


「・・・バックアップは必ず確保しているものですよ?」

「風チャンは恐ろしい子なのー」

「・・・ぐぅ」

「おい、起きや」

「・・・おお、あまりの酷い言いように、つい眠気が」


 もちろん、みんなで楽しみました。

 桂花、第二の人気もんやで。

 



~曹巍カリン「・・・・ここはなんなの!?」


 第二幹部を軟禁の上、施設を確認していた。

 あれだけのピンハネをしていながら、校舎内は質素の一語に尽きるものがあり、税の極みとは正反対の校舎だった。

 料理を担当した一刀やルルの話でも、食材や保存品は他の生徒会と大して変わらないらしく、贅沢の贅の時も見あたらないと言う。


 ならばピンハネされた物資はどこに行ったのだろう?


 そこで私は、春蘭・秋蘭・一刀を伴って校内探査をした。

 一度の探査では見つからなかったが、ルルから厨房の奥からすきま風があるという話があり、そこから隠し戸があることがわかった。

 吹く風から海側につながっていることがわかっていたが、長い階段の先まで降りきって、私たちは言葉を失った。

 そこは水の張られた洞窟で、遙か昔の中華船が数隻浮かんでいたから。

 どこにも行けない巨大船舶。


 これがピンハネの結果なの?


 あきれるより驚愕の方が大きい私たちだったが、裏付けをとらねばならぬと乗り込んだ。




~北郷一刀「・・・なんだろう、なんなんだろう、この胸の内は」


 僕は奇妙な感覚を覚えていた。

 それはあの階段を下りているときから感じていた感覚。

 懐かしいようで、恐ろしいようで、消しがたい何かが、失い難い物を思わせる何かが胸の内側にいた。

 視界が広がる先にあったそれを見て、まるでハンマーで殴られたかのような、そんな衝撃を覚えた。


 な、なんなんだ、この木造船は!

 見上げる先の船をみて、僕たちは絶句していた。


 乗船して中身を調査してわかったのは、この船が「貯蔵庫」だと言うことだ。

 飲食物や調味料、医薬品・工具・衣料品・・・・・。

 莫大な量のそれはまるで、


「移民船のようね」


 そう、まるで、生活を数年できるほどの量に思えた。

 ただ、奇妙なことがある。

 缶詰ばかりか単なるパック品の食料まであるのに腐っていないのだ。


「・・・こんな量の物資をどこからどこに持ち出そうというの?」


 そう、ここは水があるとはいえ周囲を岩盤で囲まれた場所。

 この大きな船たちをドコから持ち出そうというのか?


「とりあえず、船の捜索と周囲捜索に分かれましょう」


 カリンの指示の元、僕と春ねえが周囲捜索、カリンと秋ねえが船の捜索を続行した。



 何度調べても大きな出入り口などない。

 僕らが降りてきた階段以外の口はなく、真上に穴があるだけだった。

 たぶんどこか、海側のどこかに通じているのだろうけど、船が通れるような大きさではなかった。


 なぜ、ここに船があるのか?

 どうやって、この船を持ち出すのか?

 なぜ、食料がこの船に積まれているのか?

 どうして、彼女たちは・・・・・


「・・・一刀、一刀ぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 カリン尾悲鳴が聞こえた。


「姉上!! 一刀は一刀はそこにいるかぁ!!!」


 秋ねえの絶叫。


「なにを言ってる、一刀はここにいるぞぉ!!」

「・・来てくれ、一刀を連れてきてくれ!!!」


 錯乱一歩手前の調子を、春ねえと共に不振に思いながら、僕らはカリンと秋ねえの元へ急いだ。 



はい、第四話でした。


実は、この後はつるべ落としです。


一気にアップしても良いかと思っていたのですが、校正する時間も欲しいということで、間隔をおきます。


おたのしみに。

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