第一生徒会ルート 第三話
第一生徒会ルート
第三話
~劉蜀桃香「・・・ほんとうにいいんでしょうか?」
労働の対価ということで、塩田の上がりの半分ももらってしまっているんですが、本当にいいんでしょうか、と聞いたところ、北郷君はにこやかに「当然の報酬ですよ」と言い切った。
内々にカリン会長に打診したところ、カリン会長も「対価として当然よ」と言ってくれたのは良いんですが、こんなに医療品を大量に買うこともないんですよね・・・・。
そんな風にいう私に、朱里ちゃんと雛里ちゃんが教えてくれた。
衣食に足りて初めて他人を助けることができるはずです、って。
そう、私たちって自分たちや応援してくれる人たちとの食事で精一杯で、他人を助けるなんて言うにはおこがましい活動しかできていないんだよね。
うん。
浪人学生問題だって、そのほとんどを第一が解決してくれたし、私たちが出来ることなんてあるのかなって思っていた。
でも、あった。
少なくとも、浪人学生問題なんて目じゃないほどの緊急事態。
『難民学生問題』
最初話を持ち込まれたとき、何の冗談かとおもったけど、領内で調査をしてみて驚いた。
第二との隣接区で、第一で見つかったのと同じような生徒が二人見つかって。
最初は連合保健室に連絡しようと思ったけど、第二の不信は私たちも感じていたことなので、第一の支援を受けて介護できた。
彼女たちから聞いた第二の生活は過酷の一語に尽きるもので、まさに生き地獄、と感じた。
何とかしたい、と心から感じたけど、私たち第三では力が足りない。
無力感にさいなまれた、苛まれていた私たちに、北郷君が怪しげな話を持ち込んできた。
塩を作って売りましょう、島外に、と。
そう、完全に「密輸」。
幹部全員で否定したけど、でも、北郷君は一人でもやります、でも、力を貸してくれたら報酬をお分けします、といってくれた。
色々と悩んだし、色々会議したけど、結論は出た。
やる、と。
で、やってみたら結構おもしろかったし、作る喜びってこういうものなんだって感じられた。
かなりの量が出来たところで、北郷君が持ち込んだパッケージをみて私たちは固まる。
「な、な、なんですか、この『乙女の塩』といういかがわしい袋は!!」
朱里ちゃん雛里ちゃんは真っ赤になって倒れたし、愛沙ちゃんはすごい勢いで木刀を一刀君に打ち込んでいた。
いや、なんというか、下品だけど、描いてある絵は綺麗だよ?
でもさ、なんでカリンさんの全裸っぽい絵なの?
そう聞いた私に、北郷君はまっすぐに答える。
「言い出したのは第一ですから、やばい橋はこっちでもたないと」
これが第一の、北郷君の強さなんだって分かってしまった一幕だった。
はじめに少量、父島方面に流したところ、一気に本土の好事家に蔓延し、もっともっとと要求されることになり、今ではたぶん、蔓延している塩の五倍の偽物が流れているだろう、って話。
塩は専売販売物なので、ばれれば凄いことになるけど、偽物が大量発生しているので、目くらましになるだろうって言うのが、北郷君の話だったけど、そんなことまで見据えているのはちょっと怖かった。
とはいえ、急場どころか、かなりの資金的余裕が出来た私たちは、始めることにした。
私たちが出来る、私たちがしたかった活動を。
~桂 花代「・・・・あぁぁん、カリンさまぁ・・・。」
一刀の裏切りで私が書いたことがばれてしまった挿し絵だけど、冷静になったカリン様にはお褒めいただいた。
最初は第三の幹部が水着になって写真を撮り、首から下をトリミングする予定だったらしいのだけれども、それでは第三ばかりのリスクが大きすぎると私が反対。
確かにその通り、と考えて、そして詰まる。
どうしよ、と。
マスコットキャラでもかくかとおもったけど、それでは「乙女の塩」のバリュー足り得ない、と一刀が強く主張。
男ってやっぱり変態。
そんなこんなで私がカリン様の姿絵を描いたところ一気に採用。
で、売ってみたら凄い反響で、カリンさまも興味がわき・・・・
「・・・・あぁぁぁぁぁぁ」
急遽思い出してみもだえる私におびえる風。
分かってないわ、分かってないのよ。
おこさま風にはカリン様の愛らしさが分かってないのよね。
「風には、単に変態性欲に身悶えてるようにしか見えないのです。」
ふん、おこさまにはわからないですよー。
「それよりも、そろそろ購入品目を煮詰めますよ、大人の変態性欲さん。」
へ、変態じゃないわよ!
~程ヶ谷 風「・・・エロ塩」
お兄さんは、なんというか、予想の斜め上をいく人でした。
すごい学習方法の提案もそうですが、進んで密輸をしようという発想がスゴすぎです。
で、何を輸出するかと思いきや、塩です塩。
それも「エロ塩」
エロエロです。
はじめのはじめは汗とかから生成しようとか思っていたらしいのですが、さすがにヤバすぎます。
それでも女子が、汗水垂らして生成した塩と言うことで産地不明ながら大人気。
裏ネットで天井しらずの人気になっているとか。
需要が天井になったあたりで流す手法が堅すぎで、いくらでも資金が入ってくる状態になってしまいました。
逆に産地探索が始まっているので、しばらくは出荷しないと言っていましたが、おいしい稼ぎをどこまで我慢できるのでしょう?
「いや、我慢というか、自給する分だけでも生産すればいいかと」
さすがお兄さん、エロエロです。
自給と称して乙女の汗がなめたい、と?
「いやいやいや、風。それちがいますから!」
はねるように否定するお兄さんはからかいがいがありますね。
「あはははは、からかわれてるんだ。」
がっくり肩を落とすお兄さん。
「まぁまぁ、第一と第三の供述をまとめましょう」
「うはーい。」
みんなにいじられて、かわいそうですねー。
・・・おもしろいけど。
第一と第三に収容された難民から、体力が回復し次第に集めた供述から、第二の現状というものがしれた。
配給レベルは最低で、どれだけ試験でいい点を取っても配給の反映されないと言う。
仕送りの大半をピンハネされ、生活は困窮。
雨露がしのげればよいとばかりの扱われ様は、非道の一語に尽きる。
他の生徒会への妨害活動に動員されている生徒も、大半は飯ストを人質に取られている生徒で、食糧事情がいいわけではないと言う。
あそこで食べていられるのは幹部だけ。
そんな生徒会があっていいものか、お兄さんは怒っていました。
でも、どうなんでしょう?
正直に言えば、私たちがこんな状態の第二をしれたのは、お兄さんが速攻で浪人学生を纏めたからなんです。
だからその中に埋もれて解らなくなっていた「難民」存在が浮き彫りになり、そしてその対応を積極的にしようと言うことができたのです。
お兄さんが入学しなければ、もしかすると手遅れになっている人がいたかもしれません。
そうなれば、私たちは自分たちの無力を嘆いて居たのでしょうか?
いいえ、自分たちの責任ではない、第二の非道許すマジと勘違いも甚だしい怒声を上げていたのでしょう。
「・・・勘違い?」
そうです、お兄さん。勘違いです。
自分たちの手の中しか見ず、自分たちの周りしか見ず、自分たちに従うものたちだけを相手することが、果たして生徒会といえるでしょうか?
配下にない人々も、支配下にないところも、おしなべて気を使うべきだったのです。
風は 今更ながら今までの行いを省みているのです。
「それは、後悔?」
後悔ではありません。
しかし、風たちは省みなければならないのです。
そしてこれからに生かさなければならないのです。
「とりあえずは、何をしよう?」
「、あ。戯言はおいておいて、カリン様の大方針を決めるための使用作り、これを早急に、ですね。」
「ふわーい。」
~曹巍カリン「・・・」
第一生徒会内での決心はすんでいる。
いま相対する第三生徒会幹部との折衝だが、恐ろしいまでに和んでいた。
というか、一刀がお茶とか茶受けとかを用意していると、それを喜んで受けたり、先日の茶受けもよかったとかはなしているのって、どう言うことなのよ!
言葉にしない私の意志に気づいてか、一刀は小声で私に囁く。
塩田作業の合間に茶受けとか出しているので、と。
・・・まぁ理解するわ、一応黙認してるし。
和やかな雰囲気もまぁいいでしょう、そう言うものだと理解すればいい。
たっぷりと時間をかけて計画所を読んだ、第三生徒会会長は、深いため息をついた。
自分たちの調べた内容とブレのない内容から、難民が語る第二生徒会の最小公倍数的な事実が拾えたと見ていいだろう。
「で、第一はとにかく第二生徒会の活動凍結と代行運営を行う、と?」
「それは最後の手段よ、桃香会長。少なくとも、我々ならとれる手段があるわ」
「・・・そう、ですね。」
浮かない顔の彼女だが、これは迷いではないのだろう。
あえて言えば「残念」。
できれば、できうるのならばと前置きするが、彼女は「みんな」が割れる環境を求めているのだから。
少なくとも第二幹部以上は切り捨てなければならない事態を考えると、決断しにくいのだろう。
「桃香会長。私はあなたが判断席内理由を理解しているつもり。だからあなたが判断しないと言うのならば独自にやらせてもらうわ。」
その言葉を聞いて、桃香会長は大きく息を吸った。
ぐっと胸を張りほほえむ。
「いいえ、私たちもやります、できます。」
その瞳には迷いはなく、背負うものとしての光があった。
「なら、賛成してくれるわね?」
「はい。一部の条件がありますけど。」
この後に及んで交渉? ちょっとおもしろい気分になった私に、桃香会長はほほえむ。
「絶対ギブアップは無し、ということで!」
「当たり前よ。」
私たちは手を握りあった。
その握手は一時的なものだったが、南洋校舎を思う気持ちは永遠だった。
~真桜「・・・目が回るほどの忙しさや」
第二生徒会解体作戦と銘打たれた今回の作戦は、主に三つの目標があった。
一つは第二生徒会一般学生の救済。
一つは第二生徒会幹部の捕縛。
一つは第二生徒会の再生。
準備するための資材は膨大だし、必要なものも多すぎた。
しかし、密かに積み上げられた資金もかなりのもので、すべてを負担してもあまりある量だった。
こんな資金がどこから、と体調に聞いてみたけど、計画な答えは聞けなかった。
たぶん、人助けのためとはいえずいぶん無理をしたのだろう。
この人は毎日の中でもかなり無理してるのに、ピンポイントでもすごむ無茶をして困ってしまう。
「隊長、むしりたらあかんで。」
「今無茶しないでいつ無茶するんだよ。誰かが死んでからじゃ遅いんだ」
少し血走った目で、隊長は自分を追いつめているようだった。
「隊長、あんたが倒れたら、あんたの部下であるウチらが無茶せんとアカン様になるんやで? あんたはそれを知ればもっと無茶する。アホのスパイラルになるちゅうのや」
少し目を見開いた隊長は、アタマを振ってほほえんだ。
少しだけいい表情に戻る。
「ごめん、真桜。・・・少し仮眠するよ。」
「ええって。そのあいだぐらいうちらでやるて」
「・・・うん、頼りにしてる。」
うちは、ちょっと元気を分けたるつもりになった。
ちょっと隊長の頬をついばむ。
「・・・え、真桜?」
「元気だしや、うちの初キッスや」
「・・え、あ、うん、ありがとう」
ほんま、真っ赤になってかわいいったらありゃしない。
安売りはせんと決めとったけど、隊長相手ならええよな、おかん。
「あ、真桜ちゃんずるいの、、沙和もするの!」
「・・・隊長、自分も・・・。」
あー、もう、うちらは三人ワンセットかいな。
それでもええけどね、もう。
「ところで隊長、風がいっていた『エロ塩』ってなんですか?」
あかん、隊長が急に倒れた。
だから無理したらアカンちゅうたやろ!!
~北郷一刀「・・・エロ塩禁止」
さすがに意識が途絶えましたよ、
「エロ塩」
あのお子さまは、何つう単語をふれ回っているのやら。
不意打ちで僕の命が刈り取れます。
要注意としてもらわないと。
・・・なんていうんだ?
エロ塩は刺激的な単語なので、勘弁してください?
言えません言えません。
いくら自分に正直な僕でも、言えません。
「まいったなぁ・・・・。」
思わずため息がでてしまった。
幸せが逃げるといいますので、逃がしてたまるかと捕まえるまね。
「で、一刀。何をしてるの?」
「ため息で漏れた幸せを捕まえたところ」
僕の枕元にたつカリンまでため息。
「ちょっとは正気に戻ったかと思ったのに、まだまだダメかしら?」
いやいや、もうかなり寝たので元気。
体感的には五時間はねたし。
「また倒れてから一〇分も経ってないわよ」
ありゃま、と肩をすくめる僕。
「一刀、何を焦ってるの?」
さすがカリン、僕のことをよく解ってる。
だから、僕の心の内を話すことにした。
「カリン。なぜかは解らない。だけど急がないといけないんだ。 急がないと間に合わなくなる。 ただそれだけが解るんだ。理屈じゃなく、それだけが解る。」
心身症かもしれないし、考えすぎかもしれない。
でも、僕はそう感じている。
確信だけを胸に。
「そう。」
短く答えたカリンは、背後に声をかけた。
「桂花、いるわね?」
「・・・はい。」
「行程を一週間前倒し。」
「・・・無茶です、カリン様」
「私は命じたわ。」
「・・・っ! 解りましたカリン様。なんとしてでも成し遂げます」
人の気配が消えると、カリンは僕に向き直った。
「これで何もありませんでした、ではすまないわ。
でも、何もなかったという結果が一番だというのが悲しいわね。」
そして、その結果は得られないことを、僕もカリンも感じていた。
作戦の開始は二週間後だったものを一週間後に縮められた。この変更で修正できたかは解らない。
修正できていれば、もしかするとこの胸の内の焦燥感が治められるだろうか?
お待たせしました、第一生徒会ルートの第三話です。
展開が第三生徒会ルートに比べて、早い・チートとご意見を伺っていますが、このへんはいわゆる「ひぐらし」ちっくな無意識外の経験累積があるかも・・・ということでスルー願います。
続きます第四話は、ちょっと難産気味で、少しお時間をいただければ、ということでお願いいたします。
ご意見ご感想をお待ちしています。