第三生徒会ルート 拠点フェイズ2
じりじりと上がるシリアス成分を中和しようと、さくっと拠点フェイズを入れてみました。
当然、出てくる人たちは変な人ばかりですよねーw
第三生徒会ルート
拠点フェイズ2
~雲関 愛紗「・・・その、なんだ、触れ合う時間って大切だと思うぞ?」
学習状況の改善と習得率の上昇は目を見張るもので、予習復習補習に当てていた時間が格段に減った。
こんな時間があるとバカな余暇に走る人間が増えようものなのだが、その急先鋒たちは時間を惜しむかのように巡回に出てはトラブルを治めてきていた。
・・・北郷と。
始まりは鈴々が「デート」占有禁止を謳って強引に巡回に出たことなのだが、同調するように馬場姉妹や桃香会長が引っ張り出し始めた。
もちろん、各員によるフォローがあるので混乱は最小限だが、其れなりに不満が積もってきている。
曰く、会計二人組み。
内政が多い二人にとって、親衛隊というからには会長直参のはずなのに、何で外ばかり! と言っているが、実際にはかまって欲しいという思慕の情が渦巻いている。
曰く、親衛隊隊員。
既に船からの飯ストである三人と北郷が一緒にいられる時間が少ない、と考えているようだ。
曰く、副長。
・・・そう、私。
雲関愛紗も大いに不満だ。
勉学にも家事にも才を見せる北郷だが、腕っ節がからっきしであることが大いに不満だった。
せめて武術の一つでも収めてもらえないと、こちらの都合にも・・・
ゲフン、ゲフン。
それはさておき、腕っ節を人並みにするよう桃香会長に進言したところ、大いに乗る気の許可が出た。
「親衛隊長自らかぁ、いいなーいいなーいいかもなー。」
ちょっと夢見がちな感じだったけど、会計からも許可が出たので、週三ぐらいの訓練を入れることにした。
~干田 沙和「・・・隊長ってば、不憫なの~」
武術訓練というものが始まりました。
一応、私や真桜ちゃん凪ちゃんは武術の心得があるんだけど、隊長はからっきしということで副長自ら指導することになったんです。
初めは空手。
続いて合気。
さらに剣道。
日に日に隊長がやつれていくのがわかります。
教えている内容は正しいですし、隊長も良く食らい付いているとは思いますが、如何せん相手が悪い。
あの爆乳で背後から姿勢を正したり剣の持ち方を直したりするのですから。
そのたびに隊長は赤くなったり青くなったりで、なかなか集中できないようです。
一応、技術は其れなりに向上しているものだから性質が悪く、副長も指導の仕方を精査すれば、もっと伸びると確証している様子。
が、伸びるのは直接指導型ボディースキンシップ時間のみという恐ろしい結果。
天然の副長は何故隊長が困っているか理解していないらしく、「まじめにやるのだ」とか「力を抜け」とかいって何度も抱きしめていた。
そのたびに「ぎゅっ」と大きな胸が押しつぶされ、比例するように隊長が赤くなった。
「なぁ、あれ、天然なんかなぁ?」
「気付いててやれるほど、副長も擦れていまい。」
というか天然すぎ。
あれじゃぁ隊長ももたないんじゃいかなぁ?
~子雲 星「・・・見蕩れてしまった。不覚。」
本来ならばどうってことない素振りのはずだった。
木刀を構え、流れるように打ち込む素振り。
相手を想定していない、ただただ練習の為だけの練習。
しかしそれを私は美しいと感じてしまった。
日中、愛紗に弄られまくっていた姿を肴にからかいに行こうと思い立ったが、自室に一刀の姿は無かった。フロかトイレかとうろついている所で、裏庭から音が聞こえた。
真っ暗な裏庭に彼はいた。
それはただ、正眼から振り上げ、そして振り下ろすだけの動作だったが、真剣を持たせれば必ず「切れる」動作だということが判るほどだった。
真摯に、ただ真摯に打ち込むだけの姿が、これほどまでに美しいとは思いもしなかった。
まるで美術彫刻品でも見ているかのような気持ちにさせられたところで、その時間は終わる。
「・・・あ、星さん。こんばんわ」
にこやかに微笑む顔には、先ほどの気配は無い。
家事が得意な少年の顔だ。
「一刀、君は本当に武術に覚えは無いのか?」
私の問いにゆっくりと頷く。
そんな仕草にすら美しさが秘められているかのように思えてならない。
(駄目だな、今日は冷静ではないようだ。)
邪魔をしたことをわびつつ私は部屋に戻った。
胸の内が熱すぎてよく眠れなかったのだが、それが私だけではないと知るのはしばらく後のことだった。
~朱里「かっこうよかったね~?」雛里「・・・かっこうよかったよねぇ。
かわいいエプロンをつけて朝食を準備する姿と昨日の鍛錬をしている姿は重ならなかった。
というか、今目の前の一刀さんはかわいいんだけど、昨日を思い出すと「かっこよく」見えてしまうのが不思議です。
思わず、ぽーっと見ていると隣の雛里ちゃんが囁く。
「朱里ちゃん、昨日はっっこうよかったねぇ・・・。」
「うん、かっこうよかった」
強そうだとか、そういうのではなく、きれいで美しかったのだ。
そんな風に思っているのは私たちばかりではなく、見渡す限りみんな同じようだった。
ぽーっと見ていないのは鈴鈴ちゃんぐらいなもので、軽いノリの蒲公英ちゃんですら、頬を赤らめてる。
「・・・さーてと、できましたよー」
ゆったりと配膳する姿にしばらく見とれていた私たちだったけど、はたと気づいて手伝う。
「みなさん、今日はどうしましたか?」
ぶんぶんと首を横に振るのは私ばかりではないはずだ。
~北郷一刀「・・・なんだか視線が熱いな?」
朝食からこっち、なんだか周囲からの視線が痛い。
なにか問題でもあるのかな、ということで朱里ちゃんや雛里ちゃんに聞いてみたけど、
「い、いいえ、何も、何も問題ありましぇっ(がぶ)」「・・・・・(ふるふるふるふるふる)」
全力に否定。
なんとも、逆に疑わしい。
周辺から証言をとってみたけど、全く効果が上がらない。
解ったことは、みんな顔を赤くしているって事。
集団で風邪でも引いたのかな?
そう思って祭先生に聞いてみると、深い深いため息をつかれてしまった。
「おぬし、鈍いとよく言われんか?」
ああ、確かに言われていたことがありますね。
この学園にはいる前、男子生徒は鈍くなると言う呪いがかかっているという噂の学校に通ってましたし。
でも、でもそれと現状とどんな関係が?
「わからんなら、そのまま放置するんじゃな」
肩をすくめて去る祭先生。
役に立たないなぁ、と失礼なことを考えてしまったことは秘密。
~楽進 凪「隊長は、その、なんというか・・・」
親衛隊や総務人員増員に当たり、訓練をすることになった。
指示や点呼が十分に伝わらないと、急場に対応できないからだ。
もちろん、今までも十分に対応できていたけど、この所の異常対応の多さは訓練し直すに十分なものといえた。
「凪支隊、そのまま前へ!」
「沙和支隊、後退なの!!」
「真桜支隊、右や!」
一糸乱れぬ部隊運用が行われている背景には、北郷隊長の支隊が対戦相手として向かい合っているからだろう。
最近、部隊支持や判断力を上げた隊長は、模擬戦を提案した。
自分の部隊運用と私たちの部隊運用ですり合わせをしようと言うのだ。
確かに私たちの部隊運用は隊長に劣る。
しかし、一対三で負けるほどの力量差はないはずだった。
「いけるぞ、そのまま押しつぶせ!」『了解』
「囲いこむんや!」『了解』
「ブレたところを打ち崩すの!!」『了解!!』
各個に防戦する北郷支隊が崩れた、と思ったそのとき、割れた北郷支隊の奥から新しい人員が割ってでてきた。
「義によって助太刀するのだ!」
「・・・助っ人」
「ふふふ、出番きたる」
鈴鈴、恋、星、と総務部隊。
三人が正面に当たり、左右に分かれた北郷支隊が真桜と沙和の部隊に向かった。
唖然とした私たちの部隊は即時に負け、勝負はついた。
「・・・でも、ずるい」
~子雲 星「勝と思うな、思えば負けよ」
親衛隊の部隊演習に私たちを混ぜるのはどうかと思ったが、思いの外おもしろかったのでよかったという事にした。
もちろん、親衛隊の各支隊は不満一杯だったが、これからの情勢を考えれば、見えない敵の一つや二つを楽々相手に出来るほどでなければ、危うい状況が大いに違いない。
そんな意味では今回の敗北は糧になるだろう。
そう、そうれは・・・・・
「はむはむはむはむ」
「うまうまうまうま」
「がつがつがつがつ」
この旨いカレーを食してる今、もう、なんだか、関係ない。
音宮ねねと北郷一刀による演習ご苦労様カレーは、部隊の談笑時間を奪った。
にこやかな笑みも総評も評価もすべて奪い、ただひたすらにお代わりする機械を、機械集団を作り上げた。
「ふっふっふ、これならばいけますぞ、同士一刀」
「いけますねーいけますねー、同士ねね」
不気味に笑う二人を解っていながら誰もつっこみを入れられなかった。
くそー、何でカレーなんかがこんなに旨いんだ!
すでに勝負は決していた。
親衛隊及び総務は、このカレーのために命を懸けることになる。
もう、これは決定事項だった。
~雲関愛紗「・・・これほどとは・・・」
私からの手ほどきの結果を見せたいという事で、親衛隊の部隊運用の模擬戦を見に来てほしい、と一刀から請われた。
正直、一刀個人の武芸には伸び悩みを感じていた私だったが、夜半に一人で練武している姿は見所がある以上のものがあったので、その話に乗ることにした。
そして行われた演習は、まるで個々の支隊が支隊長の体の一部かのように運用され、また、その支隊ごとの競り合いは、まるでつばぜり合いのような緊迫感があった。
最後は絡めてで北郷支隊が劣勢を跳ね返すというオチがついたが、それでもあれだけの中隊規模を自分の支隊の陰に隠して悟らせない様は見事だった。
まさに実践に則した武術の体現といえる。
演習で一体感をまとめあげ、さらには昼食でさらに胃袋をつかむとは、心底感心させられた。
・・・とはいえ、この匂いはたまらない・・・。
星、私にも・・・・
「あー愛紗ちゃんずるいー」「私たちにも、くだしゃい~」「・・・わたしにも、わたしにも~」「・・・あ、あのぉ、わたしもいいですかぁ?」「・・・僕も」
まるで雪崩るように押し寄せる事務方。
ま、まけてらえるか!
~北郷一刀「・・・ふふふ」
南洋校舎カレー同盟ここにあり。
分校にいた頃からだけど、あの土地の人間はカレーが好きで好きで、一家庭一カレーというぐらいに「極めて」いた。
もちろん僕もそれなりに研究していて、一部勢力を作っていた。
疲れていれば疲れているほど旨く感じるという「体育会系カレー」の同盟で、濃い味や塩気の高い味が特色の同盟だったけど、僕はそこに別種のウマミをつぎ込むことにより同盟の小覇王と呼ばれていた。
このレシピ自体は秘匿していて、誰にもあかしたこともなかったんだけど、ルルとねねには速攻でばれた。
そんなわけで、南洋校舎カレー同盟がその場に生まれ、事あるごとに布教しているわけだ。
愛紗さんも、まさかカレー布教のために演習をしたとは思うまい。
「・・・同士一刀。第三はすでに落ちましたな?」
「・・・ええ。第一は同士ルルの手によって大半が落ちていると言います」
すでに季衣、春蘭、霞の体育会系は落ちており、本格的に落ちていないのはカリン会長だけだとか。
「しかし、カリン会長は難しいですぞ?」
「・・・確かに」
きけばカリン会長は辛いものが苦手だとか。
「最悪、唐辛子を抜きますか・・・。」
「同士北郷、それは古代インド系の?」
「ええ。唐辛子が伝わる前の、です」
「さすがですな、同士一刀。」
ともに目指すものが同じならば、過程は気にしない気にしない・・・・。
『ふっふっふっふっふっふ』
我らのカレーによる南洋校舎統一は目の前と心躍っていた。
ちょっとキャラクターが崩壊気味ですが、日常はこんなものかと。
とはいえ、本編のほうも間違いなく日常なので、そちらも展開します。
それは急激に。