「好きです」と書かれた紙飛行機が毎日後頭部に追突して来るんだけど最近は飛行速度に殺意が乗っている気がするので早く送り主を特定したい。
それはちょっとしたおまじない。
告白の言葉を書いた紙を紙飛行機にして飛ばし、それを好きな相手が受け取れば、その恋は成就する。
春先やイベント間近にはあちこちで紙飛行機が飛び回り、一時期は禁止令が出るほど。
そして僕の後頭部に、紙飛行機が激突した。
地面に落ちたそれを拾い中を開くと、そこにはシンプルに「好きです」の一言。
辺りを見回すが、送り主らしき人物は見当たらず。
僕はふっ、と髪を掻き上げて、
「やれやれ、モテる男はツラいぜ……!」
その紙飛行機が飛んで来るようになったのは、二年に上がった頃。
最初はふわっ、と柔らかく。今ではしゅぴんっ! と頬を切るような速さで、僕を目掛けて飛んで来た。
僕の交遊関係からして、送り主と想定されるのは三人。
「また同じクラスだね、これからもよろしく。ふふっ」
同い年のクラスメイト。派手なタイプでは無いが、自然と目を惹く人気者。
「一人でお昼? かわいそうだから、かわいい後輩が付き合ってあげるよ、センパイ」
年下の幼馴染み。ナマイキだが、そこがかわいい所でもある。
「お疲れ様。そろそろ一休みして、お茶にしましょうか」
年上の部活の先輩。いつも微笑みを浮かべた優しい雰囲気。
紙飛行機の送り主は、きっとこの三人の内の誰かだ。
「という訳で、誰だと思う?」
「いや、知る訳無いだろ?」
せっかく相談したのに、親友からはそんなにべもない返事。
こいつと知り合ったのは、二年に上がって同じクラスになってから。最初はいけ好かないイケメンだと思っていたが、話してみると妙にウマが合い、今では親友と呼んで差し支えない。
「僕としては、やっぱり同じクラスのあのコかなと思うんだが」
「あれは誰にでも優しいタイプだろ」
「じゃあ幼馴染み?」
「異性として意識されてないな」
「て事は、先輩が?」
「単に子供扱いされてるだけだよ」
「じゃあいったい誰なんだよ!?」
頭を抱えてうつ向くと、そんな僕の頭に、紙飛行機が乗った。
「くっ、またか! どこだ!?」
慌てて辺りを見回すが、やはり送り主らしき人物は見当たらず。
再び肩を落としてうつ向く僕に、親友もため息をひとつして、
「早く見付けろよ、バカ」
ぽつりとこぼすように、そんなすねたような言葉が飛んで来た。
BLというより、親友は男装イケメン女子のイメージ。