表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛より友情を取る俺は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても――  作者: 九傷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/22

第十七話(EX) 恋愛より友情を取る僕は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても―― ⑦

 


 感情というものは本当に厄介だ。

 制御したいと思っていても、大抵の場合は上手くいかない。

 これは僕の経験則だが、特に女子はその傾向が強く、良くも悪くも感情的な存在だと思っている。


 正直、比率で言えば悪い方に傾くことが多く、それゆえに苦手意識を持ってはいるのだけど、ギリギリのところで女嫌いというレベルにはならずに済んだ。

 これはやはり信之助と、美少女ゲームのお陰と言えるだろう。


 地雷という言葉は普段口に出さないが、実際にそう表現するにふさわしい存在はあちこちに潜んでいる。

 普段は清楚で穏やかだったり、明朗活発で裏表のなさそうな人でも、その本性は苛烈で怒りっぽかったり、陰湿で変態的だったなんてことが過去に何度もあった。


 その地雷を処理し、歩きやすくしてくれているのが、窓口を担当してくれている信之助である。

 もし信之助がいなければ僕は引きこもりになっていたし、間違いなく女嫌いにもなっていただろう。

 そして、そんな手厚い介護があったにも関わらず苦手意識が抜けないのは、信之助の目すら欺く特級呪物が僅かながら存在していたからだ。


 感情の化け物である彼女達が存在する以上、僕から女子に対する苦手意識が消えることはない。

 男の本能ゆえか女子を好きになること自体はあるし、付き合えばそれなりに楽しむことができたけど、心の奥底には壁のようなものがあって本気で踏み込むことができなかった。



 …………今までは。





 ◇





「緒方君! 眼鏡作戦、大成功だったよ!」


「……それは良かったね」



 嬉しそうに笑う南野さんに対し、僕も笑顔で応える。

 本心から良かったと思ってるし、笑顔だって作ったワケではなく自然に出たものだ。

 ……だというのに、何故か下腹部のモヤモヤした感覚が生じている。

 胃が痛いというワケではないのだが、その前兆のような微妙な不快さだ。


 僕は今、地元から二駅離れた場所にあるファーストフード店で、南野さんから信之助とのデートの結果報告を受けている。

 南野さんはデート後にそのままここに来たようで、信之助とデートをしたそのままの恰好だ。

 そのせいか、なんだか信之助に対する罪悪感も凄い。

 腹がゴロゴロするのは恐らくそれも理由の一つだろう。



「一緒に帰れなかったのは残念だけど、それでも凄く楽しかったよ! 協力してくれて、本当にありがとね♪」



 南野さんと信之助が付き合っていることは、周囲に秘密となっている。

 期限付きとはいえ、クラスメートなどにバレると面倒なことになるからだ。

 信之助としても僕には絶対知られるワケにはいかないと思っているハズなので、細心の注意を払って待ち合わせの場所も解散場所も地元からはかなり離れた場所に設定していた。


 しかし、実はデートの場所やプランを考えたのは、全て僕だったりする。

 理由は単純で、信之助も南野さんも、今まで一度もデートをしたという経験がなかったからだ。

 正直デートプランについても全て南野さんに任せるつもりだったのだが、彼女はこと恋愛事に関しては完全にポンコツだったのである……


 初デートだというのに富士山に登りたいなどとワケのわからないことを言い出すし、それでいてヒールを履いた方がバランス良いだろうかと悩みだす。

 挙句の果てに、ゴムの薄さはどのくらいが適正かなど尋ねてくる始末。

 彼女の頭の中で一体どんなストーリーが繰り広げられていたかはわからないが、その情報だけでは「富士山にヒールで登頂し、そのまま結ばれたい」と言っているようにしか聞こえない。


 信之助は信之助で急に僕がどこでデートしているのかとか、どんな服装なのかとか、普段遠慮して聞いてこないような質問をしてくるテンパりっぷりだった。


 結果的に、二人のデートは僕がプロデュースせざるを得なかったのである。



「そういえば、実際に見てもらうのは初めてだけど……、どうかな? 私、変じゃない?」


「全然変じゃないよ。とっても似合ってる」


「良かった~! 桧山君優しいから、お世辞の可能性も否定しきれなかったんだよね~」



 ……僕も、お世辞抜きで本当に似合っていると思う。

 正直、想像していたよりも3倍くらい可愛い。


 南野さんの服装についても、僕からのアドバイスが八割近く採用されていた。

 僕は信之助の好みを完璧に把握しているし、伊達眼鏡についても僕がオプションとして提供したものだ。

 確実に信之助にはぶっ刺さっただろうし、デート中は終始ドキドキしていたに違いない。


 そしてそれは、信之助と好みがほぼ一致している僕にも言えることであった。



「信之助は正直者だからお世辞なんて言わないよ。良い反応があったのなら、そのまま受け取っても大丈夫」


「え、えへへ~♪」



 カーディガンを脱ぎ、薄着となった南野さんは――、はっきり言ってとても魅力的だった。

 制服では気瘦せしてるのか気付かなかったが、南野さんのスタイルはとても良く、メリハリある美しい体つきをしている。

 女体に耐性のある僕でも少しドキドキするくらいなので、恐らく信之助にとってはかなり刺激的だったのではないだろうか……


 眼鏡についてもかなり似合っており、彼女の魅力を倍以上に引き出している気がする。

 元々は僕の好きな美少女ゲームのキャラグッズだったのだが、正直そのヒロインよりも似合っている気さえした。

 ……今になってそんな風に思うなんて、僕は悲しいほど愚かだ。



 こうして南野さんの嬉しそうな表情を見ていると、改めて気付かされる。

 僕は本当に、彼女のことを好きになってしまったんだと……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱつれぇわ( ˘ω˘ )
 それなんて修羅場…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ