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恋愛より友情を取る俺は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても――  作者: 九傷


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第十五話(EX) 恋愛より友情を取る僕は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても―― ⑤

 


 利害の一致した僕らは、互いの持つ情報を開示したうえで綿密な計画を立てることにした。

 まず僕が提案したのは、南野さんが信之助に恋愛相談を依頼することだ。



「えぇ!? で、でも、それじゃあ確実に誤解されちゃうでしょ?」


「そうだね。だからもちろん、ちゃんと理由はある」



 南野さんが僕に相談しに来た時点で、既に状況は逼迫(ひっぱく)していると言える。

 あくまでも南野さんの予測ではあるが、恋愛相談をした女子の半数近くは、真摯に恋愛相談に乗ってくれた信之助に惹かれてしまったらしい。

 南野さんは「そんな簡単に乗り換えるなんて、尻軽です!」と、ややキツめなことを言っていたが、僕から言わせれば当然の帰結だと思っている。

 断定はできないが、恐らく彼女達の僕への想いなんて、見た目などのスペックに惹かれたに過ぎないからだ。

 言ってしまえばそれはアイドルや俳優に憧れるようなもので、恋愛感情とは似て非なるものである。

 それが手に届く位置にあるからこそ手を伸ばしてみたが、触れられればラッキーといったライブ客のような感覚の子が多かったのではないだろうか?


 つまり、僕に告白をしなかった子達は乗り換えをしたのではなく、ただ本当の恋に気付いただけ――というワケだ。



「……なるほど、つまり桧山君をロック状態にするってことだね」


「そういうこと」



 信之助に惚れた子達は、何故すぐに告白をしないのか?

 その理由はいくつか考えられる。


 一つ目の理由は、恋愛相談をしたことが一つの足かせになってしまっているという可能性だ。

 恋愛相談をした女子からすれば本当の気持ちに気付いただけだとしても、信之助からすれば急に自分のことが好きだと言われても恐らく困惑することになるだろう。

 さらに言えば、自分の親友を軽く見られたようで印象も悪くなるハズだ。

 もちろんこれは想像に過ぎないが、もし僕が同じ立場であればそう感じるので、そう的外れではないと思う。

 そして、僕にフラれたということにしてすぐに信之助に告白するというのも、やはり難しいと思われる。

 これは先ほど南野さんが言ったように「尻軽女」だと思われる可能性があるからだが、それに加えてもう一つの理由も絡んでくる。


 その理由とは、単純に本人達も困惑しており、気持ちを整理する時間が必要だった――のだそうだ。

 これも南野さんの見解ではあるが、具体例もあるため信憑性は高いとのことである。



「緒方君も気づいてたんじゃない? 千葉さんの桧山君への反応、明らかに変わってるでしょ?」


「……そう言われると、確かに」



 僕はコミュ障だが、他人の態度や反応には敏感だ。

 確かに最近になって千葉さんの態度が少しぎこちないと感じていたが、そういうことであれば色々と合点がいくことが多い。


 千葉さんが僕に話しかけてくるタイミングは基本的に挨拶のときだが、登下校の際は大抵信之助も一緒だ。

 大して興味がなかったので意識していなかったが、思い返してみればぎこちなさを感じたのはそのタイミングのみで、他で偶然会話した際には感じなかった。

 また、そのぎこちなさ自体も少し変化していて、一か月前は気まずさのようなものを感じたのに対し、最近はやや緊張しているような雰囲気になっている気がする。


 何の情報も無ければ変化の理由など想像もできなかったが、一か月前は恋愛相談をした結果が失敗に終わった(僕はそもそも告白されていないけど)ことによる気まずさを感じていて、最近ようやく気持ちの整理がついた――ということであれば理解できなくもない。

 そして、それを踏まえて考えると、僕にはもう何人か同じような変化をした女子に心当たりがあった。



「であれば、やっぱり南野さんは信之助に恋愛相談をした方がいいね。それも、できるだけ早く」



 信之助に惚れた女子がすぐに告白できない最大の理由は、恋愛相談のルールにある。

 これは厳密に作られたルールではなく所謂(いわゆる)暗黙のルールだが、恋愛相談は基本一度につき一人までとなっている。

 信之助いわく、いつの間にかそんな状態になっていたらしい。

 なんで女子は律儀にそんなルールを守っているのだろうか? と一瞬疑問に思ったが、冷静に考えてみれば理解できる話だ。


 信之助は可能な限り全力で僕への告白が上手くいくようサポートを行っているらしいが、それが複数人同時に対応することになればそれだけ分散することになる。

 そうなれば女子側からしても不満が出るだろうし、恐らく実際そんな状況になったからこそ生まれたルールなのだろう。

 順番についてはどんな管理が行われているか不明だが、女子同士のネットワークである程度制御されているらしいとは聞いたことがある。

 当初は早い者勝ちと焦る女子も多かったようだが、今となっては早さはそこまで重要ではないと理解が浸透したため、制御自体も安定しているようだ。



 そんな背景があるため、信之助が恋愛相談を受けている状況は他の女子が接触しづらく、アプローチする機会が限られてくるのだ。

 それにプラスして他の理由もあったため、信之助は未だに告白をされていないのだろう。

 しかし、ある程度時間が経過し、気持ちの整理もついた者が増えている今の状況では、いつ誰が信之助に告白してもおかしくないハズだ。

 最近は僕への告白数自体もピークを過ぎているので、恋愛相談が途切れることも増えてきた。

 他の女子の告白を阻止したいのであれば、行動はできる限り早いほうがいい。



「南野さんも理解していると思うけど、信之助は病的なレベルで鈍感というか、僕のせいで自己評価が著しく低くなっている。だから、今告白をしても成功する可能性は低いと思う。……となれば、時間を作る必要があるのはわかるよね?」


「……うん」



 そのためには、南野さん自身が恋愛相談で信之助をロック状態にし、時間を稼ぐ必要がある。

 他の女子に任せるという選択もあるにはあるが、結果的にその女子がライバルになる可能性もあるのでやめた方がいいだろう。

 であれば、信之助に誤解されることを加味しても南野さん自身が行動するのがベストだ。

 これなら上手に立ち回れば信之助の好感度を稼ぐことも可能だし、自然と距離を縮めることもできる。



 ……それに何より、信之助の本心を確認することもできるだろう。

 今度こそ信之助には、自分の心に正直になってもらいたい。



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― 新着の感想 ―
リアルだなぁw
 普通に告っちゃえばいいのに…と身も蓋もないことを言ってみる(^ ^)
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