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恋愛より友情を取る俺は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても――  作者: 九傷


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第十三話(EX) 恋愛より友情を取る僕は、親友のためなら、たとえそれが好きな女の子だったとしても―― ③

 


 最初こそ動揺したものの、南野さんの話を聞いているうちに段々と冷静になり、頭が正常に回転し始める。

 何故か納得できないようなモヤモヤした気持ちはあったものの、彼女の熱意や想いを聞く限り、これは本物だという確信も得られた。



「そうなんだよ! 信之助ってば、どうにも自己犠牲が過ぎるっていうか、ビックリするくらい僕のことを優先しようとするんだよね……」


「うん。正直、ちょっと嫉妬しちゃうっていうか、羨ましいなって思ってた……」



 まあ、信之助のことを好きな南野さんからすれば、僕の存在は悩みの種だったろう。

 信之助の過保護っぷりは僕自身が一番理解しているし、そのせいで話す機会を失ったというときだって少なくなかったハズだ。


 男に対して嫉妬するのはどうなんだ? とは別に思わない。

 僕も南野さんが勉強を教えてもらっているのを見て嫉妬したことがあるので、こういう感情は多分性別と関係なくこみ上げてくるものなんだと思う。



「まあ僕も、自分がもし女子だったら信之助に惚れてたと思うし、同じ立場だったらモヤモヤしてたと思うよ」


「…………」


「え、え……? なんでそんな目するの?」


「別にぃ」



 なんだろう、視線が冷たい気がする。

 もしかしたら何か地雷を踏んだのかもしれないけど、コミュ障の僕には何が悪かったかさっぱりわからない。

 ちょっと調子に乗って饒舌になり過ぎたかな……


 普段の僕なら信之助以外の人間――それも、女子と会話が弾むなんてことはまずあり得ない。

 南野さんとこんなにも会話が弾んだのは、単純に彼女が僕と同じ趣味を持つ同士だったからだ。


 オタクという生き物は、自分の好きな話であれば早口になったり、語りが長くなりがちである。

 つまり今回は、信之助のことが好きという共通の趣味を持つ者同士だったために会話が弾んでしまったというワケだ。

 しかし、それはあくまでも口が軽くなったというだけで、急にトークスキルが向上したりはしない。

 コミュ障の僕であれば、無意識に地雷を踏みぬいている可能性は十分にある。



「……まあ、緒方君のことは、桧山君を愛する同志だとは思ってるよ? そうじゃなきゃ、こうやって相談だってしなかったし」


「なんか含みを感じる気がするけど、その点は信頼してくれて良いと思うよ。僕ほど信之助と近しい人間はいないからね」


「っ! だったら、何で今の状況を放置してるんですか!」


「……い、今の状況?」


「はぁ~~~~~~~~~~~、やっぱり気付いてなかった! もう、そのポジション返上して私と代わってください!」



 盛大にため息を吐かれたうえに、暗に自分の方が信之助に相応しいとも取れる発言をされてしまった。

 これは流石に黙っていられない。



「ちょっと、それは聞き捨てなら――」


「桧山君って、あんなにカッコいいのに今まで誰とも付き合ったことないよね? その原因の一端が自分にあるってことは、流石に気付いてるよね?」


「そ、それは……」



 反論の出鼻を強烈な一閃で切り返されてしまう。

 自覚があるだけに、そこを突かれるととても痛い……



「自覚があるなら良かった。それにも気付いていないなんて言われたら、私――」


「ひっ!?」



 南野さんの表情からは決して敵意を感じないのに、一瞬刺されたようなイメージが頭に浮かんだ。



「……まあ、全てが悪かったってワケじゃないから、それはもういいよ」


「そ、それって……?」


「確かに中学の頃の桧山君は凄く辛そうだったけど、それを糧に大人になったのか、今は落ち着いてるし、その……、増々、素敵な人になったから……」


「っ!? だ、だよね! 僕もそう思ってたんだ!」



 信之助は昔から最高にカッコよかったけど、最近はそれに渋みや大人の落ち着きまで増して完全無欠になりつつある。

 周囲の人間は僕のことを国宝クラスの美男子などと称えるけど、僕から言わせれば信之助こそがそう呼ぶに相応しい男だ。



「ふふっ♪ やっぱり私達、同じ人を好きな同好の士だね。……でも、だからこそ緒方君は、今の状況をしっかりと認識した方が良いと思う」


「……わかったよ。悔しいけど、僕が気付いていないことがあるなら是非教えて欲しい。それを知らないことで、信之助に不利益が生じるなんてことは、絶対に嫌だから」



 僕は誰よりも信之助と親しいという自負はあるが、だからこそ見えないことだってあると理解している。

 それを認めず自分の見えていることだけに囚われ、結果として信之助が不幸になる――なんてことは絶対にあってはならない。



「……流石だね。だからこそ、桧山君は――ううん、今はそれより本題! 」



 そう言って南野さんは、飲み干したドリンクの底に残っていた氷をワイルドに嚙み砕く。

 その眼光は野生の獣のように輝いていた。














いつの間にかタイトルの前とか中が消えていますが、気にしないでください……

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