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第1話 普段と変わらない日常


「……はぁ、嫌な事思い出しちまったな」


ぐったりと重たい身体を起こし、頭をポリポリとかきながら裕翔(ゆうと)はポツリと呟く。もう、慣れた事だがやはり嫌な記憶には変わりない。あの子はどうして来てくれなかったのか、あの子は俺の事を嫌いになってしまったのか、そんな考えがぐるぐると頭の中にあり続ける。考えても仕方ない事なのは分かっているが、考えてしまうのが昔から裕翔の癖だった。


(ほんっと、昔から癖なんだよなぁ……辞めよ、辞めよ)


これでは拉致があかないと首を振って一旦、夢の事については忘れる事にして、起きたばかりで正常に動いてない脳を動かす為に顔を洗おうと部屋のドアノブに手を伸ばした瞬間、裕翔がドアを開くより前に、ドアが開かれた。


「お兄ちゃん、おはよ!一緒に学校行こ〜!」

「お、おぅ…朝から元気だな。おはよ、深雪(みゆき)。分かったからちょい待っててくれるか?」

「はーい!」


そう言ってズカズカと部屋に入ってくるとベットに飛び込みここは私の部屋!とでも言いたげにゴロゴロし始めるのは裕翔の妹、七瀬深雪(ななせみゆき)だ。深雪の特徴的な真っ黒な髪は肩より少し下くらいに伸ばされていて、くっきり二重の瞳は楽しげに揺れているのが分かる。それほど裕翔と学校へ行くのを楽しみにしているらしい。高校生になってもお兄ちゃん好きは治っていないらしかった。


「おーい、そこ俺のベットなんですけど〜?いつまでお兄ちゃんっ子なんだよ、お前は」

「ええ〜?いいじゃーん、私ずっとお兄ちゃんっ子だし?」

「はいはい、そーかよ、もう、好きにしとけ」


そんなお兄ちゃんっ子の深雪に構っていると学校に遅刻しかねないので、ここら辺で裕翔は顔を洗い制服をわざわざ部屋から取り出してきて別室で着替えて支度を終えると丁度深雪も自分のバックと裕翔のバックを持って降りてくるところだった。


「はい、これお兄ちゃんの」

「ありがとな」


深雪から渡されたバックを受け取り、お礼を伝えてからドアの鍵を開けて学校へと向かう。今日もいつもの何も変わらない日常の始まりだ。


「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんって妖とか神様が見れるって言ってたけどほんとなの?」


学校へと向かう途中、深雪はふと思い立ったように疑問を投げ掛けてきた。見えるのはほんとかどうか、この疑問に裕翔は一瞬目を細めて苦い顔をしたが、深雪には勘づかれないようにほんのり笑みを浮かべて答える。


「……あぁ、ほんとだよ。」

「あー、やっぱり、そうなんだ?良いなー、私全然見えないからお兄ちゃんが羨ましいよ」


妖とか神様ってどんな感じなんだろう、めっちゃ見てみたい〜等と隣で言っている深雪をチラ見してから裕翔はもう一度辺りを見渡す。


妖と言っても全てが良い妖とは限らない。特にイタズラをする訳でもなくただ生活をしているだけなら何の問題も無いだろう、そして軽いイタズラぐらいならしてくる妖もいるかもしれないがそれは許容範囲内である。1番厄介なのは……人に対して憎しみを持っているような力の強い妖だ。そういう妖は何をして来るか分からない。時には厄災を招いたり、人に危害を加えて来る事もある。だからか、深雪には見えなくて良かったと安堵している自分がいた。


「……けど、妖も全員が良い奴な訳じゃないかな、そこら辺間違えるなよ」


念を押すように言葉を強めて言うと、深雪も理解したのかしてないのか微妙な表情になっていたが好奇心旺盛な深雪にその興味を全て無くせとはいえなかった。


「それは、分かってるよ、ただ興味があるってだけ!」


深雪の答えにその興味が時には自分をも殺す事になるんだぞ…と裕翔は心の中でツッコミを入れた。

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