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「心のなかの福」  作者: cat cpp
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≪福との軌跡、心の再生~猫と心の鍵を探して≫

最初に私が福を見つけたとき、彼女は歩道わきの側溝のそば、木枯らしに吹かれて集まった枯葉の脇で小さくなり震えてうずくまっていた。彼女の産毛の立ち具合や緩やかに昇り降りする腹部からは、まだ子猫であることが想像できた。


独特の三毛猫のパターンと、ひときわ目立つのは、その後ろに尾がなかったことだ。どうやら彼女は何かの怪我で失ってしまったらしいのだが、そのことは拾った時点では全く気付かなかった。ただお尻のほうから血が出ており痛そうに震えていたこと、少しでも気を抜くと捕まえたこの手から、するりと抜け出してどこかに行ってしまいそうで抱えた手を離すことができなかったこと、それから、お互いの肌のぬくもりが自然に溶け合うまでの間じっとうずくまって子猫が落ち着くのを待ったのを今でも鮮明に憶えている。


車のヘッドライトに降り始めた初雪の影がちらちらとしていたのがとても印象的で、それはそれは寒い日のでき事だった。あの日の出会いが奇跡のようなことだった気がしているのはたぶん私の中だけのことでしかないだろう。なんとなく恥ずかしい気持ちがしていまだに誰にも語ってはいない。ここだけの内緒の話だ。


私、山崎悟は、心理師として長い間働いてきた。何千もの人々の心と対話し、それぞれが直面する困難に対する解決策を見つけるお手伝いをしてきた。しかし、福との出会いは私に新たな課題を突きつけた。


福は当初、私に対して警戒心をむき出しにしていた。しかし、時間と共に彼女は私を信頼するようになった。それは彼女の心の深部にある傷が癒えていく様子を見ることができる、非常に価値のある体験だった。


私たちは共に過ごす時間の中で、互いの心を理解し合うようになった。彼女が何を感じ、何を考えているのかを理解することで、私は人間の心理学の知識を彼女に応用することができた。反対に、福の行動や反応は私にとって新たな視点を提供してくれた。彼女の視線は、私が日常的に忘れてしまう純粋さや好奇心を思い出させてくれたのだ。


私は福に触れながら、彼女がどのように物事を理解し、どのように反応するのかを観察した。それは私にとって、心理学の教科書に書かれている事柄を再確認するような体験だった。また、福の行動は私に新たな視点を提供し、私自身の理解を深める機会を与えてくれた。


例えば、彼女が新しいおもちゃを見つけた時、彼女はそれに対して好奇心を示した。しかし、彼女は最初はそれに触れず、遠くからそれを観察していた。それはまさに「新たな状況に対する不安」だと言えるだろう。しかし、次第に彼女はそれに近づき、最終的にはそれを自分のものとして受け入れることができた。


それは心理学における「適応」の一例だと私は思った。私たちは新たな状況に対して恐怖心を感じるかもしれないが、時間をかけてそれに慣れ、最終的にはそれを受け入れることができる。福が私に教えてくれたこの教訓は、私がクライエントに対しても適用することができる価値のあるものだった。


私たちは互いに学び、互いに成長していった。福は私にとって、ただのペット以上の存在だった。彼女は私の友人であり、私の教師でもあった。そして何より、彼女は私の心を癒す存在だった。


心理師としての私の経験と知識を活かし、福との絆を深めていくことで、私たちはお互いに理解し、助け合うことができた。私が彼女を保護したことで、福は安全な環境で生活できるようになった。一方、私は彼女から多くのことを学び、自分自身の人間性を再発見することができた。


福との生活は、私にとって心の探求と自己啓発の旅でもあった。そして、この小さな三毛猫が、私が抱える問題や疑問に対して、深く洞察力に満ちた答えを提供してくれたことを私は誇りに思う。


「心のなかの福」は、その名の通り、私の心の中に存在する福の物語である。そして、私たちがどのように互いに成長し、お互いを理解し、心の繋がりを深めていくかを描いている。これは私たちの物語であり、これは心理学の物語でもある。そして何より、これは心の交流の物語である。


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