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初恋は成就しないと言うけれど ◇私は仕事がしたいのです!番外編◇  作者: 渡 幸美


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16/25

16.男って?

後半部分に神視点入ります。

トーマスが帰った後も、私は俯いていた。


「セレナ、大丈夫かい?」

お父様が、そっと声を掛けてくれる。

「はい。……すみません、お恥ずかしいところを……」

よく考えたら、父の前で何てことを。思い返すと、ますます顔を上げにくい。


「いや……。少々驚いたが。セレナは怒るかもしれないが、彼の気持ちも解らなくもないな」

「え?!お父様はトーマスの味方なんですの?」

思わず顔を上げる。

父は困り顔で微笑んでいた。


「味方はしない。彼のしたことは、親としても許し難い。難いが……同じ男として見るとね。大なり小なり、似たような事を考えるというか、やらかすというかな」

「……お父様も浮気をなさったの?」

訝しんで聞く。

「まさか!そんな目で見ないでおくれ。そうじゃなくてだな、見栄を張ってしまうというのかな」

私がよほど懐疑的な目をしていたのか、お父様は慌てて弁解しながら続ける。

「……うん、だからと言って、何をしても良いわけではないし、セレナを深く傷つけたのは事実だ。……だが、彼なりにセレナに追い付きたかったのだろう。確かに、方向がおかしいが」


「私、トーマスを置いたままにした記憶はございませんわ」

「うん。そうだね。セレナは悪くないよ。言い方は悪いが、彼が勝手に思い込んだだけだ。だが裏を返せば、それだけ、セレナ、彼はお前が輝いて見えていたのだろうよ。置いていかれると思うくらいには」

「……お父様は、やっぱりトーマスの味方ね」

反応し難くて、フイと横を向く。


「お父様はセレナの味方だよ。また会うも会わないも、婚約を続けるも解消も、セレナが自分で決めて構わない」

「……ですから、解消を」

「……本当に?」


「……お父様、いじわるだわ」

「おや、本当に嫌われてしまうかな。でも、二人が仲が良かったのも見てきているからね」

「…………」

「もう少し、考えてごらん。じゃあ、私は部屋に戻るよ」

「……はい」

子どもの頃のように私の頭を撫でて、父は客間を出ていった。


「皆、勝手だわ」

残された私は、一人呟く。


私はもう、踏ん切りを着けたのだ。今更蒸し返さないでほしい。


「許せる、はずがないのよ」


ルピナスシリーズの話を進めようと、父の休みに合わせて帰って来ていたけれど、気を削がれた。


「早めに寮に帰ることにしようかしら」


そうしよう。何だか、疲れたわ。


◇◇◇


「あなた。どうでした?トーマス君」

「……ああ」

こちら、セレナパパ自室。戻って来た所に、セレナママが登場。


「昔を思い出してな。つい、彼のフォローしてしまったよ」

「まあ」

コロコロと笑うママ。パパは苦笑いだ。

「ご自分も、いろいろとありましたものね?」

「う、浮気とかはないだろう!」

「そうですね、チヤホヤされていただけですわよね」

「……だから、すまんて」

どうやら娘には言いにくい事が、いろいろとあったご様子。


「でも、いい時代になって参りましたね。女が自分の人生を決められるなど、なかなかございませんでしたから。……セレナには、悔いのないように歩んで欲しいですわ」

「えっ、テ、テレーゼは後悔しているのかい?」

セレナママは、テレーゼさんです。

パパの言葉にたおやかに微笑む。


「今は大丈夫です」


にっこりとそう宣われ、背筋を伸ばすパパ。


「でもね…。現場を見てしまうとね…なかなかなんですのよ」


パパは失念していた。やった方とやられた方の気持ちの差を。冷や汗が背中を伝う。


パパにとっては、少し長い沈黙が続く。


「ともかく、あとは二人次第ですわね?」

「そ、そうだな」


パンと軽く手を叩きながら、変わらぬ微笑みで言うママに、パパもぎこちなく答える。


もう30年近く経つからと、迂闊に昔話を出してしまった自分を棚に上げ、トーマスのフォローなんかしなきゃ良かったと後悔するパパであった。


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