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初恋は成就しないと言うけれど ◇私は仕事がしたいのです!番外編◇  作者: 渡 幸美


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1.幼馴染みの婚約者

「セレナ。トーマス君との婚約が決まったよ」

「トーマスと?本当?お父さま!」


ここはグリーク王国。私は三侯爵家のひとつ、エレクト家の長女だ。8歳の誕生日の朝に、同じ侯爵家のトーマス=エルファイデ様との婚約が整ったと、父から告げられた。


「お父さま、トーマスってとっても優しいのよ」

「そうか、それは良かった」

父が満足げに頷く。


我がエレクト家は肥沃な土地に恵まれた領地を持ち、農業と織物が盛んで潤っている。父は財務大臣も拝命されている。エルファイデ家は代々宰相職に就く家柄だ。現・宰相もエルファイデ家のご当主。


もうひとつの侯爵家のオルガーノ家は、魔力が強い者が生まれることが多く、魔法省のトップや要職に就くことが多い。現・魔法省長官も、オルガーノ家のご当主だ。


私と、エルファイデ家長男のトーマス、オルガーノ家長男のエトルは同い年だ。ひとつ年上にジークフリート殿下がいらっしゃるので、6歳の頃から遊び相手として、公爵家のローズマリー=イベレスト様と共に引き合わされた。ローズマリー様も私たちと同い年。


そう、私たちはジークフリート殿下に合わせるように生まれて来たのだろう。


…とか。


ローズマリー様とジークフリート殿下とのご婚約は早くに纏まり、既に付け入る隙のないほどの睦まじさであることを、一年と少し様子を見た親世代が認識して、それぞれ自分たちの子どもの婚約者選定を始めた。


…とか。


ちょうどこの頃に、筆頭伯爵家であるレコット家のリーゼ様が、希少な光魔法使いの片鱗が見えた為にエトルとの婚約が成立したこと。


…とか。


まだそんな認識が薄かった私は、素直に喜んだのだ。

優しくて、物知りで、綺麗な紫の瞳で深い海色の髪の、素敵な婚約者。

私の色味も彼と似ている。アメジスト色の瞳と、青紫のストレートな髪。


「かわいいセレナとおそろいいみたいで、うれしい」

と、屈託のない笑顔で言ってくれていた。


そして、その日の私の誕生パーティーで。


「セレナが将来のぼくのお嫁さんなんて、すごくうれしい!殿下たちみたいに、ずっとずっとなかよくしようね!」


私の両手をぎゅっと握って、はにかんだ笑顔で言ってくれた彼に、すとんと恋に落ちたのは、自然な流れだったと思う。



……初恋は、成就しないと聞くけれど。


この頃はそんな事、一度も考えたことは無かった。


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