名探偵と助手
私は名探偵である。名前はなく、先生と呼ばれている。名探偵には助手がつきものである。無論、我が探偵事務所にも優秀な助手が在席している。助手の名前はリカちゃんと言う。小林リカ。年齢は二十歳そこそこと言った具合だが、利発で的確でとにかく切れる。抜群といっても過言ではない。
「先生、重要な証拠を見つけました」
例の事件だね、リカちゃん。相変わらず指摘が早い。彼女は報告を済ませると、ポニーテールを揺らして事務所を駆け出してい行った。
「先生、容疑者を絞り込みました」
事務所に戻るなり満面の笑顔である。さすがリカちゃん。
「先生、犯人を特定しました」
もう見つけたの、リカちゃん。私は思わず食べていた魚を落としそうになった。
「先生、犯人のアリバイを崩しました」
相変わらず早いね、リカちゃん。私はヒゲを撫でて拍手喝采する。
「先生、密室の抜け穴を見つけました」
もう事件をほぼ解決したね、リカちゃん。満腹の私はついあくびをしてしまう。リカちゃんはニコッと笑って
「先生、犯人が自供しました」
なるほど、もう私の出る幕はないね、リカちゃん。
「先生、真犯人が分かりました」
大どんでん返しだね、リカちゃん。思わぬ人物が実は犯人だったと言うのも、事件の醍醐味だね。眠気に負けて私が昼寝をしようとすると。
「先生、事件の真相が分かりました」
素晴らしいね、リカちゃん。真犯人に、アリバイ崩し、密室の謎を解いて、もうゴールに着いてしまった。そろそろ本当に、私のまぶたは帳のように降りてしまいそうである。こんな優秀な助手を持って私は幸せだ。
「にゃーお」
思わず猫なで声が出てしまった。
「あれ、またリカってば猫に話しかけてるの?」
「だって先生に相談すると、すぐに問題解決しちゃうんだだもの」
「ポテチ食べたの誰かってやつ?」
「ゼミの先輩。新歓用に買ったのに、ついつまんじゃったんだって」
「ふーん」
「じゃあ、またね。先生」
「にゃーお」
私は名探偵である。名前はないが先生と呼ぼれている。好きなものは鰹節と昼寝。時々焼き魚が貰えれば最高である。今度事件を解決したら、猫じゃらしで一緒に遊んで欲しいなぁ、にゃーお。