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その者食事におわれる

2話目です。頑張って書いたんで読んでください。

俺たちを襲ってきた盗賊団は無事撃退した。

気に入らないとか、ムカつくから壊滅したとか、そういうのでは無い。

ましてや、ちょうど良い寝ぐらの確保でもなければ、レベル上げの余興でも無い。

と、日記には書いておこう。


盗賊を殲滅した後の元アジトはブレット商会が買い取り、暫定的にカンダに無償で貸与されるという形を取ることになった。。

ついでに、あのちょっと訳あり御者も貸与という形でカンダ達の専属としてアジトから街までの足として、必要物資の運搬係として勤める事になった。

そろそろ1か月経つが、特に条件が変わる気配もないのでそのままカンダと仲間達の住処になっており、御者もカンダ達専用のままだ

この間、毎日ギルドに通っていた。

「この依頼を受けていいか?」

カンダは掲示板に貼ってあったゴブリンの討伐依頼を持ってきた。

「え!これを、今からですか?」

近くの集落の討伐依頼だが、その集落は貧しくギルドが規定する最低金額の銀貨3枚という依頼だった。

「おい、マジかよ!あいつら午前中に特別依頼受けて達成したばかりだろ?」

盗賊団を退治した事実をギルドとしてもまったく無視出来ないと判断した。

そこで特例処置として討伐依頼に限り、ランク関係無く依頼の受諾及び特別依頼の指名対象の権利を与えられる事になった。

今回も来て早々にランクB相当のナインテールキャットの討伐依頼を受け、それを倒して返って来たばかりだったのだ。

「ありがとうございます!依頼金額が少ない割に討伐数が多いため誰も受けてくれなくて」

受付の女性は満面の笑みで依頼受託のハンを押す。

無言でその依頼を受けると

「行くぞ」

と、4人の仲間に声をかけてギルドを後にした。

「討伐困難って言われているナインテールキャットを倒した後に、貧しい集落の為に依頼を受けてくれるなんて」

似たような事を度々行っている為、ギルドの受付の印象はすこぶる良い。

そして、このての話はすぐにギルド内に広まる為、カンダはちょっとしたヒーローの様になっていた。


とある近くの集落。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

ここの集落の長らしき人は泣きながらカンダ何度も礼を言う。

銀貨3枚の報酬とは薬草採取でももう少しマシな稼ぎになる。

ゴブリンとはいえ、わざわざ危険を犯してまでする依頼では無い。

集落の人間もそれは分かっていたが、ゴブリンの襲撃の為にそれ以上どうしようもない状態になっていた。

「あぁ、気にしなくていいよ、こっちの都合でたまたま受けただけだから」

カンダは長の反応に困り顔である。

「それで、ゴブリンのいる場所なんですが」

「あぁ、それもこっちで勝手にやるから大丈夫、最後に確認だけしてくれれば」

カンダは長の言葉を半分無視して仲間達とさっさと近くの林の中に入って行く。

ウォーレンは盗賊の時以降は別行動になっている。

今の仲間はキキョウ、チカゲ、ヒカリ、トバリの4人である。

「さてと、お前たち食餌の時間だ」

全員無言でガサガサと、林の中にに分け入って行く。

ゴブリンの場所はマップでサーチし、意思伝達でだいたいの場所を指示していく。

「よっぽど腹減ってたんだなぁ」

全員返事する間も無く向かって行ったのを見て独り言を呟く。

午前中の依頼は特別依頼なので報酬も高い、経験値もしっかり入るし評価も高い、素材も高額で買い取ってもらえるのだが

唯一の欠点は、モンスターのサイズが小さすぎる事である。

盗賊の貯め込んでいた財産があるため、正直生活に困ると言うことは無い。

問題は、人間大の蜘蛛の食料確保だけである。

その為、彼女らはギルドの依頼を、討伐と呼ばず外食と呼んでいるのである。

ここ数日大きな獲物や数の多い獲物に出会わなかった為、こういう時の為に誰も受けそうに無い奴を放置して置いて、それを受けただけなのである。

なので、お礼や感謝を言われると、罪悪感がひしひしと湧いてくる。

「マスター、食べ終わったー、残りはいつも通りヒカリちゃんに任せて来たー」

キキョウがチカゲとトバリを連れて戻って来た。

足高蜘蛛であるヒカリは、食欲より狩猟を優先する性格が反映されている為、殲滅するまで食事が手につかないのである。

少し待っていると

「閣下、終了しました」

凄い速さで移動して来たヒカリがカンダの前に戻ってきた。

「そうか、じゃあ帰るか」

途中集落の長に会う。

「終わったぞ後で確認しといてくれ、それとな、次なんかあったらもう少し高い報酬じゃないと誰も来ないぞ」

そう言って、金貨1枚を握らせる。

「えっ!これは?」

長があまりの事に状況が理解出来ない。

「次はその金で依頼しな、俺たちだってあんな価格の依頼もう2度と受けたくないしな」

「ありがとうございますぅ!」

泣き崩れるようにして、長がお礼をいう。

「…帰るぞ」

カンダが気恥ずかしくなってそそくさと逃げ出すように帰路に着く。

罪悪感にいたたまれなくて渡しただけの金貨なので、あんなに礼を言われると困ってしまうのだ

ギルドに戻り報告をして、報酬を全て貰うとアジトに帰る。

アジトは前回の戦闘であちこち汚れたり壊れたりしているが、とりあえず自分たちが使う場所は綺麗にしてある。

残りはキキョウが暇を見つけては修繕してくれているが、規模が規模だけに簡単に元に戻るという事にはならない。

特に不便も感じてないので気にしていないのだが。

「あー、いい加減やるかぁ」

なんだかんだで勝ててしまうので、盗賊討伐以降放置しっぱなしだったスキル獲得をする事にする。

ずっとサボっていたせいで、かなりレベルも上がっているはずで、いい加減やらないとどんどん億劫になる。

改めてスキル獲得するにあたって、ずっと気になっている事があった。

リストを見る限り、消費ポイント1〜4が一般、5〜9が希少、10以上が異能と分かれているのだが果たして希少以上はスキル伝承出来るのか?

女神の話だと、スキル獲得は基礎スキルを獲得、スキル伝承も基礎スキルを伝承だから、獲得出来るものは伝承出来るという認識だが、こればっかりはやってみないと分からない。

特に今悩んでいるのが、スキル効率上昇。

一般に小、希少に中、異能の大とカテゴリー毎にどう見ても各上位互換のスキルがある。

効果は重複するのだろうか?

効果は、各スキル獲得の効率を少し上昇させる、上昇させる、大幅に上昇させると書いてある。

「説明が少なすぎる!うーん、ええい!男は度胸!」

異能スキル、スキル効率上昇(大)を獲得。

「なんだこのぶっ壊れスキル」

スキル効率(大):全てのスキルの獲得ポイントを-3する。ただしマイナスにはならない。

既存のスキルに使ったポイントも返ってくる。

要するに全てのスキルを3レベル上げるスキルという、なかなかぶっ飛んだスキルだった。

「ステータスオープン」


ステータス

カンダ レベル19

強さ   5+27 物理的攻撃力

器用  5+16 命中率

素早さ 5+22 回避率

知性  5+12 魔法的攻撃力

耐久力 5+22 HP基準値

賢さ   5+11 MP基準値

HP 270

MP 160

成長ランク Z

職業 魔獣使い(ユニークスパイダーテイマー)

スキル テイマー(特)

「次ページ」


スキル一覧

カンダ レベル19

スキルポイント 2

スキル テイマー(特) レベル10

        テイミング(ユニークスパイダー)

        スキル伝承

        意思伝達

        位置把握

        従魔回復

        従魔連携

        従魔防御

        従魔強化

        従魔収納

        従魔召喚

        従魔合身(条件未達)

    小剣  レベル4

        剣技・連続斬り   

        剣技・受け流し

        剣技・一点刺し

        剣技・急所斬り

    槍   レベル4

        槍技・連続刺し

        槍技・受け流し

        槍技・旋風槍

        槍技・風神槍技

    短剣(投) レベル4

        剣技・連続投げ

        剣技・影撃ち

        剣技・一点投げ

        剣技・曲投げ

    斧   レベル4

        斧技・振り回し

        斧技・斧盾

        斧技・兜割

        斧技・大回転

    スキル効率上昇(大) スキル効率が大幅に上がる

ユニークスキル マップ

        スキル獲得

テイミングモンスター

キキョウ ライン強度 44 スキルポイント獲得(4)

チカゲ  ライン強度 44 スキルポイント獲得(4)

ヒカリ  ライン強度 44 スキルポイント獲得(4)

トバリ  ライン強度 43 スキルポイント獲得(4)


「こんな感じかなぁ」

何故か自分のスキルなのにテイマーだけは説明文が出ない。

「試しに使ってみるかぁ」

1つ気になってる効果を使ってみることにした。

「従魔召喚、キキョウ」

目の前にいきなりキキョウが現れた。

「あれ?ここはマスターの部屋?なんか新しいスキルの実験とか?」

喋り方や性格のせいであまりそうは見えないが、キキョウは状況判断能力が極めて高い。

「それもあるけど、みんなのスキルもいい加減上げないと、ならないなって思って」

「そっかー、マスターだいぶサボってたものね」

キキョウが明るく笑う。

「とりあえず、従魔召喚、チカゲ、ヒカリ、トバリ」

3人が一瞬で目の前に現れる。

「え!なになになに?どうやったの?」

「閣下!何か緊急の用事でしょうか?」

「んー、あー、ご主人様ぁこんにちわぁ」

三者三様の反応である。

「とりあえず、スキル伝承出来るか試すぞー」

「スキル伝承、スキル効率上昇(大)」

特に問題なく伝承出来た。

「じゃあ、スキル弄るから全員並んで」


「キキョウステータスオープン」

基礎ステータス

キキョウ レベル19

種族 蜘蛛族ユニークスパイダー

強さ   54 物理的攻撃力

器用   74 命中率

素早さ  34 回避率、移動速度

知性   54 魔法的攻撃力

耐久力  44 HP基準値

賢さ   54 MP基準値

HP 440

MP 550

成長ランク B

職業 ユニークスパイダー

スキル 修繕

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スキル一覧

キキョウ レベル19

スキルポイント 1

スキル 修繕  レベル9

        一般修理 家庭品などの修理が行える

        武具修理 装備品の修理が行える

        家屋修理 建物などの修理が行える

        一般修理2 家庭品などの修理がより行える

        武具修理2 装備品の修理がより行える

        家屋修理2 建物などの修理がより行える

        スキル派生・一般製作

        スキル派生・武具製作

        スキル派生・家屋製作

        肉体修理 生物に肉体の修理を行える

   一般製作 レベル4

        日用品製作

        雑貨製作

        工具製作

        罠製作

   武具製作 レベル6

        防具製作

        武器製作(剣)

        武器製作(槍)

        武器製作(斧)

        武器製作(弓)

        武具製作(他)

   家屋製作 レベル4

        土台製作

        壁製作

        屋根製作

        施設製作

    槍   レベル4

        槍技・連続刺し

        槍技・受け流し

        槍技・旋風槍

        槍技・風神槍

    スキル効率上昇(大) スキル効率が大幅に上がる


ユニークスキル 擬態

        クモの糸

        毒牙


「チカゲステータスオープン」

チカゲ レベル19

種族 蜘蛛族ユニークスパイダー

強さ   34 物理的攻撃力

器用   44 命中率

素早さ  64 回避率、移動速度

知性   34 魔法的攻撃力

耐久力  44 HP基準値

賢さ   44 MP基準値

HP 440

MP 440

成長ランク B

職業 ユニークスパイダー

スキル 投擲

    軽業

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スキル一覧

チカゲ レベル19

スキルポイント 0

スキル 投擲 レベル6

       武器投擲 武器の投擲に修正が入る

       物品投擲 武器以外の物の投擲に修正が入る

       精度上昇 命中率が上がる

       距離延長 投擲距離が伸びる

       威力上昇 投擲の威力に修正が入る

       スキル派生条件獲得・手裏剣術

    軽業 レベル8

       緊急回避 アクロバティックな動きで回避に修正が入る

       撹乱   アクロバティックな動きで相手の回避率を下げる

       跳躍   跳躍の距離、精度に修正が入る

       天井付き 天井に僅かな間貼り付ける

       空歩   空気を蹴る事が出来る

       受け身  投げ等でのダメージ軽減

       瞬歩   短距離での移動速度上昇

       スキル派生・体術

    体術 レベル5

       格闘術上昇 格闘術に関する行為に修正が入る

       隠密上昇  隠密に関する行為に修正が入る

       軽業上昇  軽業に関する行為に修正が入る

       素手ダメージ上昇 素手による攻撃のダメージ上昇

       スキル派生条件獲得・忍術

   短剣(投) レベル5

       剣技・連続投げ

       剣技・影撃ち

       剣技・一点投げ

       剣技・曲投げ

       スキル派生条件獲得・手裏剣術

   手裏剣術 レベル5

       手裏剣戦闘 手裏剣による戦闘が可能になる

       剣技・棒手投げ

       剣技・十字投げ

       剣技・霞投げ

       スキル派生条件獲得・忍術

    忍術  レベル6

       忍術・土遁の術

       忍術・水遁の術

       忍術・木遁の術

       忍術・火遁の術

       忍術・隠遁の術(隠密)

       忍術・空蝉の術

    スキル効率上昇(大) スキル効率が大幅に上がる


ユニークスキル 擬態

        クモの糸

        毒牙

        フェロモン

        操糸


「ヒカリステータスオープン」

ヒカリ レベル19

種族 蜘蛛族ユニークスパイダー

強さ   54 物理的攻撃力

器用   34 命中率

素早さ  114 回避率、移動速度

知性   34 魔法的攻撃力

耐久力  64 HP基準値

賢さ   24 MP基準値

HP 640

MP 240

成長ランク B

職業 ユニークスパイダー

スキル 俊足

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スキル一覧

ヒカリ レベル19

スキルポイント 0

スキル 俊足  レベル9

        加速   移動速度が大幅に強化される

        瞬間回避 高速で移動し回避に修正が入る

        健脚   加速時のスピードを長時間維持出来る

        縮地   地形条件を無視して短距離移動出来る

        突貫   刺しに修正が入る

        鎌鼬   斬りに修正が入る

        真空   移動時にダメージ修正を入れる事が出来る

        水面走り 水上を走れるようになる。

        スキル派生・韋駄天

    韋駄天 レベル6

        超加速  移動速度が極大に強化される

        裏取り  相手の死角に一瞬に入りこむ事が出来る

        残像   自分の残像を囮に出来る

        風打ち  移動時の風を武器に纏える

        風哭き  移動時の音を武器に纏える

        豪脚   超加速のスピードを長時間維持できる

    小剣  レベル5

        剣技・連続斬り   

        剣技・受け流し

        剣技・一点刺し

        剣技・急所斬り

        剣技・武器折り

    スキル効率上昇(大) スキル効率が大幅に上がる


ユニークスキル 擬態

        麻痺牙

        超感覚


「トバリステータスオープン」

トバリ レベル19

種族 蜘蛛族ユニークスパイダー

強さ   158 物理的攻撃力

器用   26 命中率

素早さ  26 回避率、移動速度

知性   24 魔法的攻撃力

耐久力  84 HP基準値

賢さ   14 MP基準値

HP 890

MP 190

成長ランク B

職業 ユニークスパイダー

スキル 怪力

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スキル一覧

トバリ レベル19

スキルポイント 0

スキル 剛力  レベル9

        怪力    強さに関する行為に修正が入る

        ぶん投げ  ものを投げた時の威力に修正が入る

        ぶん回し  ものを振り回した時の威力に修正が入る

        ひねり潰し 握力に修正が入る

        ぶち壊し  ものを破壊する威力に修正が入る

        筋肉鎧   防御力に修正が入る

        スキル派生・防御

        スキル派生条件獲得・金剛力

        スキル派生条件獲得・阿修羅

    防御  レベル5

        防御力上昇 防御力が上昇する

        耐久力上昇 HPが増える

        精神力上昇 MPが増える

        肉体硬化  防御行動を行うことで大幅に防御力を上昇させる

        スキル派生条件獲得・金剛力

   金剛力  レベル5

        肉体強化  防御力を上昇させる

        阿仁王   肉体の能力値を僅かに上げる

        吽仁王   肉体の能力値を僅かに上げる(阿仁王との重複化)

        金剛力士  戦闘に関する行為に修正が入る

        スキル派生条件獲得・阿修羅

   阿修羅  レベル5

        羅睺    暗闇での戦闘力が上昇する

        勇健    状態異常の耐性が上昇する

        佉羅騫駄  射出に関する行為全てを上昇させる

        毘摩質多羅 状態異常効果の行為全てを上昇させる

        スキル派生条件獲得・帝釈天

    斧   レベル4

        斧技・振り回し

        斧技・斧盾

        斧技・兜割

        斧技・大回転

    スキル効率上昇(大) スキル効率が大幅に上がる

        

ユニークスキル 擬態

        毒牙

        毛針射出


「あからさまに強くなった、スキル効率上昇ぶっ壊れだな」

「明日からの外食が早く済ませれそうだね!」

チカゲがステータスを眺めながらそんな事を言う。

「折角作れるようになったから、みんなの武器作ってみようかな」

キキョウだ。

「帝釈天?って言うスキルどんなのだろう?」

トバリは相変わらず呑気だが、おそらく単純な戦闘力という点では1番伸びている。

「自分は伝令兵として、力を存分に発揮出来そうです!」

確かに速さに特化したスキル構成になったが、おそらく伝令より壊滅の方が得意分野になりそうだ。


更に強力になった一向は、順調に討伐依頼をこなしていった。

依頼はこなしていったのだが…

「お腹が減ったぁぁぁ」

チカゲが泣きそうな声で訴える

「おいおい、さっき食べたばっかりだろう?」

「だってぇ、トバリちゃんみんな食べちゃうんだも〜ん」

確かに最近のトバリの食餌量は異常だ、前までの3倍以上食べている。

「ごめんなさ〜い、我慢できなくてぇ」

トバリもしょげてる。

「何か原因は分かるか?」

「うーん、この間のスキル取った時から急にお腹空くようになってぇ」

トバリが思い出すように言う。

「え?もう結構時間経ってるぞ?呑気だなぁ」

タランチュラは元々大食漢ではあるが、1度食べると何日も食餌をしないでも耐える事が出来る。

その性格が反映されたのか、そもそものトバリが呑気なのか、ちょっと早急になんとかしないといけない状態になってるようだ。

とにかく、ギルドに行って食料の確保をしなければなら無いという事だけははっきりしている。

「無い!討伐依頼が1つも無い!」

恐れていた事態が遂に起きてしまった。

掲示板を見ても討伐依頼が1つも無いのだ。

毎日毎日、多い時には数件の討伐依頼をこなし続けていたのだ、薄々だがこんな時がくるかもと思ってはいた。

しかし、よりによってこのタイミングである。

「なぁ、討伐依頼は無いか?何でも良い!」

「え!ちょちょちょっと、どうしたんですか?そんな怖い顔して!」

最近馴染みになって来た受付嬢である、名前はエイミアというらしい。

「討伐依頼だよ!何か残って無いのか?」

「カンダさん達の活躍のおかげで、今何も残って無いですよ?」

ニッコリと満面笑みでそう返事をしてくれた。

「じゃあ、人間でも良い、殺しても構わない人間居ないか?」

「え!急に物騒な事言い出しますね?どうしたんですか?」

ダメ元で事情を話すことにした。

「自分の配下にしているクモ達の餌が欲しい、その為にモンスターを狩りたい」

「んーそういう事ならダンジョン潜ってみてはどうですか?」

「あるのか?」

ダンジョンがこの世界にあると言う可能性は考えてなかった訳じゃないが、一向にその話を聞かないので頭の中からその存在が抜けていた。

「あ、はい、割と近くにありますよ、もう枯れたダンジョンで誰も行かなくなりましたけど、モンスター狩りたいってだけなら、行く意味あると思いますよ」

エイミアの話では、この世界のダンジョンもカンダがファンタジー小説などで読んでいた本のダンジョンと同じようなものらしい。

基本的には希少鉱物や魔力の宿った石、ごく稀に魔力の宿った金属などが手に入るが、特徴として普段外で見かけるモンスターより見た目が同じでも強さが数倍跳ね上がるというのがある。

しかも、強いのに入る経験値も売る素材も外のものと同じ。

その為、あらかた希少鉱物などを取り尽くすと、ハイリスクローリターンの場所になる為放棄される。

枯れたダンジョンとはそういう場所である。

確かに、ただ魔物が欲しいなどという酔狂で数倍強くなってもものともしない強者じゃなければ意味の無い場所である。

「よし!場所を教えてくれ!今すぐ行ってみる」

「あ、はい、あ、でも依頼とかは入って無いので報酬は無いですよ?」

「問題ない!」

近いとは言っていたが、それでも街から馬車で半日かかる距離であった。

「うーん、食餌の件は解消されるが、移動時間で丸々1日使ってしまうなこれ」

「沢山居るなら、保存食として持って帰ればいいんじゃない?」

キキョウの提案である。

いつもはその場で全部食べ尽くしてしまうが、女郎蜘蛛の様な網を張るタイプの蜘蛛は毒を上手くつかって保存食を作り貯めておける。

「良いアイディアだが、それだと荷馬車が必要になるな、荷車は用意出来るが、御者は難しくないか?」

「あぁ、それなら奴隷買ったらどうですか?御者させるくないなら、安く手に…」

ここまで話したところでエイミアが硬直する。

明らかに怯えた顔になっていた。

「面白そうな話してるじゃねぇか」

ウォーレンだった。

「そういえば、元奴隷だったな!そういう話は詳しいのか?」

カンダが気軽な感じで色々聞こうとする。

「俺はそれほど詳しくねぇな、この街が奴隷の売買を禁止している事と、にも関わらず受付の女が気軽に勧めるほど横行している事くらいだな」

ウォーレンの目が完全に戦闘する時のそれになっている。

「おいおい、俺を犯罪者にしようとしたのか?」

半分は冗談なのであるが、エイミアはウォーレンの表情を見て完全に怯えてしまい下を俯いてただただ震えている。

「まぁ、そこまでにならないのが問題なんだがな」

ウォーレンが語り出した。

その内容によると、大陸全体で奴隷制度を無くそうと言う動きは実際にあり、どこの国としても廃止の方向になっているのだが、その動きに獣人だけは例外とされている。

特にこの国ではその傾向が強く他の街では獣人に限り奨励されている程である。

この街は監督官が獣人差別を無くそうと努力しているので、獣人奴隷の売買も禁止されている。

ただ、この街以外で売買された者に対しての拘束力は無いので、他の街で買った奴隷としてしまえば手に入るのである。

そして、これがガデエル商会の稼ぎの柱の1つになっている為、誰もこの事を表立って抗議出来なくなっている。

結局常態化してしまい、今では獣人奴隷禁止という事自体が形骸化している。

「気にいらねぇ、気にいらねぇなぁ」

カンダのこの言葉にウォーレンがニヤリと笑う。

「盗賊ぶっ潰してるからな、今更何しても同じだぞ」

ウォーレンがあからさまに焚き付けてくる。

「少し、世間話でもするか!」

カンダが悪い顔になってウォーレンにそう提案する。

「あぁ、良いぜ」

その日は結局、ギルドの依頼は受けずに夜を迎えた。


夜も大分更けて来た頃にカンダはスラム街の一際大きい建物の裏に居た。

そこにある小さめのドアをノックする。

「昼間連絡して居たカンダだ」

昼間のうちにエイミアから繋ぎの男を紹介してもらい、いくつかある奴隷商の中で1番大きい所を紹介してもらった。

「1人で来たな」

ドアについている、目だけ見えるくらいの小さな小窓から用心棒らしき男がこちらを覗いている。

「あぁ、1人だ」

カンダが応える。

「いやーすまないね、無理を言って」

カンダが饒舌に用心棒に話しかける。

「着いて早々に申し訳無いがトイレに行かせて貰えないか?時間に間に合わせようと急いだもので、漏れそうなの我慢してドアの前で待ってたんだ」

用心棒らしき男は無言で指をさす。

「すまないね、すぐ終わるから」

トイレから戻って来たカンダは

「いやー3回も出して来たよ」

と、笑いながら用心棒に話しかける。

そして、奥のボスらしき者がいる所に向かう。

「私がこの商館を取り仕切っているナンバー2だ、名前は伏せさせて貰う」

怪しげな仮面をつけている男がそう言って、椅子にふんぞり返っている。

「ここには何人くらい奴隷が居るんだ?」

「常時4、50人は用意してるが最近は入りが悪くてな、値切ろうなんて考えるなよ」

「安心してくれ、値切ろうなんて全く考えて無い」

カンダがすごく悪い顔でニヤリと笑う。

「ビタ一文払う気が無いからな」

「ふぅ、たまに居るんだよこういう勘違い野郎がな」

そう言いながら奴隷商は天井から垂れ下がっている紐を引く。

微だが鐘の音がした。

「お前はここの用心棒の数が分かっていない様だな」

「そうか?だいたい40くらいだろ」

カンダが笑みを崩さず言い当てた。

「お前、それを知ってて乗り込んできたのか?」

「いいからその紐を引けよ、何人くるか見ものだな」

奴隷商の顔がだんだん焦った表情になってくる。

「お、おい!コイツを殺せ!」

奴隷商が用心棒に命令する。

「トバリ!」

用心棒の動きに合わせて、カンダが叫ぶとカンダの背中辺りからニュルンとトバリが出てくる。

「この収納って奴すごく退屈ですぅ、お腹空かないのは嬉しいけどぉ」

「う、う、うぉぉ!」

用心棒が突然の事態に混乱したが、本能的に殺さなければ殺されると感じて、トバリに持っていた警棒でメチャクチャに殴りまくる。

「トバリ、食べていいぞ」

「わぁい、いただきまぁす」

必死に殴りつける用心棒にトバリが手を伸ばす。

「ひぃぃ」

用心棒も元冒険者である、様々なモンスターと戦って来た、人も数えきれないくらい殺した。

だが、これほど渾身の力で殴っているのに痛そうな顔ひとつせずに近付いてくる奴は見た事が無かった。

伸ばして来た手で頭を掴まれる。

ミシッと骨が軋む音がした。

なんとか抜け出そうと必死に腕を棒で殴る、顔も殴った。

意に介さずその女は首筋を噛んできた。

意識がここで途切れた。

「ま、待て、話し合おう!奴隷も全てくれてやる、金もあるだけ持っていって構わない!命だけは助けてくれ」

奴隷商が必死に命乞いして来た。

「そうか?そんなに命乞いされると考えてしまうな」

全く感情のこもってない声でカンダが応える。

いきなりバンッ!とドアが開いた。

そこには用心棒らしき男とさらにその奥にも人影が見える。

「ようやく来たか!コイツを殺せ!なぶり殺しにしろ!」

いきなり奴隷商の態度が変わる。

だが、奴隷商は見落としていた。

その男の目に既に生気がない事を。

ドサッと音を立てて、用心棒は前のめりに倒れる。

その後ろには3人の女性が立っていた。

「紹介しよう、ウチの頼れる仲間達だ」

カンダが最高の笑顔で奴隷商に語りかけた。

「トバリちゃん、向こうにトバリちゃんの分の食料も残しておいたよ」

キキョウがニコニコしながらトバリに話かける。

「ほんと!ご主人様ぁ、ちょっと行ってきていい?」

「ああ、いいぞ」

「わぁーい」

トバリがそそくさと出て行った。

「し、食料って…」

奴隷商がしどろもどろになりながら尋ねる。

「あぁ、お前が頼りにしてた用心棒達だよ」

「う、うわぁぁぁ!」

奴隷商がパニックになって逃げようとする。

だが、その首には既に糸が巻き付いていた。

「どっこにも逃さないよぉ」

チガゲが元気な声で奴隷商に語りかけた。

「お前じゃないと出来ない事あったら困るからな、まぁ座っておけ」

カンダがそう言うと、キキョウがさっと動いて椅子に座らせて糸でぐるぐる巻きにしてしまう。

その後は建物内を物色しつつ、奴隷達を確保する作業を行った。

檻や手枷、足枷の鍵などは見つからなかったが、いや正確には見つける前にトバリが力任せに引きちぎったので、奴隷の解放は簡単だった。

そして奴隷達を1箇所に集めると、キキョウが建物の壁に大きめのクモの巣を作る。

この建物は外壁にほぼ接するように建てられているので、あらかじめ、目印兼瓦礫が飛び散らないように外壁側にもかなりしっかりしたクモの網が張ってあり、さらに建物と外壁の隙間もクモの糸を使って埋めてあった。

「よーし、トバリ頼むぞ」

「はぁーい」

トバリがブンッと手を振る。

その手には巨大な斧が現れる。

どう言う原理でこうなったのかわからないが、キキョウが作成した武器は4人の身体に収納でき何時でも取り出せると言う効果を持っていた。

トバリの武器はトバリの腕力を活かすため敢えて切れ味を無くして、ひたすら重たく頑丈に作ってある。

形状は斧、効果はハンマーのような武器になっている。

それを様々なスキル効果を乗せて、全力で壁に叩きつけるのだから、街の外壁ごとぶち抜ける威力になる。

キキョウの網がある程度防音効果になるがそれでも腹に響く轟音がして壁が壊れる。

そして、その穴から奴隷を全員外に連れ出す。

「おいおい、随分派手なご登場だな!」

あらかじめ、荷馬車を10台ほど用意して待機していたウォーレンが笑いながらカンダを迎えた。

「隠密行動にするはずだったんだけどな、どこかで間違えたな」

カンダも笑いながら応える。

「存在しないはずの店が本当に存在しなくなっても、誰も動けねぇから気にするな!」

奴隷の中から御者のできる者を選び残りは数人づつ荷馬車に乗せる。

その作業の間にキキョウが壁を修繕する。

流石に元通りには出来ないが応急処置程度には直してしてしまう。

そして、しばらくは街に近寄らずダンジョンに潜ることにした。

ウォーレンも街に戻りづらいと言うので、そのまま開放した奴隷達と一緒にアジトで暮らしてもらう事にする。

当面の食料は既にブレット商会に依頼しているし、予想通り奴隷商からたっぷり資金調達もできた。

それから1週間ほど経った。

「開放したやつの中でやる気のある奴を今鍛えてるんだ、とりあえず冒険者になるのが1番稼ぐのに近道だからな、それが出来そうにない奴は畑仕事してもらってる、結構広い土地確保出来そうなんでな」

ウォーレンが楽しそうにカンダに話して来た。

「おう!頑張ってるなぁ、じゃあ俺はダンジョン行ってくるから、好きにやっておいてくれ!」

更に1週間経った。

「開放した奴らもそこそこ出来るようなって来たからな、俺が冒険受諾してコイツらに実践積ませるようにしてるんだ!」

「そうか!順調だな!ところで増えてないか?」

「あぁ、ここに来たい奴居たから、そいつらも引き入れた」

「そうか、無理じゃ無い程度にならそう言う奴らも引き入れて良いかもな!じゃあ俺はダンジョン行ってくるから、好きにやっててくれ!」

更に1週間経った。

「…ちょっとあからさまに増えてないか?」

カンダが戻ってくると、どう見ても200人くらいは居るように見える。

ここのアジトのキャパ的にはもう少し余裕あるが、短期間で流石に増えすぎである。

「あぁ、まぁ、人数増えると効率もどんどん良くなってな…」

ウォーレンの歯切れが悪い。

「お・ま・え、やらかしたな?」

カンダの言葉にウォーレンが目を逸らす。

「いやー、まぁ、無いはずの店が無くなっても誰も文句言えないしなぁ」

「どうやって街から抜け出たんだ?」

「修繕してる時にお姉ちゃんに頼んで人1人出入り出来る隙間作って置いてもらった」

「…」

カンダが頭を抱える。

「まぁ、いずれは全部潰す予定だったから良いけどよ、次からは一言頼むわ」

「おう、すまねぇ」

謝っているウォーレンの顔は笑っていた。

そんな時にいつもの御者が近づいてくる。

「ダンナ、ギルドから言伝持って来ましたぜ」

渡された封筒には1枚の用紙が入っていた。

ギルドからの使命依頼だった。


ギルドに行くといつもの受付嬢が表情をこわばらせて迎えてくれた。

「今回の使命依頼ですが受けないでください」

開口一番に出た言葉は予想外な一言だった。

「え?使命依頼なのに?なんかあるのか?」

カンダの問いにコクッと頷く。

「今回の依頼はダンジョンに新たな侵入路が見つかったので調査してほしいと言う内容です」

「ダンジョンって、あの俺たちが通ってる枯れたやつ?」

エイミアが再度コクッと頷く。

「おかしいんです!ありえないんです!だって、貴方達以外にあそこに入る人なんて居ないはずなんです!ですから貴方達以外があそこで新たな侵入路を見つけるなんて起こるはずがないんです!」

エイミアが一気に捲し立てる。

「しかも、見つけた冒険者の名前が記載されていないんです!明らかにおかしな依頼なんです!」

「んーでも、それ俺達が受けないと、困るんだろ?」

「う…」

カンダの質問にエイミアが言葉を詰まらせる。

「上から何か言われてるのか?」

エイミアが目を瞑って下を向きながらフルフルと首を横に振る。

「マスター…」

キキョウが察したらしく、カンダの裾を引きながら

「この依頼受けよ」

と言ってきた。

「そうだな」

エイミアに向かって手を出しながら

「依頼受けるから、依頼書よこしてくれ」

と言った。

「でも…」

それでも難色を示すエイミア

「安心してくれ、俺たちは強い!問題ない!」

カンダが言い切る。

そして依頼書を奪うようにひったくり、そのままギルドからダンジョンに向かうことにした。

若干、慢心している部分もあったことは否定できない。


枯れたダンジョンは4層からなっている、地下に行くほど強い敵が出るのは定番だが、それでもカンダ達の敵ではない。

問題なく最下層の4層まで進む。

「めんどくさくて、いつも最下層のまで来ないけど、獲物のサイズ大きいからここまで来た方が効率良いかもな?」

そんな呑気なことを言いながら、依頼書に書いてあった壁までやってきた。

「うーん、パッと見分からないなぁ、罠スキルを取ってみんなにも渡すから、それで探そうか?」

こう言う時に柔軟に対応出来る様に常に自分のスキルポイントは何点か余らせている。

「マスターあったよぉー」

あっさりキキョウが見つける。

そこには巧妙に隠されたレバーがあった。

それを引くと、壁と思われたところがパックリと開いて階段が現れた。

「新しい階層があること自体は本当かぁ、キキョウどう思う?」

キキョウの洞察力に頼ることにした。

「うーん、枯れたんじゃなくて、下の階層のモンスター手がつけられなくて封鎖してたんじゃない?」

「なるほどな、街の不安を煽るようなことが無いように、いや、監督官に対処するように言われないように方が可能性高いか、枯れたことにして誰も出入りしないようにしてしまえば、見て見ぬふりが出来る」

カンダはギルドマスターがどうやらクズらしいと、思い至った。

「とりあえず、降りてみるか」

すぐ下の5層目はそれほどでも無かった、多少強い敵が出るが特に問題ない。

6層目はゴーレムばかり出る階層だった。

こうなるとトバリの独壇場で、他のメンバーは3人がかりでようやく1体倒す間に、トバリは数体破壊するペースだった。

「お腹減ってきたぁ」

トバリがお腹をさすりながら訴える。

「ここで最後だから終わらせてから食餌にしよう」

7層目は1本通路にドアがひとつ、おそらくボス部屋と思われた。

このメンバーなら負けるわけない。

カンダの自信は慢心にまで膨れ上がっていた。

「よし!行くぞ!」

ドアを開けると霞のような物が充満しているだけで特に何もない。

全員が入るとドアが閉まった。

どうやら何かをクリアしない限り開かないように出来ているようだ。

充満していた霞が1点に凝縮していく。

そしてそこに現れたのは緑色の龍だった。

「やっぱり、ファンタジーのボスと言えばドラゴンだよな!よし!みんなサクッと倒してしまうぞ!」

「…」

反応がない。

「ん?どうした…」

そう言ってカンダが振り返るとそこには泣き崩れて壁際で、ただただ縮こまる4人が居た。

カンダがハッと思い立つ。

蜘蛛には共通の天敵がいる。

それは、鳥である。

地面を歩く蜘蛛にとって抵抗の出来ない空を飛べ、自分より大きい存在は恐怖以外の何者でもない。

この本能にドラゴンが当てはまってしまった。

ドラゴンが彼女達にとって最悪の相性の相手という事を遭遇するまでは考えもしなかった。

「キキョウ!槍をよこせ!」

日頃の彼女らに戦闘を任せているカンダは武器らしい武器を持ち歩いていない。

だが、今は彼しか戦えないのである。

日頃は守られる立場だが、今は彼が守らなければならない!

絶望的な相手だが、ここで諦めれば彼女達の命はない。

彼にとって最も大切な物を失う訳にはいかないのだ。

「ウォォォ!」

雄叫びをあげて恐怖心を誤魔化す。

そしてそのままドラゴンへと向かった。

戦いは悲惨なものだった。

攻撃しようとするとフワッと空中に浮きせいぜい足の先くらいにしか届かない。

そこから尻尾が振り回される。

さらに前足の爪が上から振り下ろされ、体勢が崩れるとブレスを吐いてくる。

なんとか避けているが、疲労が溜まる一方でまともに相手にダメージを与えていない。

攻撃らしい攻撃が出来ていないのだ。

疲れが足に来てしまい、膝がガクッと落ちる。

そのタイミングで尻尾が振り回された。

マズイ!と思ったら瞬間尻尾が一瞬止まる。

なんとか回避して見てみると、チカゲが糸を尻尾に巻き付けそれをみんなで引っ張っていた。

みんな号泣し身体が硬直し動かないのを無理矢理気力だけで動かしていた。

それでもドラゴンの優勢は変わらない。

しばらく持ち堪えたが、やはり身体が動かなくなっていく。

ドラゴンがブレスを吐く。

逃げられないと思った瞬間一気に横に移動した。

ヒカリが抱きかかえて移動してくれたのだ。

恐怖で体が震えながら無理矢理動いたせいか、過呼吸のような状況で呼吸が荒い、顔も涙でグシャグシャになっいる。

「ヒカリ!」

声をかけるが聞こえているのか聞こえていないのかわからない。

「我々は閣下のお命を守れないなら、存在価値など無いのです!」

絞り出すようにそう言うと、ドラゴンの攻撃に合わせてカンダを抱きながら回避する。

だが、硬直した身体で、恐怖でパニックになりながら、無理矢理動かしている身体はそれほど長く持たない。

「ヒカリ!逃げろ!お前だけなら避けれるはずだ!」

そう言うカンダの言葉にヒカリは顔を横に振る。

ヒカリが限界に達したタイミングで尻尾が横殴りに振り回された。

これもチガゲが糸を絡ませ、キキョウと一緒に引っ張って動きを止める。

だが、体勢を変えたドラゴンが今度は前脚を振り下ろす。

ドンッと言う衝撃と共に前脚が叩きつけられた場所からはじき飛ばされた。

代わりにその場所にはトバリがいた。

地面に丸まって、ドラゴンが何度も叩きつける前脚の攻撃を泣きながら必死に耐えている。

「辞めろぉぉぉ!」

カンダががむしゃらにその脚に攻撃するがフワッとまた空中に浮かんでそれほどのダメージにならない。

キキョウとチカゲがトバリを助け起こすが、そこにまた尻尾が振り回され、3人ともはじき飛ばされる。

「あぁぁぁクソ女神!なんかねぇのか!この子達を助けるなんかねぇのかぁ!」

カンダが慟哭に近い状態で叫ぶ。

ポーンと頭の中で音がした。

ライン強度が最大になりました。

従魔合身の条件が満たされたので、解放します。

「従魔合身?俺とこの子らが合体出来るのか?」

説明が無いのだから、ぶっつけ本番でやってみるしかない。

「これに賭けるしかねぇ!チカゲ!合身だぁ!」

「うん!」

チカゲの声が聞こえた。

その瞬間チカゲが自分と融合していくような奇妙な感覚が起こる。

「いくぞチカゲ!」

うん!と言う声が頭の中に響く。

この子らがまともに動けば、ドラゴンだって敵じゃ無い。

カンダと融合することで自由に動けるなら状況は一転する。

チカゲの空歩を使い、空中に浮かんでいるドラゴンの顔までたどり着く。

ブンッと手を振ると、案の定チカゲの専用武器手裏剣が手に現れる。

それを正確にドラゴンの目に投げつけた。

さらに移動して反対の目にも投げつける。

これで相手の視界を潰した。

空歩でそのまま背中に移動する。

「チカゲここまでだ!キキョウ来い!」

「うーん」

ちょっと間延びした声が聞こえる。

背中に馬乗り状態でキキョウの槍を出す。

そしてそのまま羽根を滅多刺しにする。

羽根が穴だらけになったドラゴンは地上に落ちるように下がってくる。

「よし!ヒカリ!」

「ハッ」

いつものヒカリの返事が聞こえた。

高速移動でドラゴンの脚の間を走り回り、そこにヒカリのスキルを全部乗せて切り刻む。

流石のドラゴンも相当なダメージで体勢がかなり低くなる。

「トバリ!トドメいくぞ!」

「はぁい」

トバリの能力が自分の中に入ってくるのがわかる。

そのまま低い体勢のドラゴンの頭に回って、トバリの斧を振り回して叩きつける。

大きな岩が破裂したような音が大音響で鳴り響いた。

ドラゴンの頭を砕いたのである。

更にダメ押しで2度3度と叩きつけ、完全にドラゴンが停止するのを見届けた。

トバリと合身しているせいか、やたらと腹が減る。

我慢出来ずにそのままドラゴンにかぶりついた。

それを見ていた他の子達もお食事タイムとなる。

合身を解いたトバリに聞いてみるとお腹が空いていると言うので、どうやら満腹は共有できないようだ。

ひとしきり食べ終えた所でヒカリにウォーレンとありったけの荷馬車を呼んでくるように頼む。

チカゲにはダンジョンの外で待機してる物たちの護衛、キキョウには解体用のナイフの作成、トバリにはキキョウのサポートを頼む。

カンダ本人は急激に動いた反動か全く身体が動かなくなっていた。

全身が重度の筋肉痛になった感じだ。

半日ほどしてウォーレン達が合流した。

「よう、ここ任せていいか?」

なんとか身体が動くようになったカンダがウォーレンにそう言う。

「数は揃えたからな、なんとかなると思うぞ」

「じゃあ、頼むわ」

ウォーレンの言葉を聞いて、カンダはそう言うとまだちょっとフラつきながら4人と一緒にダンジョンの外に向かう。

馬車に乗り込み夜明けを待ってから、アリエルの街へと向かってもらう。

街に着いた一向はそのままギルドに向かう。

バァン!と言う音とともにギルドの扉が激しく開かれた。

ギルドの中が静まり返る。

なによりもいつも小綺麗な格好で依頼終了後も目立った怪我も汚れも無いカンダが、見た事の無いくらいボロボロであちこち傷だらけの状態で入ってきたため、ギルド全体が変な緊張に包まれた。

「ギルドマスターに会うからな、止めるなよ」

受付にたどり着いたカンダがエイミアにそれだけを言うとずかずかと奥の階段を上り出す。

「え、あの、お待ちを…」

そこまで言うと、隣に素人でも分かる殺気が漂っているのに気づいた。

「ごめんねぇ、今私達気が立っていてぇ、変に逆らったりされちゃうと暴走しちゃうかもぉ」

キキョウの口調はいつもと変わらないのだが、発してるオーラが凶悪なモンスターのそれである。

「ひ…」

恐怖で動けなくなったエイミアをそのままにしてキキョウもカンダの後を追う。

ギルドマスターの部屋がバンッと派手に開けられる。

椅子に座った中年の男を見つける。

「おや?な…」

これ以上喋ろうとした時には既に首にチカゲの糸が巻き付き、真後ろにヒカリが立ち剣をこめかみに突きつけていた。

「余計な事は良い、俺の知りたいことだけ洗いざらい話せ」

「な、何のことだ?」

「今回の俺たちの依頼の顛末をまず話せ」

カンダの目が今まで以上に凶悪になっている。

「顛末も何も今まで通りの使命依頼なだけだ」

「トバリ」

ギルドマスターの言葉にカンダは一言だけ発した。

その言葉でトバリはギルドマスター手を握手する様に持って全力で握り潰した。

「…」

叫び声をあげようとした瞬間、既に追いついて部屋に入ってきていたキキョウが口を糸で塞ぐ。

「話したくなったら頷いてくれ」

カンダが放った言葉を合図にトバリとキキョウが両足、チカゲとヒカリが両肩に噛み付く。

そしてそのまま、消化液で体を溶かしながら意識を失わせないように食べ始める。

「んんん!」

ギルドマスターが全力で頷く

噛んだ場所には蜘蛛の牙の跡がくっきり残っていた。

消化液で溶かした筋肉が止血代わりになっていて血は流れて来ない。

あまりにも早くギブアップしたのでまだほんの僅かしか消化されていない。

「盗賊でも3回は我慢したんだけどな」

カンダがそう言いながら、口を塞いでいる糸を取るように命じた。

「あのダンジョンの隠し通路は元々こちらでも把握していた、ただ、危険が大きいため最終攻略は不可能と判断して封じる事にした」

「封じる?枯れたダンジョンって聞いてたんだが」

「それは…」

「もう少し痛い目みるか?」

「ま、待ってくれ!話す、話すから!」

相当痛かったらしい。

「危険なモンスターやダンジョンを発見した場合、監督官に報告しなければならない、そうなるとほぼ確実に討伐依頼が来る!だが、極秘に送った冒険者から、あそこに居るのはドラゴンだと報告を受けていた!」

「ん?どうやってそんな事調べられるだ?中に入ったら死ぬか倒すまで出てこれないだろ?」

カンダの疑問に

「奴隷を使えば良い、遠隔の目と言う呪具がある、それを持たせてあの部屋に放り込めば相手が何か分かる」

「お前…下衆だなぁ」

カンダが吐き捨てるように言う。

「討伐には膨大な費用と犠牲を強いられると判断したから、あそこは枯れたダンジョンとして下層部など発見されていない事にした」

「発見したパーティーは?」

「下層部探索中に死んでいる」

ギルドマスターの言葉を聞いて、ますますカンダの表情が険しくなった。

「で、それが何故今頃になって調査依頼を出したんだ」

「…」

カンダの質問にギルドマスターが黙り込む。

「当ててやろうか?ガデエル商会だろ?」

ギルドマスターがカンダのこの指摘に目を見張る。

「盗賊がギルドメンバーとして登録されている、ギルド内での奴隷の斡旋、明らかにおかしいよな?だが、お前とガデエルが癒着してるなら話ははやい」

カンダが話しを続ける。

「盗賊もガデエル関係、奴隷もガデエル関係、向こうがそろそろ俺たちを粛清しようと考えたんだろ?」

「お前達はやり過ぎたんだ、盗賊を潰したのはまだ良いそろそろ邪魔になってきていたからな、だが、アリエル中の奴隷商会を全部潰すのはやり過ぎだ!」

「え!?」

カンダが思わず声を出してしまった。

「なんだ?違うのか?」

「あ、いや、違わない、いや、違うって気もしないでもないが、やっぱり違わないになるかぁ」

カンダが思わず溜息をつく。

「とにかく!お前達の行動は看過出来ないが、正面から戦えば犠牲も大きい、なのであの場所を利用しようとしたのだが…まさか生きて帰って来るとはな」

「あーま、良いや、なんか怒りが分散してしまったから殺さないであげるから、ガデエルの本拠地と主だった店、幹部の家教えて」

「何を言ってるんだ!そんな事出来る訳ないだろう!」

ギルドマスターが最後の抵抗をする。

「あのね?別にお願いしてる訳じゃないんだよ、お前を殺してからここを探索する手間省きたいだけなんだよ?分かる?嫌なら死ぬか?」

カンダが感情のこもらない顔でギルドマスターに伝える。


ギルドマスターから貰ったガデエルに関する全資料を抱えながら、街の外に出た。

そしてそのまま外壁沿いに歩いている。

ギルドマスターは約束通り殺していない。

変に動き回らせないように椅子に縛り付けて、声も出せなくし、念の為ギルド職員に対して立ち入り禁止の命令書を書かせた。

今日1日くらいは動けないはずだ。

「ここだな」

カンダがマップを眺めながら、立ち止まる。

やり口は砦攻略と同じである。

違うのは昼間から堂々と行う事くらいだ。

4人に先に登って貰い、自分はキキョウとチカゲで作った網で上に引き上げてもらう。

今回は壁の上から屋敷の屋根に糸を渡す作戦である。

先に3人渡って、トバリがカンダを網ごと投げ飛ばす、3人で上手いことキャッチして最後にトバリが渡る。

ガデエルの屋敷が比較的壁に近かったので、この作戦になった。

ちょうどガデエルの執務室の上まで来たところで、チカゲが屋根に糸を巻き付けそのまま上下逆さの格好になって執務室の窓まで降りていく。

中に1人しかいない事を確認した上で窓ガラスを蹴破って中に侵入した。

侵入と同時にフェロモン放つ。

そこにヒカリが入り込んで押さえつけ、少し遅れて入って来たキキョウがグルグル巻にする。

そしてトバリがカンダを担いで中に侵入して来た。

「お前には自分が築き上げたものが崩壊する様を見てから死んでもらう」

侵入する時にあちこちゴンゴンとぶつけられ、網に絡まって助けて貰いながらやっと抜け出したカンダの決めゼリフであった。

「よし!」

気を取り直した。

「この屋敷に居る人間全部ここに集めて来て、生死は問わないから」

「はーい」

「うん!分かった」

「ハッ!」

「いってきまーす」

各自返事をすると、執務室から出て行った。

全員の作業を待つ間、ガデエルに話しかける。

「お前のやり口な、気にいらねぇんだわ」

何か言いたそうにモゴモゴやっているので、口を封じてる部分の糸を取ってやった。

「お前!私の影響力をわかっているのか?この国の貴族にも顔が聞く、暗殺ギルドだって知っているんだぞ!例え私を殺しても組織の人間は必ず報復する!」

「お前、最初の俺の言ったの聞いてなかったか?」

そう言って、ギルドマスターから手にいれたガデエルの関係者の載った資料をバサバサとガデエルの目の前に落とす。

「全部、全部だ、1つ残らず潰してやるから安心しろ」

カンダが冷静な顔でそう告げる。

「はっ!そんな事出来るわけが無いだろ!」

ガデエルのこの言葉が合図にだったかのように屋敷の人間が次々と運ばれて来る。

「マスター、多分この人の奥さんと娘さんだと思うんだけど、どうしよう?」

キキョウが息が出来るだけの小さな穴が空いてるだけの、ミノムシの様な全身糸で包まった少女と、足と鼻以外が糸で包まっている女性を連れて来た。

「ま、待て!こんな子供まで殺さないよな?頼む!なんでもする!なんでもするから!殺さないでくれ?」

ガデエルが急に動揺して懇願し出した。

この屋敷には通常なら発見不可能と思える隠し部屋があり、何かあったら家族はそこに隠れる事になっていた。

絶対見つからない自信があったのだ。

カンダがマップを使って、彼女達に指示を出していなければ、おそらくガデエルの予想通りになった筈だった。

「あのさぁ、お前セルザムの娘殺そうとしたじゃん!なんで自分の娘は殺されないとか思う訳?」

「違うんだ!あれは私が指示した訳じゃ無いんだ!」

必死に弁明するガデエル。

カンダはキキョウに命じて天井に吊るさせた。

ほどなく屋敷の人間全員が執務室に連れて来られる。

何人かは抵抗したため既にただの物体になっている。

全部で18人いた。

「さてとガデエル、お前に選ばせてやるよ、誰は殺して良い?あんたが家族を殺して良いと言ったら残りは全員助けてやるよ」

こうして、ガデエル1人づつ殺す人間を選んでいく作業を行う。

1人1人、ガデエルに恨み言を言いながら死んでいった。

結局、ガデエルは最後まで家族を選ばなかった。

外の日もだいぶ傾いて来た。

次はガデエルとカンダを執務室に残し、4人がギルドの資料片手に街へと散って行った。

「さて、しばらく報告待ちだな」


トバリは屋敷にほど近い場所を担当していた。

隠密行動とは無縁の性質から、警備、傭兵、武器屋、倉庫が密集している地域の担当だ。

こう言ったものが屋敷周辺に配置してあるのが、ガデエルのやって来た事を物語って居る。

「こんにちはぁ〜」

正面から傭兵の屯所に入っていく。

「なんだお前はぁ?」

ここから先の顛末は盗賊の時と同じだった。

その後、警備も同じように壊滅させる。

倉庫だけは少し意味合いが違った、全滅させた後に物色を始める。

「あったぁ!たぶんこれぇ」

倉庫の中に厳重に保管されていた所から、袋を10枚ほど見つける。

トバリはその袋に倉庫の中身をどんどん詰め込んでいった。

そして、傭兵の屯所と警備から持ってきた袋も詰めて、武器屋に向かう。

武器屋も壊滅させた後に洗いざらい中のものを袋に詰め込んだ。

そして、そのままガデエル配下のお店周りを開始した。

トバリの過ぎ去った後には配下の店には何も残っていなかった。

「さすがにお腹いっぱいになってきたぁ」

何も残っていなかった。


ヒカリは暗殺ギルドに向かっていた。

場所はわかって居る、まともに入れてくれるわけが無い、なので全力で走ってそのまま止まらないという行動に出ることにした。

風を纏い、真空を纏い、音を纏い、体当たりして来るのであるから、どんなに頑丈でも木製のドアなど木っ端微塵だった。

そしてそのまま、全力疾走の状態で縦横無人に走りまわる。

暗殺ギルドの幹部やマスターと思わしき人間を見つけてそのスピードで始末した時には、建物の内部は倒壊寸前だった。


キキョウの役目は1番地味だった。

表通りの目立つ場所にあるガデエル配下の店に行き、傘下から抜けるように説得する役目である。

キキョウは非常に目立つ上に、ギルドの噂も店まで届いて居るので凄腕の冒険者という認識だった。

その相手が自分の店に来て、ガデエル傘下から抜けるか、私たちの敵になるか選べと言って歩くのだから、機嫌をそこね無いためにもとりあえずは傘下から抜けると言ってしまう。

言質取ったらこっちのもので、一筆書かせて次の店に行く。

しっかり書類として効力のある書式で書かせるのだから店は諦めるしか無い。

「あーガデエルの奴らの嫌がらせに耐える日々に逆戻りかぁ」

表通りの真っ当な商売している人間にまで情報が届くにはもう少し時間が必要だった。


チカゲは街の外にいた。

ガデエルと関係のある貴族は男爵で、そこまで権力は無い。

とはいえ、資料にはだいぶ一緒に悪事を働いてきた内容が載っていた。

男爵本人とその正妻、第一継承者の息子、佞臣3名、資料に載っている問題のある人物が1人1人死んで生き、最後に男爵が死んだ時

「お兄ちゃんの好きな時代劇みたーい」

という明るい声が聞こえたと供述が残る、不可思議な事件に男爵領が揺れた。


チカゲが1番遅くにガデエルの屋敷に戻ってきた。

所要時間は約1日であった。

「色々考えたが、お前達は生き残らせてやるよ」

ガデエルに向かってそ言うと家族3人を担がせて屋敷の外に出る。

「チカゲ、やって良いぞ」

カンダの言葉に

「うん!行ってくる!」

屋敷に再び戻ると中から

「火遁の術!」

と言う声が聞こえた。

屋敷周辺の建物にはそこら中キキョウのクモの糸が張ってある。

ガデエルの親子3人はそのまま解放せずに道端に置く。

そして、そのまま街の入り口まで戻って行った。

「おー!ドラゴンだけどよ!とんでもねぇ高額で売れたぞ!」

ウォーレンが嬉しそうに、駆け寄ってくる。

「そうか、じゃあその金で依頼受けてくれねぇか?」

「ん?どう言う事だ?」

「あのアジトの管理とガデエル配下だった店をセルザムに預かって貰う手配と、しばらく色々混乱するだろうから、それの迷惑料だな」

「おいおい、なんかココから居なくなるみたいじゃねーか」

ウォーレンの笑顔が引きつってくる。

「あぁ後、トバリそれあげて」

その指示でトバリは抱えてた袋のうち2つをウォーレンに渡す。

「そこに金と武器入ってるから、うまいこと使ってくれ」

「おい!これマジックバックじゃねぇか!とんでもなく貴重でとんでもなく高いんだぞ!」

ウォーレンがこの後の展開に気づいてしまったが、どうしてもそれは口に出せなかった。

そして、そのまま場所の所まで一緒に移動した。

「じゃあな、後頼むわ」

カンダがウォーレンにそう言う。

「また、会えるよな!」

ウォーレンが大声で怒鳴る。

「多分ね」

「多分じゃねぇよ!絶対だぞ!絶対だからな!それから!ココから南に行ったとこにゴルダルって言う都市国家がある!そこに俺の叔父貴が居るから!会ってみてくれ!」

「お前…本当にいい奴だな!」

カンダがニカッと笑顔でそう言う。

「お前もな!俺たち友達だよな!」

ウォーレンの言葉にカンダが少し考え込んで

「違うな、仲間だ!」

2人ともニカッと笑ってじゃあなと手を振り合う。

こうして場所はゴトゴトと南に向かうことになった。

「しかし本当に良いのか?俺たちと一緒についてきて」

カンダはそう御者に尋ねる。

「あっしだって、もう仲間じゃないですか!そらついて行きますよ!」

御者が元気に答える。

「ところで、お前なんて名前なの?」

カンダが御者に尋ねる。

「えぇぇぇ!ちょっと待ってくださいよーあっしの名前今まで知らないでいたんですかぁ?そりゃ無いよぉ」

御者がちょっと不貞腐れた顔になる。

「良いですか!よく聞いてくだせぇ!あっしの名前は!」

「あ、イイや、どうせ覚える気ないし」

カンダが途中でそう言って御者の言葉を遮る。

「もう!ダンナ!絶対性格悪いよね」

馬車の中で笑い声が充満する。

こうして街から出ていった一向は次の冒険へと舞台を移す。

御者はカンダに名前を覚えてもらえるのか!


つづく

作者は豆腐メンタルなので厳しい意見は見なかった事にします。

ご了承ください。

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