第9話 イカしたメンバー達
あらすじ 狂気のギルドに狂信者が加入
「よぉし! ジェイ君! 準備は整ったからこっちへ来たまえよぉ!」
レナの子供特有の大きく高い澄んだ声が響いてきた。
どうやら今いる【レナちゃんファンクラブ】のメンバーを紹介してくれるらしい。
何故準備が必要で一時間も待たされていたのかもわからない。
俺が外へと続く扉を開けるとレナを除きそこには3人の子どもがいた。
「名誉ある【レナちゃんファンクラブ】のメンバーを紹介するよぉ! 全員集合ぉお! 一列に並んで点呼始めぇ!……集合〜〜………ほら! ちゃんと練習通りやりたまえよぉ。さっきは出来ただろう?」
レナの声を無視するかのように子ども2人はキャッキャっと走り回り眼鏡をかけた子どもだけがレナの声に従っていた。
「僕の計算ではミック君とフィオさんが集合する確率は45%です。マスターレナ、なにか策が必要です」
「グリムの言う通りなんだけどねぇ」
眼鏡を掛け直しながら少年が提言する。
凄いな。眼鏡をかけているだけで知性派を気取るつもりか? あと確率が微妙。
「ッく、ジェイ君の手前こんな手は使いたくなかったけど、飴ちゃん欲しい子こっちにおいでえ! 早いもの勝ちだよぉ!」
早い者勝ちと言いながらレナの手には3つの飴細工が握られていた。餌付け作戦か……ってかさ、
なにこれ? 俺はなにを見させられている?
しかし効果はあったようで追いかけっこをしていた2人は足を止めてレナへと駆け寄った。
「おれ、フィオに一番大きいのあげる」
「糖々屋さんのアメちゃんだー!」
「僕の計算では僕がこの甘味を口に含む確率は73%です」
残りはなんだよ!?自分の欲望ぐらい知っとけよ!
グリムって子は主張が激しいぞ!
無闇やたらと動き回らないようにミックとフィオの手をレナが握り言う事を聞くグリムは手ぶら。そして4人が俺に向き直った。
「この人はジェイ君、J・ジェイ君だ! みんなも挨拶して」
レナが俺の自己紹介をしてくれた。間違いだらけと言うよりも悪意しかない紹介。
この時俺は密かに決意した。
ツッコまないぞ。俺はツッコまないからな。
まず4人の中では1番身長の高い子供が手を挙げた。
「おれミック。よろしく」
「覚えたよ。こちらこそよろしくミック」
小さな声で言葉を発しているけど聞き取れない程ではない。歯がギザギザだからミミックと名付けよう。
「ミックのことを変な愛称で呼んじゃダメだからねぇ、親しき仲にも礼儀ありだよぉ」
レナは俺の心の中でも読んでるのか?
次いで裸足で元気に駆け回る女の子が手を上げた。この中では一番年上なのかな?
「フィオ・カーターです! よろしくお願いします」
……。 カーター? 嘘でしょ?
レナをチラリと見るがレナは小さく首を横に振った。
下手に詮索するなと言う事らしい。
魔王様の血筋とか詮索したいよ!
まぁ、魔王様の血筋は今では枝分かれしすぎでフィオが直系なんて事は流石にないだろう。でも魔王カーター様って子供作る前に封印されたんだっけかな? となるとフィオは親戚かな?
でも赤の他人ですら魔法を授けてくれるんだから遠い親戚なら尚更に魔王様は見てるよな。
ついでに俺の目に止まらないかなー。
俺の心此処に在らず状態に関わらずグリムがメガネを光らせた。
「最後は僕の計算によると98%の確率で僕の紹介になりますね」
「はいはい。お前はグリムだろ? これでグリムの自己紹介は必要ないから2%引いちまったな。レアキャラ認定だ」
グリムが喋る前に黙らせる。
コイツは危険な匂いがする。巨大な魔物、悪魔と出会った時以上の悪寒だ。あまり深く関わってはいけない。そんな気さえする。
グリムはションボリと肩を落としている。
なんか悪いことしちゃった気がするな。子どもたちの刺すような視線が痛い。
「ひっく、僕だけが自己紹介を……ひっく……出来ない確率……99%……うぅう! 悔しいです!」
「グリムを泣かせた。酷いやつ」
「ひっどぉぉい! レナちゃんに言いつけてやるんだから!レナちゃん、いつもあたし達を脅してる時に言ってる『お目目の位置を足の裏に移す魔法』で懲らしめてよ!」
なんだその怖すぎる最悪な魔法は!?
レナを見ると空白の本を手に持ってページをパラパラと捲っている。
……え? この幼女マジでそんな事出来るの?
俺の冷や汗を見たおかげなのかレナはニヤリと笑って本を閉じた。
「ジェイ君、少しは大人になりたまえよ。自己紹介は黙って聞くのがマナー……いいや、マナー以前の常識だよぉ。君はその辺りからしっかり始めるべきなんだよお」
なに? 俺はなにか致命的な欠陥抱えてて子供たちに矯正させられてるの? 俺の自己紹介の時にJ・ジェイとか嘘教えたレナは常識あるの?
待て待て、今日は大人しくしている。借りてきた猫のように大人しく。
「……そうだな。悪かった。お前の名前を教えてくれよ」
グリムは眼鏡をクイッとあげて
「一度しか言いませんので良く聞いてくださいね。僕の名前はイヴァリウス・レイエルバッハ・ラウツホループ・アヴダクトゥアル・クライブ・グウェイジンです」
「略してグリムな。よろしくグリム」
ツッコまない。
『長え!』なんて安易な叫びはあげない。何故なら俺はマナーと常識を兼ね備えた大人なのだから。
それとグリムの【ム】要素が何処にも無いなんて野暮なツッコミも勿論しない。
なによりグリムの名前は嘘だと思っている。名前を……あんまり覚えてないけど5つぐらい名乗っていた。つまりグリムは5つの功績を達成しているという事だ。
(ジェイクは間違ってて実際6です)
生まれた時に1つ名前をもらえる。この世界に生まれてこれたという最初の功績。
人間ならば全員漏れなくもらえる。
そして多くの人間はセカンドネーム止まりだ。仮にグリムがどれだけ強かろうとも国王よりも偉かろうともサードネーム以降は難易度が跳ね上がる。そもそも子供のグリムでは功績をあげる時間が絶対に足りない。
だから嘘。メガネかけてるくせに目つき悪いし。
今回の話しは大人な俺がクールに自己紹介を聞いて終わり。
「計算ではジェイさんが僕のフルネームを覚える可能性は……素晴らしい! 0%です! ミック君ですら1%はあったというのに!」
「覚える気がねえんだよ! テメェなんてグリムすらおこがましいわ! このクソガキぃいい!」
ーーおまけーー共有掲示板ーー
甘い食べ物がたくさん置いてある事で有名な糖々屋さんが今なら全員に【七色のあめ玉】プレゼントキャンペーンをやってます(( ˊ̱˂˃ˋ̱ )ウレシイネ
ほしいけど、
どうやってもらえばいいのかわからない( ◠‿◠ )
僕の計算では下にある星に5をつけると権利が貰えるとの結果が出ました。更にブックマークを押すと糖々屋さんの現在地図が表示される確率99.9%です。減るものでもありませんし押さない手はありませんね。
ちょしゃ とてもすごい れな・ふぁるしおん
〜なお、次の日この張り紙はレナによって剥がされている〜