第8話 ギルドに入ります
数日後、俺はモブオッサンに聞いてとある場所に赴いた。平家の一軒家、と言えばいいのか横にだだっ広い建物、
中に入ると顔中インクまみれになりながらせっせと紙に落書きをしている少女、レナがいた。レナは俺に気付くと落書きをやめてこちらに駆け寄ってきた。
「おぉー! ジェイ君じゃないかねぇ。どうだい? その後は? 今度はちゃあんと頑張ってるかなぁ?」
「あぁー、あのさ……そのね」
少し恥ずかしくもあり胸に耐えかねた蟠りを吐き出すように、
「——え? 自分から辞めてきたの? どうして?」
「半分はアリティアのせいだけどもう半分はレナ、自分の胸に聞いてみろよ」
俺はレナに地図を差し出した。一角獣の巣が記された地図。これは普通だ。普通に雑で本人以外にわかる奴がはたして存在するのか。
レナは地図を見せてもキョトンとしていた。
「ん〜? わたしは別に必要ないから記念に貰っておいていいよぉ〜?」
「何しらばっくれてんの?」
俺は勢い良く地図を裏返した。レナのまん丸お目目が大きく見開かれてペン先で自らの頬をかいた。
裏にはFランクギルド【レナちゃんファンクラブ】の正式な申請用紙だった。ご丁寧に俺の名前
《ジェイク・アンダーフロー (( °ω° ))Jッテヨンデネ》
などといった腹立つ落書き付きで書かれている。
ギルド加入用紙は世界共有の正式な魔法で作られている。複製は不可能だし本人が確固たる意志を持って受け取らなければ効果は発揮されない。
俺は地図と称してこの悪魔の契約書を受け取ってしまっていた。
「あ あー……それはだねぇ、なんだその——たしかにジェイ君が受け取りやすいように予め名前は記入したよぉ。でも急にジェイ君が一角獣の巣を知りたいなんて言うからわたしも慌てて——ねぇ? はは はは……ごめんなさい」
レナは絞ったように渇いた笑い声を出したあと素直に頭を下げた。
そこで出産する笑いは出さないのか……こっちとては完全に嵌められたと思っていたがレナの態度を見る限り嵌める気がなかったと知れて安心した。
レナは意を決したように立ち上がり契約書を渡すように手を差し出してきた。
「完全にこちらの落ち度だからねぇ。多少不都合は起こるけど【レナちゃんファンクラブ】からの脱退を認めよう」
レナの言っている不都合はこれからだ。これから【レナちゃんファンクラブ】などと名乗る狂気的な名前のギルドに入ろうか迷ったイカれた狂信者候補がいた場合、僅か1日で辞めた冒険者がいれば少しは不審に思う。
不審に思えばわざわざ頭おかしい名前のギルドに入る理由などない。狂信者から真面目な冒険者に早変わり。他にもギルドはあるのだから。
……俺には——今の俺には他などない。
「さっきも言ったように自分から正式に断ったんだよ」
「ほええ? そう言えばそんなセリフ言ってたねぇ? どうしてなんだい?」
「一言で言えばアリティアがムカつくから」
レナは見た目こそただの幼女だがその見た目でギルドマスターをやっているだけあって察しが良い。詳しい事を聞かずとも俺が言いたい事を察してくれた。
「……二言で言えば?」
「これから【レナなんとか】に入りますジェイクリーナス・アンダーフローです。よろしくお願いします」
「ひっひっふー! 【レナちゃんファンクラブ】ギルドマスターのレナ・クライブ・ファルシオンが君を歓迎しよう」
レナは手を差し出し俺はレナの小さな手を握った。
「早速だけどギルド名を改名——「無理っ!」」
ーーおまけーー共有掲示板ーー
最近様々な掲示板を使って悪質な方法でブクマと評価を稼ごうとしている人が出現していますΣ(-᷅_-᷄๑)ヨウチェック
ギルド専用掲示板はともかく、共有掲示板は皆が目にする場所です。今回までは警告で済ませますが、次回から発見次第然るべき処置を取らせていただきますヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3マテー
皆様も上手い話に乗らないよう注意をお願いします。
著者 斡旋所職員 メアリー・ウェイト♪