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第13話 隠れた優しさ


 ドンドンドンと扉が乱暴に叩かれた。

 レナはグースカ寝ているので俺が対応する。


 と言っても追い返すだけだが


「家主は今寝てるから後日来てね」

「ね……その声はジェイさんですか。僕です。グリムです」


 む、ギルドメンバーならば開けないわけにはいかない。


「おーグリムどうした? お茶ぐらい出すから上がれよ」


 扉を開けるとグリムは家の中を不思議そうに覗き込んだ。

 至る場所を適度に触れてレナのほっぺたをつねると満足したのかベッドに腰かけた。


「粗茶ですがどうぞ」

「これはギルドの客人に出す用の茶葉ですね。勝手に使っていいのですか?」


「マジ? たしかギルドの備品を私的に使ったらダメだったよな」

「煎れてしまったものは仕方ありませんよ。マスターには黙っておきましょう。仮に気付いても白状しなければ追求しませんから」


 グリムはズズズとお茶をすすりフゥと息を吐いた。

 なんかこいつ子供に見えないんだよな。

 動作の一つ一つが落ち着いている。


「んでグリムは何しに来たの?」

「マスターが来なくてギルドの鍵が開かないからジャンケンで負けた僕——何かあったのかと心配して見に来たんですよ」


 ツッコまないからな。


「そっか。鍵とかどこにあるんだろうな?」

「いつも身体の何処かに身につけてるはずです。大切な物は手元にないと絶対にいつの日か落とすんだと言ってましたね」


 身につけてる物か、となるとおいそれと剥ぎ取るわけにはいかない。

 本人に起きてもらうのが一番だな。


「おいレナ起きろ。ギルドの鍵を開けてくれよ。もしくはグリムを鍵っ子に任命してくれ」


 俺がレナをゆさゆさしているとグリムがその手を掴んだ。


「寝かしておいて構いませんよ。ミック君もフィオさんも今日はお開きしました。ジェイさんもギルドに用事はないですよね?」


「用事がないのは当たってるな。今やってる作業もここで出来るし」


「他人の趣味をとやかく言う気はないのですが好奇心で聞きます。先程からジェイさんは何故マスターの下着を扱ってるのですか?」


「暇だからパンツにゴム入れてるんだよ」


「……そうですか。ジェイさんは器用ですね」


「こんなのに器用不器用関係あるかよ。グリムもやってけよ。俺は靴を磨くから」


「僕がやったと知ったら怒るでしょうから遠慮しておきます」


……

………


 俺が服のほつれを直している間グリムは静かに茶を啜っている。なくなっては勝手に追加までする始末。


 一応備品なんだろ?


「グリムって頭いいの?」

「随分と藪から棒ですね。頭が悪ければ知的キャラなんて務まりませんよ」


 知的キャラの自覚あったのか。

 しかし、俺がその資格があるのか試してやる!


 レナの机から先程の小難しい言葉が書かれた紙をグリムに差し出した。

 グリムは眼鏡をクイッあげて不敵な笑みを浮かべた。


「これはギルド連盟発行の書類ですね。発行番号、ギルド印や文字の乾きから見て書類は5日前に書かれました。マスターレナの元に届いたのは昨日でしょう……こんなところでよろしいですか?」


「お、おお。全然聞きたい事じゃないけど予想斜め上に凄い奴ってのは理解出来たぜ」


「外しましたか。ではジェイさんは何が聞きたかったのですか?」


「グリムってここに書かれてる内容は理解出来るのかだけど」


 なんかコイツなら理解出来るだろうな。


「内容ならば書いて……なるほど」


 グリムは書類と俺の顔を交互に見比べた。


「ジェイさんは文字の読み書きが出来ないのですね。良いですよ。都合がつく限りで良ければ僕が教えましょう」



   読めるわ! 馬鹿たれ!


 咄嗟に怒鳴ってしまいそうな自分を制する。

 実際問題としてギルドの書類は読めてない。


 何となくはわかるけど内容を説明しろと言われたら絶対にしどろもどろになってしまう。


 甲乙とか丙とか意味がわからん! 

 神代文字は魔導書を使う魔法使い必須スキルだから良しとするが古代文字なんて日常で一度もお目にかかったことないわ!


 俺は多少なりとも文系にステータス振ってこれだぞ!? マジで読ませる気ないんだよ!

 


「気持ちは嬉しいが俺にはレベルが高すぎる。グリムならその小難しい文章をどうやって俺に説明するのかって思っただけ」


「ふむ」


 グリムは顎に手を置き少しの間考え込んだ。


「流石にミック君よりも学はあるでしょうから——しかしフィオさんよりは感性が鈍い——ジェイさん程度でもわかる範囲、なおかつジェイさんに失礼のないよう」



 口に出して言ってる時点で十分失礼だからな。



 グリムは軽くペンを走らせて俺に手渡してきた。


「簡潔すぎますがこんなところですね」

「早いな! どれどれ」




『これ以上貴方のギルドが起こした犯罪を見過ごす事は出来ません。連盟としては申し開きの場を設けるのでレナ・ファルシオンは連盟会に顔を出すこと』


 お、おおぅ、

 レナの書いた文章と全然違ってヤバそう。


 それとこのギルドは犯罪組織なの?





 ジェイクとグリムのお茶


「おや? これはジェイさんが以前所属していたギルドカードですね。こんなのを放置するなんてマスターも仕方ない人ですね」


「ぷー! ギルドカードはスキルやレベルなんかを網羅した個人情報だから無闇に人に見せちゃいけないんだぞ! ぷー!」


「まあまあ、僕のも見せますからお互い様でいきましょう……へぇ。ジェイさん【抜刀術】なんて渋いスキル取得してるんですね」


「やめろよ! それは本編で出す為のネタスキルなんだからこんな場末でお披露目すんじゃねぇ! ぷー!」


「しっかり【抜刀術レベル3】まで取り返しつかないほどポイント振ってネタなんて言われても……どうしました?」


「グリムのギルドカード、一文字も読めないんだけど。数字も書いてないし……なにコレ偽物?」


「僕の個人情報は【暗号解読レベル5】と

【魔力解除レベル4】、【言語マスター】のスキルがないと解読できませんよ」


「お前バッカじゃねぇの!? そんなやつ世界中探してもいねぇよ!」


「ですね。僕も含めて解読した人に出会った事ありませんから」


「意味あんの?」


「こうやって対等を装って一方的に相手の情報だけを抜き取れますから、あながち無意味にはなりませんよ。デメリットは僕が何のスキルを持っていて、なにに振ったかわからないこと、ぐらいですから」


「わかった。お前大物だよ。たぶんこの物語で最上位に位置するやつだ」

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