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第12話  日が昇る頃に


 俺が川で洗濯をしていると大きな欠伸をしながらレナが家から出て来た。


「やっと起きたのか。おはようさん」

「ふわぁぁ。おはよぉ。ジェイ君は早起きだねぇ」


「レナは夜更かししすぎだ」

「……んー」


 レナは寝起きのせいか返事も曖昧に項垂れていた。

 まったく、夜遅くまでお絵描きしてるからだよ。


「朝飯作ってるから食っちまえよ。俺はもう食ったから残りは全部食べていいぞ」

「……んー、なにこれぇ?」


 レナは鍋でクツクツと煮込まれている素材に興味をしめした。


「ジェイクの気まぐれちゃんこ鍋だ」

「雑草入ってるけど大丈夫なのぉ?」


「俺が厳選して採取した朝積み山菜に向かって何が雑草か!」


 なんだか警戒しているレナに対して一口二口とその場で食べてみせる。


 くくく、この食欲を掻き立てられる香りにあらがえるか?


 俺が抗えないぜ!

 決めた!俺のちゃんこ鍋に対して雑草などと抜かしたレナにはもうやらん!


「うーん、わたしご飯はあんまり食べないんだけどジェイ君の行為は素直に受け取っておくよぉ〜」



 レナは煮えたぎった鍋を掴むとスタスタと家の中に入ってしまった


「   え?   」


 もう一度詳しく言う。

 

 レナは煮えたぎった鍋を素手で掴むと熱そうな素振りも見せずにスタスタと家の中に入ってしまった。


 俺が慌ててレナの後を追いかけると、



「くー、くー、すぴー」


 寝てる。


 立ったまま、鍋を抱えたまま眠りかけている。


「なんだこれ? 俺は何か試されてるのか?」


 まず気になる点があるので鍋をそっと触れてみて、


「あっちい!」


 くそくそくそ! なんだってレナは平気な顔して……寝ながら熱々の鍋を掴めるんだ!?


 そもそも本当に平気かどうかもわからない。後で酷い火傷になったら大変だ。

 気合い一発、鍋を掴み溢すことなく最短距離で床に置いた。


「うわー、これ床にコゲ跡とか残らないかな?」


 まぁいいか。床の心配よりもレナの心配だ。

 コゲどころか穴空いてるけどそこを踏まなきゃ問題ないだろう。

 眠っているレナの手を見る。


 ……。俺は魔法に関しては疎い方だがわかる。

 たぶん手のひらに魔力を集めて膜にしているんだろう、

 

「そーゆー事にしとこう」


 レナを抱き上げてベッドに優しく寝かせる。昨晩レナは夜更かししたあげく机に突っ伏して寝たいたからな。


「まったく、まだ小さいんだから寝る時はベッドで寝ろよな」


 ああ、でもそれだと俺が寝るベッドがないな。

 


 ってかレナは何してたんだ?

 机の上の書類に目を通す。


 内容よりもまず主張の激しい厳ついハンコが目に入って来た。


「ギルド連盟からの書類か」


 この手の書類は何度か見たことがある。

 前のギルドマスターにたまに渡されてたな。

 大型の魔物だとか演習だとか報奨金のうんたらとか面倒だから説明が簡略化されてたけど全部ペテロに任せてたな。



 手元にある書類に軽く目を通すと……

『——甲によってもたらされた被害を無視しては乙に対しての信頼を大いに損なうものとなり丙としては甲に対して厳粛な裁定をし、また甲は精錬なる証を乙に証明——』



 そうだったそうだった。ギルド連盟の書類はやたら堅苦しいんだよ。かろうじて読める部分だけでこれだ。


 俺を含めてほとんどの奴が理解不能なのでギルマスはこの書類をわかりやすく俺達に伝えなければならない。


 頭のいい奴なら問題ないが冒険者などは8割ぐらい脳筋だ。小さなギルドなら口で伝えればいいが大所帯ともなるとメンバー全員が揃う事などほぼない。そうなると口では齟齬そごが出てくるので俺のような脳筋にもわかりやすく清書してやらなければならない。


 ちょうど隣の紙がレナが俺たちにわかりやすく噛み砕いてくれた文章なのだろう。発行番号も一致するし。



『 バレてるから(^_-)オミトオシ

 次やったら怒るからね(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾タイホダァァ』


 なんだよこれ?


 いくらなんでも噛み砕き過ぎだろ?

 伝える為に噛み砕いたはずが噛み過ぎて自分で消化してるじゃないか。


ある職員たちの日常




「えーっと連盟会に出席……これ、ギルド通達用の清書頼む。ハンコは勝手に使っていいから」


「はーい。ふむふむ……毎回思うんですけど、どうしてギルド用だけ古代文字まで使って小難しく書き直すんですか? 共通語なら読み書きが出来る冒険者も少なからずいるのにこれだと読めずに我々の苦労も増えて無駄手間ですよ」



「お前はそんなこともわからんから秘書なのだ! 奴らにわかるように3行でまとめて見ろ! 奴等は都合良く曲解して責任だけをこちらに取らせるからな!」


「おお、確かに掲示板関係なんて揚げ足取られまくって無法地帯ですものね。でもなぁ……僕もこんなのいちいち清書するの面倒なんですよね」


「バカもの!! いい機会だから忠告しておいてやるがこの機を捨てればお前が学んだ古代文字など今後一切使う機会はないぞ!」


「そ、そんな、僕の血と汗と涙の20年が……一生懸命やらせていただきます!」


「そうだ! 私とてそうやって無駄な作業を押し付けられてきたんだ。悔しかったらお前もそのうち誰かに引き継がせろ!」



「……あ!! 

だから秘書の必須項目に『古代文字レベル3』

『神代文字レベル2』が必須なのですね!……スッゲー無駄!! 僕があなたの地位を譲ってもらったら、まず真っ先にこの不毛を撤廃しますからね!!」



「ふ、若いな。そろそろ飯食いに行くか」


「わぁい!ぶっちょお〜の奢りー。」


「ブクマや評価、感想なんかがもらえたら喜んで奢ってやる……経費でな!」

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