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7. 結婚式


 

 今日は、僕の姉さん、キャサリンとグレイスの兄さん、セシルの結婚式だ。

 姉さんはウエディングドレスを着て、とても幸せそうだ。僕はグレイスと一緒に、改めてお祝いを言いに行く。


 「姉さん、義兄さんおめでとう。義兄さん、こんな姉をどうかよろしくお願いします」


 と心から頭を下げる。痛って! 姉さんに思いっきり足を踏まれた。


 「生意気なこと言ってんじゃないわよ。この、グレイスと婚約解消しようとしたっていう意気地なしな弟が!」


 それを言うのはもうやめてほしい……僕は真剣に悩んだのだ……


 「キャサリンとノアは本当に仲がいいね」


 セシルが微笑んで言う。


 「「仲良くない」わよ!」


 奇しくもハモってしまった。


 「安心して、ノア。キャサリンを必ず幸せにするよ」

 「あら、私だってセシルを幸せにしてみせるわ!」


 相変わらず仲がいい二人だ。


 「ふふ、私、昔からお兄様たちが憧れだったのです」

 「ああ……僕もいつも二人がいちゃついてたのは羨ましかったな」


 するとグレイスは少し驚いたようだった。


 「でも、ノア様は嫌ではなかったのですか? 昔、私がお兄様たちが学園で有名なカップルだと言われていることを話したときに、私にあんな風にならないでくれ、と言っていたではありませんか」


 僕もその話は覚えているが……


 「それは姉さんみたいにならないでくれ、って言う意味だよ! むしろグレイスとはもっといちゃいちゃしたい!」

 「えっノア様!?」


 また勢いで言ってしまったが……晴れて先月、両想いになった僕たちはまだ手も繋いだことがないのだ。僕が色々としたいのはやまやまだが、グレイスに触れてしまったら止まらなくなりそうで怖くもある。

 グレイスは真っ赤になっていて、見ているだけでもこんなにかわいいのだから。


 「私みたいになるなって、どういう意味かしら〜」


 だから痛いって姉さん!そういうところだよ!


 「ノア、結婚までは節度をたもってね?」


 セシルがにっこり言った……目が笑ってないよ義兄さん。


 



 結婚式はつつがなく行われた。姉さんたちは幸せにあふれていて、僕も早くグレイスと結婚したいと思った。

 ブーケトスでは花束がグレイスの腕にすっぽりとおさまった。姉さんのことだからコントロールしたのかもしれない。ありがとう、姉さんよ。グレイスは頬を染めて喜んでいた。





 帰りはグレイスを馬車で送る。隣に座って馬車の中は二人だけだ。かなり近いんだが。グレイスから甘い香りがして心臓が跳ね上がる。心を無にするんだ……2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, …

 

 「とても素敵な結婚式でしたね。お兄様もお義姉様もとても幸せそうでした」

 「そ、そうだね」


 グレイスは大事に抱えた花束を見つめてつぶやいた。


 「私も、ノア様とあんな結婚式がしたいな……」

 「グ、グレイス……」


 グレイスは赤くなってうつむくと、そっと僕の手をにぎった。

 今の僕の顔はグレイスに負けず劣らず赤い自信がある。

 

 「あの、私も、ノア様といちゃいちゃしたいです……」


 うわああ破壊力がすごい……なんだか空も飛べそうな気持ちだ。


 「グレイス、愛してる」

 「私もノア様を愛しています」


 藍色の瞳が僕をとらえる。そのままグレイスの顔が近づいて……



 鼻血出さなくてよかった……

  





 * * * * *

 





 僕たちは学園を卒業し、僕の強い希望でなるべく早く結婚することになった。

 ついに、もうすぐ結婚式が始まる。


 式場には、今や大人気の画家として活躍しているジェームズから贈られた僕とグレイスの絵が飾ってある。グレイスの魅力が存分に伝わってくる素晴らしい絵だ。さすが、ジェームズ。この絵は家宝にしよう。


 そのそばにはグレイスが描いた花や鳥などの絵を飾っている。グレイスの絵には優しい雰囲気が好きだというファンがかなりついているのだ。一番のファンはもちろん僕だと自負している。


 そして、これからグレイスのウエディングドレス姿を見にいくのだ。実は僕が見るのは今日が初めてで、妄想がとまらない。ドレスは姉さんと一緒に選んだのだという。

 最近お腹が大きくなってきた姉さんは、相変わらずの性格だから、少しは優しくなったらいいんだけど。セシルが親バカになるのは間違いないから、姉さんがあれくらいでちょうどいいのかもしれない。


 グレイスがいる部屋のドアに手をかける。深呼吸、スーハー。

 よし、行こう!

 

 「ノア様! どうでしょうか……」


 息が止まった。感動しすぎて声が出ない……

 

 純白のドレスはふんわりと床まで広がり、綿密な刺繍がほどこされている。オフショルダーからのぞく白い肌がまぶしい。銀色で縦ロールの髪はアップにまとめあげられ、耳元で翡翠のイヤリングが揺れる。


 「すごく……すごく綺麗だよ」

 「本当ですか?」


 グレイスが少し不安そうに聞いてくる。


 「ああ……綺麗すぎて言葉が出てこなかったよ。僕は幸せものだな、こんなかわいいグレイスと結婚できるなんて」

 

 そう言ってグレイスに軽く口づける。


 「もう、ノア様! 私もノア様と結婚できて、とても幸せです」

  

 今日も僕の婚約者はとてもかわいい。

 ああ、でもこれからは僕の奥さんになるんだなあ。

 婚約解消しようとしていたことも今となっては笑い話だ。

 

 幸せを噛みしめて笑いかけると、グレイスは僕の大好きな笑顔を返してきて、僕はこれからもグレイスとずっと一緒に笑っていられることを願った。



  《終わり》

  



読んでくださってありがとうございました!

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