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入れ替わりの先にある異世界 ~異種族と結婚するため、俺は冒険の旅に出る~  作者: 相馬アサ
第一部 似ても似つかぬ並行世界
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三章 ハーピーの女王 四話

 俺たちはコカトリスと対峙して睨み合う。


「ミドリ、あいつの翼以外の部分を攻撃できないのか?」

「先ほどの反応から考えて、あの魔獣には魔力の流れが見えています。当てることは出来ても、翼以外をピンポイント攻撃できるかは運次第でしょう」

「全体攻撃は出来ないのか?」

「範囲外に逃げると思いますよ」


 魔力の流れが見えるのなら、自分の周囲全体にミドリの魔力が広がったら範囲外に脱出するのは当たり前か。

 しかし、それを逆手に取ればチャンスはありそうだ。


「それでもいい、やってくれ」

「分かりました」


 ミドリは両手を正面にかざして集中する。すると、コカトリスが一斉にこちらへと突進してきた。どうやら後方に回避するのではなく、俺たちに接近することで攻撃範囲から出るつもりのようだ。


「防御は任せろ、『空間魔法・不可侵領域』!」


 コカトリスが近寄れないようにミドリの前方に不可侵領域を張る。

 俺の不可侵領域に気付いたコカトリスは急ブレーキをかけたものの止まりきれずに不可視の壁に激突し、その後翼を広げて雛鳥を翼の下に隠した。


「行きますよ。『空間魔法・転移方陣』!」


 ミドリの魔法が発動して、前方の空間そのものを異空間へと消し飛ばす。

 コカトリスが逃げられないようにかなり広範囲を攻撃したようだが、俺たちの目の前には消し飛んだ道路の真ん中に子供をかばって佇むコカトリスの姿が映っていた。


「ど、どうやって防いだんだ?」

「直前に先ほどの毒液を放出するのが見えました。恐らくは相殺されましたね」

「くそっ、属性の相性がここまで作用するのかよ」

「しかし、私の全力を出しましたので、防ぎきることは出来なかったようです」


 コカトリスがよろける。

 よく見ると、自分の後方は守り切れなかったのか、尻尾や背中の一部が消し飛んでいる。


「手負いの獣は一番危険よ。早くトドメを!」

「分かっています!」


 ミドリは右手を横薙ぎに振る。


「『空間魔法・虚空斬』!」


 すると、コカトリスはコマのように回転しながら飛び上がってミドリの魔法に翼で対抗して弾き返す。


「なっ!」

「やべえ、『空間魔法・不可侵領域』!」


 こちらにむかって放たれた毒液を不可侵領域で防ぐ。案の定、速度を遅らせる程度しか効果がない。


 俺とミドリは地面に転がるようにして毒液を回避する。

 コカトリスは俺たちの陣形が崩れたところで、後ろにいたリックとオリヴィアに飛び掛かった。

 やはり頭がいい。俺たちがリックを守っていると分かっていたようだ。


「やらせないわ。『絶対氷壁』!」


 オリヴィアが氷の防御魔法を展開するものの、コカトリスの爪が一瞬のうちにそれを粉砕する。


「リックちゃん、私の後ろに!」


 オリヴィアはリックを庇うようにして続く爪による連続攻撃を両手の鱗で防いだ。


「ぐぅっ! う、鱗が!」


 オリヴィアの鱗が引き裂かれ、血が流れる。

 やばい、次は防げそうもない。


「それ以上やらせるかっ! 『アルラウネの蔓』!」


 俺は両手からアルラウネの蔓を伸ばすと、コカトリスの身体に絡ませて動きを封じる。

 ものすごい力だ。アルラウネの蔓が引き千切られていく。


「今だ、ミドリっ!」

「オリヴィア、リック様、引いてください! 『空間魔法・虚空斬』!」


 オリヴィアとリックがコカトリスから飛び退くようにして離れた瞬間に、ミドリは虚空斬を振り下ろす。

 アルラウネの蔓に縛られていたコカトリスの胴体は綺麗に引き裂かれた。

 しかし、コカトリスは身体が引き裂かれているにもかかわらず、死に際に毒液を吐こうと口をリックへと向ける。


「やばいっ!」

「アキト様、ダメです!」


 ミドリの制止を振り切って、俺はリックに体当たりして突き飛ばし、両腕を交差させて頭を守った。


「『水流魔法・海流破』!」


 オリヴィアが水流魔法で生み出した大量の水を使って二つに裂けたコカトリスを押し流す。


「アキトちゃん!」

「アキト様!」


 オリヴィアとミドリが大慌てで俺のもとに駆け寄ってきた。


「へへっ……さすが、ミドリの鱗だ」


 もともと毒液を吐く力もほとんど残されていなかったようで、コカトリスの口からは少量の毒しか放出されなかった。

 俺は竜の鱗を両腕に出して、その毒を何とか防いだのだ。空間魔法を竜の鱗で防げるということは、毒液も防げるのではないかという発想だったが、上手くいって良かった。


「うっ!」


 俺は右肩に焼けつくような痛みを感じて視線を向けると、鱗に守られていなかった部分にも毒液がかかっていた。


「大変!」


 オリヴィアが水流魔法で肩を焼いていた毒を洗い流してくれる。


「助かったよ、オリヴィア」


 俺はオリヴィアに礼を述べながらも焼け爛れた右肩を見る。

 これは酷いな。少年漫画ならモザイクが必要だ。


「バカッ!」

「ぐはあっ!」


 突然、ミドリのビンタが俺を襲う。俺は衝撃と痛みで道路を転がった。

 ミドリは俺に馬乗りになると、シャツの首元を掴んで引っ張り上げてくる。


「なんて無茶をするんですか!」

「あ、あれは仕方なかっただろ」

「身体を張るのは私の役目です! アキト様に何かあったら私はっ!」


 ミドリの綺麗な瞳から大粒の涙が溢れ出て、俺の頬に落ちてくる。


「……ごめん……ありがとな、ミドリ」


 俺はミドリの頭を左手で撫でてやる。するとミドリは我に返ったのか、俺を突き放して立ち上がった。


「……バカは死ななきゃと治らないとはこのことですね」

「ごめんな」

「しっかり反省してくださいね」


 ミドリはごしごしと腕で目元を擦る。


「アキトちゃん、手当てするからもう一度見せてくれる?」


 オリヴィアがスーツケースから救急キットのようなものを取り出して近付いてくる。


「オリヴィアの腕も大丈夫なのか?」

「私よりも自分の心配を先にして。お姉さんの怪我よりもアキトちゃんの怪我の方が重傷よ」


 そうだろうか?

 オリヴィアの腕に刻まれた傷も十分痛々しい。痕が残ってしまいそうだ。

 俺の右肩の手当てが終わったところで、交代してオリヴィアの両腕の怪我にも応急処置を施した。

 もちろんノーベ村で医者に見せたほうがいいだろう。


「アキト、オリヴィアさん……足を引っ張ってごめん。かばってくれてありがとう」

「気にするな。俺がしたくてしたことだ」

「そうね。それにお姉さんはとっても強いから大丈夫よ。あそこでリックちゃんを庇わなかった方が後で後悔しそうだわ」


 オリヴィアは包帯が巻かれた両腕を気にしながらもリックに笑ってみせた。

 俺は同じく包帯が巻かれた右肩をさすりながら、辺りを見回した。

 コカトリスの死骸はオリヴィアが魔法で押し流してしまったので近くには無い。そして、その子供の姿もいつの間にか無くなっていた。


「最後の特攻まがいの暴れ方は、子供を逃がすためだったのか」

「そうでしょうね。子供は魔力が低かったので私では位置を感知できませんが」

「成長されると不味いが、この状況で捜索するわけにもいかないし、先を急ごうぜ」

「そうですね」


 俺たちは気を取り直してノーベ村へと続く道路を登り始めた。


「ミドリが壊した道路も後で報告して直してもらわないとな」

「うっ……あれは不可抗力では?」

「だとしても、報告の義務はあるだろ。まさか黙っておくつもりだったのか?」

「いえ、そうではないですが……賠償を請求されると旅費が消えますね」


 俺とミドリは同時にため息を吐いた。

 ノーベ村に着いたら、まずは仕事を探そう。

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