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最終章 ミルド村のアキト 六話

ハルカ視点です。

 ゲルミア、リクハルド、オーラの三人が魔界から帰って来て、毎日忙しかったあたしの生活は少しだけ楽になった。アルドミラ軍大将が魔界から奇跡の生還を果たしたというニュースは、あたしから世間の注目を奪ってくれたからだ。おかげさまで、週に二日は休みが取れる生活を送らせてもらっている。

 6月。夏が近づいて来た事で、あたしはリクハルドに夏季休暇の話を聞かされた。夏休みなんて学生時代ぶりだ。しかも、あたしは軍に入隊してからの三年間有休を使っていないので、8月を丸ごと休めと言われてしまった。

 休めるのは有り難いが、一か月もとなるとさすがに休み過ぎというか、ぶっちゃけ暇だ。


「リクハルドたちも一緒なの?」

「いいや。戦争が終わった事で、俺が戦場に出て戦う必要もなくなったからな。ゲルミアの仕事を減らしてやるためにも、昇進しようと思ってるんだ。今まで断り続けて来たからな、ヴィクトールが四階級も特進させてくれるとよ」

「よ、四階級って……准将ってこと? 凄いけど、もしかして昇進したら休みが取れなくなるの?」

「休みは取れるさ。ただ、俺とゲルミアはヴィクトールの直属で特殊な立場にあるからな。同時に休暇を取ることはない。来月に一週間ずつ入れ替わりで休むことになる」

「来月……それ、8月に変えられないの?」


 二人がバラバラだとしても、あたしとの休みが被っていれば、入れ替わりで一緒に休みが取れる。それを期待した発言だったのだが、ゲルミアは少しだけ困った表情で首を振った。


「俺の昇進に合わせて、ハルカも昇進することになっている。アルベールとオーラもだ」

「へ? そ、そうなの?」

「ハルカは魔王コクヨウを討った世界的英雄。正真正銘の偉大な勇者だ。それがいつまでも中尉ってわけにはいかないだろ? 俺と同じで四階級特進だ」

「え――うそ……?」

「本当だ」

「え、ええええええええ!?」


 あたしが突然大声をあげたことで、リクハルドは耳を塞ぎ、周囲にいた軍人たちの視線が一挙に集まる。

 ここは王都にある軍本部の休憩室だ。あたしは話に夢中で周りに人がいることをすっかり忘れていた。みんなが何事かとあたしを見つめている。


「あ、ご、ごめんなさい。な、何でもないわ……」


 幸い、リクハルド以外はどこかで顔を見たことがある程度の間柄の軍人しかいなかったので、それ以上追及されることはなかった。とはいえ、とても恥ずかしい。あたしは顔が熱くなるのを感じた。


「……あたしが大佐とはね。いつかはなるつもりでいたけど、30を過ぎたあたりかと思っていたわ」


 リクハルドが准将であたしが大佐。そしてオーラは准尉から中尉、アルベールは曹長から少尉へ昇進するという。こうなってくると、今後はみんなでそろって行動することは難しそうだ。


「そう落ち込んだ顔をするな。俺たちは全員英雄扱いで国王陛下に気に入られている身だ。戦争が起きない限りは王都外に配属されることはないだろう」

「ほ、本当? あたし、国王陛下と話したことって、勇者としてギドメリアに勝利したことを宣言した時以外にないんだけど、気に入られていたの?」

「おう。ヴィクトールがよく孫自慢を陛下にしているらしいからな」

「お、お爺ちゃんがそんなことを……」

「ん? お前がヴィクトールをそう呼ぶのは久しぶりな気がするな」

「えっ? あっ……戦争が終わって、気が緩んでいたのかも。気を付けるわ」


 あたしは両頬を叩いて気を引き締める。最近は休みがしっかりとれるので平和ボケしてきているようだ。


「俺とゲルミアは無理だが、オーラとアルベールはお前と一緒に夏休みを取れることになっているから、明日の休みに話し合いでもしたらどうだ?」

「話し合い?」

「一か月も休みを貰えるんだ。海外旅行とか、今から計画を立てておいた方がいいぞ」

「海外旅行……」


 たった今、平和ボケしないように気を引き締めたところだというのに、リクハルドはよほどあたしを堕落させたいらしい。だが、せっかくの夏休み。楽しまないのも勿体ない。

 あたしは来たる8月の夏休みに向けて、海外旅行の計画をぼんやりと考え始めた。




 翌日。あたしはさっそくオーラとアルベールを連れて、王都の城下町へと繰り出した。


「ハルカちゃん、やっぱり少しくらい変装とかした方が良かったんじゃない?」

「嫌よ。あたしはあたし。何も悪いことをしていないのにコソコソと隠れるように暮らしたくはないわ」

「で、でも……」


 アルベールは町の人たちから向けられる視線が気になるらしい。最近はテレビに出ることも多かったし、あたしの顔も知れ渡っているようだ。

 話しかけてくるような奴が多い場合は面倒だが、今のところこちらへ視線を向ける人や手を振ってくる人くらいなので、しつこいマスコミ共よりもよっぽど相手をするのが楽だ。

 あたしは嬉しそうに手を振ってくる子供たちに軽く笑顔を作って返しながら、事前に調べていたお洒落なカフェへと足を運んだ。

 緊張した様子の店員に四人掛けのテーブル席へと案内されると、あたしとアルベールは対角線上に座り、オーラはあたしの肩の上に乗った。


「それでハルっち、話って?」

「二人とも、昇進の話は聞いた?」

「聞いたよ。僕が中尉だなんて実感わかないけどね」

「わたしも、まさか尉官になれるなんて思ってなかったよ」

「アルベールはアキトと一緒に魔王を追い詰めた功績があるんだから普通じゃない?」

「あれはほとんどアキトさんとエメラルドさんの功績だよ。今のわたしにはミカエル様の加護も残ってないし、少尉が務まるか不安だな」


 オーラは昇進にあまり興味がないのか、あっけらかんとしている。逆にアルベールは昇進したことで周囲から向けられる期待に応える自信がないようだ。実際のところ、アルベールにその実力があると判断されたから昇進するのであって、実力がないのにアキトのおこぼれで昇進したというわけではないので、特に気負う必要はない。


「えっ、話って昇進のことだったの?」

「違うわ。本題の前の軽い前座よ」

「ふうん。それで、本題って?」


 オーラはあたしの肩の上で小さなカップに入ったコーヒーに口を付ける。

 基本的にどこの店にもオーラのサイズに合った食器を置いていないので、あたしは彼と出かける時はミニチュアサイズの食器を一式持ち歩いている。今回も先に食器を店員に渡して、それにコーヒーを入れてもらった。値段は交渉次第だが、今回はあたしとアルベールの分だけの支払いで良いとのことだ。


「リクハルドに夏季休暇を取るように言われたのよ」

「夏季休暇? ああ、そういえば、本来は夏にも冬みたいな長期休暇があるんだっけ?」

「今までも冬は暇なだけで休暇ってわけじゃなかったわよ」

「そうなの? でも、ゆっくり休めたけどなぁ」


 オーラはあたしたちと出会うまでは森で一人暮らしをしていただけに、仕事と休みの境目が曖昧なのだ。


「確かに休暇ってくらいだから、身体を休めるのがメインだけど、世間一般の長期休暇っていうと、どこかへ遊びに行ったりするものなのよ」

「もしかしてハルカちゃん、一緒にどこかへ遊びに行こうって話?」

「察しが良いわね、アルベール。そういうことよ」

「わぁ、楽しみだね。期間はどのくらい貰えたの?」

「驚きなさい。1か月よ! 8月は丸々休みなの。もちろんあたしたち3人一緒よ」


 あたしの予想通り、アルベールが嬉しそうなキラキラした目で喜んでくれた。このあたしが仲の良い友達と旅行の計画を立てられるとは、世界は本当に平和になったのだと実感する。

 しかし、アルベールとは逆に、オーラは驚いた表情はしていたものの、あまり嬉しそうではない。あたしの肩を飛び降りてコーヒーカップをテーブルに置くと、腕を組んで空中を漂いながら考え込む。


「どうしたのよ、オーラ? 嬉しくないの?」

「いや、1か月自由に過ごせるのは嬉しいんだけど……」


 では一体何に悩んでいるのだろうか?

 旅行の行き先でないことは確かだろう。


「ごめん、ハルっち。僕はその休みを使って森に帰ることにするよ」

「え?」


 森に帰る?

 帰省するということだろうか?


「でもあんた、森に家族はいないわよね?」

「家族はいないよ。でもフェアリーは基本的に森にしかいないから……このままこの国で暮らしていたら出会いもなさそうだし」


 出会いという言葉でピンときた。彼は森にフェアリーの女性を探しに行くつもりのようだ。あたしと同じようにアルベールも彼の考えに気付いたのか、柔らかな笑みを作っていた。


「なるほどね。分かったわ、頑張りなさいよ」

「うん。9月に会った時には彼女を紹介出来るように頑張るよ」


 オーラは現在12歳。人間で言えば子供だが、フェアリー的には立派な成人男性であり、そろそろ人間で言うところの30代になってしまうらしい。見た目は若いままだから想像も付かない。

 ただし、それは平均寿命が30歳のフェアリーの話であり、今のオーラは祝福で寿命があたしと同じになっているので、女性のフェアリーから見た時にどのように映るのかは分からない。

 今気が付いたのだが、オーラが彼女を連れてきたらその子と契約できる人間を探してあげないといけないわね。彼女と寿命が倍以上の差があるというのは可哀そうだ。


「となると、アルベールと二人旅ね」

「う、うん。そうなるね……」

「嫌?」

「ま、まさか! そんなことないよ!」


 その割には一瞬表情が陰ったというか、緊張したように見えたのだけれど、本人が良いと言うのなら、このまま話を進めてしまおう。さすがのあたしも一人で海外旅行をする気にはならないので、アルベールにまで振られるのは避けたい。


「なら、アルベールはどこか行ってみたい国とかある?」

「う~ん、ヴァンバルドとか?」

「それって……確か、ゲルミアたちの故郷よね? そこに行くならゲルミアたちが一緒の方がいいんじゃないかしら?」

「あっ、そっか……」


 それにヴァンバルドは国の半分以上が森のド田舎小国だ。夏のバカンスで観光に行くような国ではない。


「いっそのこと、南半球の国に行ってみたら?」


 オーラの思い切った提案に首を振って返す。


「それだと逆に一か月じゃ短すぎるわよ。まともに観光も出来ないわ」

「じゃあ、無難なところでハウランゲルかヤマシロだろうね」

「そうなるわよね」


 ハウランゲルなら何度か行ったことがあるが、観光目的だったことは一度もない。対するヤマシロは食べ物以外の情報が全くない。ここはヤマシロへ行ったことのある人物に話を聞きたいところだ。

 そんなことを考えていると、店のガラス越しに王都の町を歩いている見慣れた男性が目に入って来た。


「あっ」

「アキトさん」

「ちょうどいいね」


 あたしとほぼ同時にアキトの存在に気付いたオーラが、魔力圧縮を解除して存在感を増す。するとアキトの肩に乗っていた妖孤のシラツユが反応し、尻尾でアキトの顔を叩いてこちらに気付かせてくれた。

 あたしが手招きすると、アキトは少しだけ困った表情になってからカフェに来店し、あたしたちの席までやってきた。


「久しぶりだな、ハルカ、アルベール。それと、話には聞いていたけど、本当に戻ってこられたんだな、オーラ」

「カレンたちのおかげでね。ただ、自慢の翅は元通りにはならなかったけどね」


 オーラはクルリと後ろを向いて、歪んでしまった翅をアキトに見せる。コクヨウに握り潰された怪我を無理やり治療したので、綺麗な形には治らなかったらしい。


「……座って良いか?」

「もちろん。聞きたいことがあったから呼んだのよ」


 アキトはいつになく真剣な表情でアルベールの隣へと腰を下ろす。アルベールが少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめた。男に隣に座られただけでこの反応とは、アルベールの免疫の無さには不安すら覚えてしまう。以前、両性とはいえ恋人は女性が良いと言っていたはずだが、やはり男性にも興味があるのだろう。

 あたしの隣には、獣人姿へと変身したシラツユが座り、オーラの翅をじっと見つめている。


「白露、いけそうか?」

「うむ。どこまでやれるか分からんが、とりあえずは今よりマシには出来る」

「よし、やってくれ」

「『炎天魔法・癒しの炎』」

「へ? う、うわわわわわ!」


 何をするのかと思いきや、シラツユはあろうことかオーラの翅に魔法で火をつけた。


「ち、ちょっと!? 何やってるのよ?」

「黙って見てろ。すぐに終わる」


 あたしが声を荒げると、アキトに鋭い目で睨まれた。


「うっ……」


 そりゃあ、あたしだってアキトやシラツユが理由もなくこんなことをするはずがないのは分かっているけれど、行動に移す前に何をするつもりなのかくらいは説明して欲しかった。びっくりするじゃない。


「こんなところじゃろう」


 シラツユが満足気に魔法を消すと、そこには見違えたように元通りになったオーラの翅があった。オーラは過去の輝きを取り戻した自慢の翅を見て唖然としている。


「えっと……シラツユさんだっけ? どうやったの?」

「歪な形になってしまった部位を燃やして消滅させてから、新しく再生させたまでじゃ」

「そうか、治療じゃなくて再生だから治せたんだね」

「うむ。元の形にちゃんと戻っておるか?」

「バッチリだよ。ありがとう!」


 オーラは嬉しそうに飛び回る。

 あたしは自分の事のように嬉しくなって、シラツユへ感謝を伝えた。


「ありがとね、シラツユ。オーラの奴、今年の夏は婚活するつもりらしいから、自慢の翅が戻って本当に良かったわ」

「ほう、それはまるで昔の主殿のようじゃな」

「うわっ、ハルっち! あんまり言いふらさないでよ!」


 恥ずかしそうに顔を赤くしたオーラを見て、シラツユとアキトはニヤリと笑った。


「頑張れよ、オーラ」

「……う、うん」


 オーラは気持ちを落ち着けたいのか、コーヒーカップを持ってテーブルの端へと移動した。

 それとほとんど同じタイミングで、店員がアキトとシラツユの注文を取りにやってきた。二人はメニューを一瞥してから思い思いの飲み物や軽食を注文する。


「それで、ハルカ。聞きたいことってなんだ?」

「聞きたいこと?」

「いや、お前が俺に聞きたいことがあって呼んだんだろ?」

「あっ、そうだったわね」


 オーラの翅の件が衝撃的過ぎて、本来の目的が頭から抜け落ちていたようだ。

 あたしは気を取り直してアキトに事情を説明する。掻い摘んで話し終えると、アキトはあたしが話をしている間に到着したサンドイッチをかじりながら、シラツユに目配せをした。


「時期的にも丁度良いのう」

「だな」

「ちょっと、何の話よ?」

「8月はヤマシロで祭りがあるんだ。タイミング的にちょうどいいだろ?」

「祭り? ……悪くないわね」


 あたしがアルベールへ視線を向けると、アルベールは笑顔で頷いた。


「わたしも、ヤマシロのお祭りに興味があります」

「ちなみに、我とグレン、それとオリヴィアは7月あたりからヤマシロへ向かう予定じゃから、二人さえ良ければ8月にヤマシロで合流して案内してやっても良いぞ」

「良いわね。お願いするわ」


 渡りに船とはこのことだ。

 シラツユはヤマシロ出身ということで色々と詳しそうだし、オリヴィアはあたしとアルベールの共通の友人だ。グレンもオーラたちを助けるのに協力してくれたことでそれなりに信頼しても良いと思っている。そのメンバーと合流できるのなら、ヤマシロ観光も不自由なく満喫できそうだ。


「でも、そのメンツでアキトは来ないのね?」

「今年はアルドミラの夏を楽しみたいから、俺はパスしたんだ。来年か再来年辺りには行くと思う」

「アルドミラの夏? いつも経験しているでしょう?」

「……俺にも色々あるんだよ」


 どこか思うところがあるのか、アキトは少しだけ言葉を濁した。争いのない平和なアルドミラでの生活を楽しみたいという意味だったのだろうか?

 それならば、あたしも理解できる。


「まあ、いいわ。旅行の件はそれでいいとして――アキト、あんた裏でコソコソと何かやっているみたいじゃない?」

「なんだよ、急に。ケシの花の話か?」

「そっちは軍にいれば普通に耳に入ってくる話題よ。そっちじゃなくて、旧ギドメリア領土からの移住希望者についてよ」


 アキトは契約者を含めて民間人としては考えられないほどの力を持っている。それは軍からしたらとても頼もしいと同時に、制御できない暴れ馬のような存在なのだ。だからこそ、彼はあたしと同等の勇者として信頼を置くと共に、魔王以上に警戒しなくてはいけない存在として認識されている。だというのに、アキトにはその自覚が全く無いように見える。加えてお人よしだから、あたしが釘を差しておいてあげないと自分が監視されているということにすら気付けずに、軍に疑われそうな行動を取りかねないのだ。


「……ロゼと話し合って、近々ミルド村にも何名か受け入れるつもりだ」

「――っ! あ、あんたね。そんなこと出来ると思ってるの? ミルド村は王都のすぐ南よ?」

「分かってるよ。ミルド村のみんなには既に話してあるし、問題が起きないように準備も進めている。何よりロゼが指揮を執ってくれているんだ。俺が短絡的に行動するよりもずっといいだろう?」

「それはそうだけど……」


 あたしは大きくため息を吐いて、心を落ち着かせる。残っていたコーヒーを飲み干すと、アキトの目を見てハッキリと伝えた。


「その計画、今すぐゲルミアに伝えなさい。あいつならアキトの気持ちを汲んでくれる。間違っても軍と無関係に話を進めてはダメよ。それにミルド村のみんなには話しているっていっても、ミルド村で暮らしている軍人には話していないんでしょ?」

「いや、話したぞ。ただ、口止めはしている」


 そんな話、聞いたことが無い。ということは、ミルド村の軍人たちは本当に本部に何も報告していないという事だ。


「どうして口止めなんてしたの」

「話を大きくされたり、横槍をいれられたりしたくなかったからな。話すのは受け入れを発表するタイミングで良いと思っていた」

「だったらなおの事ゲルミアを頼りなさい。ゲルミアに話を通しておけば、後から発覚した時に軍全体があんたたちに持つ印象が全く変わって来るわ」

「わ、分かった」


 これで何とか出来るだろう。

 最近ミルド村が拡張工事を始めたと報告を受けていたから怪しいと思っていたが、まさかギドメリア出身者を受け入れる場所作りだとは思っていなかった。

 特に王都に住んでいる国民たちの過激派から批判されそうだが、ゲルミアとリクハルド、それと祖父のヴィクトール元帥が何とかしてくれることを祈ろう。

 あたしはアキトへと手を差し伸べる。


「い〜い、アキト。あたしとあんたは勇者って肩書きから完全に逃れることは出来ないわ。だからこそ、お互いを補うように協力していきましょう」

「ああ。よろしく頼むよ、ハルカ」


 アキトは観念するようにあたしの手を取った。

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