霧の濃い森
どうしよう。剣術知らない僕が…ガタガタ
音でなんとなく表現しました。
ごめんちゃい
首を縦に振ることで意思表示をした俺に対し、彼は溜息を吐いた。
「その表情を見るに覚えてはいないみたいだね。でも、夢は見たのか。」
これでもか、というくらいに縦に振る。
「ま、明日もまた来ると良い。今日はまさか会えるとは思わなかったから準備してないんだ。ところで君は今、学生さんってところかな。冬休み中のね。」
やっとのことで口が開いた。
「あ、ああ。」
彼は自転車に跨りながら
「名前を聞いても良いかな。」
と尋ねた。
「俺は勇と言います。」
「そうか。勇か。俺は健…いや、ケン坊だ。できるだけ早く思い出してくれ。じゃないと困る。」
「善処します。」
前世なんて思い出すもなんもありゃしないとは思うのだが。何かあるのだろう。
「じゃあ、また明日な。」
「はい。」
ケン坊は軽やかに自転車に飛び乗ると、手を振りながら去っていった。
***
家への帰り道。
俺は霧の濃い森の中を駆けていた―
―後をつけられている。
「何者だ!」
途端。
ザッと囲まれた。
覚悟して太刀の柄を握る。
「かかれッ!」
腕に覚えはあるものの。
こうも分が悪くては…………
無傷では帰れないだろう。
カンッ
キンッ
ザッ
…音がやけによく響く。
血の匂いと木の匂いが混ざり合う
近づき、刀を振りかぶる相手を
一寸の隙も無く
斬り伏せる。
ザザッ
クッ
スッ…
ザッ
ドサッ
何人倒しただろうか。
だが、気配で分かる。
…あと、1人………
………っ⁉︎
「グッ……⁈」
ガンッ…………
「貴様はここで終わりだッ‼︎残念だったなッ‼︎」
じわりと痛みが広がっていく。
腹部が…全身が…痛くて…熱い…
「うッ……………カハッ………………」
鉄の味が口の中に………
「な、何者だ‼︎クソッ………ウッ…」
遠くで何者かが倒れる音がした。
誰かが近づいてきている…
もはや身構える力も気力もない。
なるようになれ。
やりたいようにやってくれ…
「若君!若君!…やった!良かった!まだ息があるぞ!急げ!村まで知らせろ!例のものを用意して待っているようにと伝えてくれ!…若君!失礼仕ります。どうか、今暫くの御辛抱に御座いまする。どうかッ‼︎」
…領民…か?
すっと優しく持ち上げられた…気がした。
安心した為だろうか。
体の力が抜けていく。
ふっと意識を手放した―
やっと名前名乗ってくれました!
勇くんだって!←オイッ
ファンタジー感が出てくるのは次回以降かな。