??話 カルネラ・アルスバーンの記憶2
お蔵入りになった話です。4月に書いたっきり放置してました。
アルストロメリアは最初、敬語をつかってましたが、カルネラの影響で口が悪くなったという設定でした。
「俺はカルネラ・アルスバーンだ。よろしく、アルストロメリア」
私は少女に自己紹介し、手を差し出した。が、少女はその手を弾いたのだった。
「馴れ馴れしくしないでください。人間」
なんて生意気な少女なんだろう。それでも私は大人だったので少女の態度を許すことにした。
「てか、『人間』といったな。それではまるで自分が人ではないって意味になるぞ」
「よくぞ、聞いてくれました! 私こそが神、アルストロメリア。私は神なんです!」
「……そうか可哀想に、いい医者を紹介してやるよ」
「本当なんですから!」
少女は地団駄を踏んだ。明らかに少女だった。そんなことよりも《想いの力》が失敗したことを調べたい。
少女は放っておいてレポートを書いていく。
「ねえ」
外観に異常なし、《完全な世界の顕現》には特定の状況下でしか発動しないとう可能性は……。
「ねえ」
いや、実はすでにタイムトラベルしているのでは? いやそれは無いか時計の針は同じ時刻を指している。うーん。
「ねえってば! 私をみてください!」
「馴れ馴れしくしないで、と言ったのは貴様の方だ。そして俺はいま仕事中だ」
「貴様じゃありません。アルストロメリアです。それにあなたもしかして《想いの力》を調べてるのではないですか?」
……《想いの力》がなんで外部の者が?
「貴様、もしかして……」
「もしかすると神なんです」
「もしかして外部のスパイなんじゃないか?」
私は少女の頬を引っ張った。いや、冷静に考えてみれば少女がスパイなんて有り得るわけないか。じゃあ、この少女が《想いの力》を使えるのは一体……。
「神と言うなら証拠をみせてもらおうか」
「いいでしょう。絶対的強者の力をみせつけてさしあげます」
「《完全な世界の顕現》」
少女がそう詠唱すると、一つのリンゴが召喚された。たしかに、これは《想いの力》だ。
「ちょっとまて、《完全な世界の顕現》は、歪められた世界を元の世界に戻す力だろう? なんでリンゴが召喚されるんだ?」
少女は召喚したリンゴを齧りながらハテナを浮かべた。
「《完全な世界の顕現》も《不完全な世界の顕現》も同じ力ですけど……」
「どういうことだ?」
「《完全な世界の顕現》は無限の並行世界から、《不完全な世界の顕現》は有限の並行世界から召喚する力です」
「ちょっと待て考える」
《完全な世界の顕現》は時間遡行ではなかった? 《不完全な世界の顕現》が3つの世界から探索して召喚するのだとすると、《完全な世界の顕現》は10つの世界から探索する。3つの世界には「死んだ世界」にか存在しないけど、10つの世界の一つは「生きた世界」が存在する可能性がある。
「……そうか、元の世界に戻ったというのは錯覚だったということか」
「やけに物分りがいいですね」
「まあな。時間遡行はできないのか。タイムトラベルができると思ったが、そうか勘違いだったのか」
「タイムトラベルする力はありますけど?」
「なんだと!?」
「《正当なる観測者の権限》それ自体がタイムトラベルする力です」
「是非教えてくれ!」
*
「……なるほど《新たなる世界の複製》、《正当なる観測者の権限》、《不当なる観測者の権限》
、並行世界の解釈にそんなものがあったなんて」
「私を神だと信じてくれましたか?」