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一輪の花  作者: 雨井蛙
物語の終焉
49/52

最終話 お姫様の戴冠式

 そこは、少女がマリーとして生き、アルストロメリアと王宮の玉座の間にて、アマリリスを看取っていた世界である。


「私が継ぐ。私があなたを継ぐわ!アマリリス!あなたの言う楽しくて喜んで、みんなが笑っているような世界は私が創ってみせる!これが私の想いよ!」


 アマリリスにはもう聞こえていなかった。


 そのとき、黄金の球体が光輝きはじめた。

 マリーの想いに引き寄せされた黄金の球体は新たは力となる。そして、光り輝く黄金の球体は変化し光り輝く黄金の冠になったのである。


 《全てを思い出す黄金の冠》


 マリーはその前に跪くと淡い光の塊がアマリリスの幻影をつくり、マリーにそれをかぶせた。

 そして、光り輝く黄金の冠をかぶったマリーは、全ての記憶を思い出した。


 並行世界のすべての記憶を共有するというのがこの冠の本質である。そして、マリーのすべての世界の観測者となる。


「《完全な世界の顕現》――《全てを忘れ去る黄金の剣》」


 頭には黄金の冠を、右手には黄金の剣を、そして、マリーの足にはいつか着けた花の色がついていた。マリーは剣を天にかかげ宣言する。


「この我こそがこの世界の王女マリー! 世界を導く者である! 汝、退屈な世界を望むか? 残酷な世界を望むか? 否、我が導くのは光り輝く黄金の世界である!」


 王女たるマリーは世界を導くのである。不完全な世界を完全な世界にするために。


「《完全な世界の顕現》――《0への収束》」


 それは、かつて一人の少女が犯した罪。99.98%の不完全な世界を創る過程で生まれた00.00%の世界の顕現である。

 そう、《全てを思い出す黄金の冠》ですべて並行世界を共有し《全てを忘れ去る黄金の剣》によってすべての世界を00.00%の世界に変えるのだ。


 世界は光のちりになって外側から消えていく。そして、マリーたちも光になって消えていくのだ。消えゆく刹那にマリーは想う。


 ――ああ、これでやっと、あのこの罪は報われるのね――


 そして、世界は無になった。


 *

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 そこは何も無い世界。何も存在しない高次元の空間に一匹のカエルがおりました。そのカエルはHalweil(ハルヴェイユ)といいます。Amaryllis(アマリリス)の創った世界を眺めていたのです。


 そのカエルの前に小さな光たちが輝いています。ある光はマリーという少女が生きた世界であり、ある光はアマリリスという少女が生きた世界です。その光は世界そのものでありました。

 そして、その光たちが弱く(またた)いて消えていきます。


「……消えてしまいましたか……」


 そのカエルは最後の光が消えるところを見届けました。そして、そのカエルが立ち去ろうとしたとき、消えたはずの光が一つだけ輝いたのでした。

 その世界を覗いてみると――


 





何もない

真っ白な

真っ白な空間に

一輪の花が

咲いているのでした


 ――

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 ――


 そしてその光もまた完全に消えていくのでした。カエルはその場を去ります。それは誰かに呼ばれたからでした。


「来なさいよ、 Halweil(ハルヴェイユ)! また新しい世界を創ったわ!」


 少女の声がした――。

これにて完結です。お疲れ様でした

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