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一輪の花  作者: 雨井蛙
三章 後継者と名乗る男
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27話 不完全な世界の顕現と完全な世界の顕現

今日は休日であった。メイドたちも非番であったため、限られた人数しかいない。マリーは王宮の一室で一人で椅子に座っていた。前の机にあったのは空のコップだ。


「《不完全な世界の顕現》」


マリーがそう唱えると空のコップに水が注がれた。注がれた(・・・・)というのは正確ではない、水を召喚した(・・・・)と言ったほうが正しいだろう。《不完全な世界の顕現》は並行世界にある別の世界の一部を現実にするものだ。


(確かにこれは想像できるものしか召喚できない。では、《完全な世界の顕現》はどうかしら?)


「《完全な世界の顕現》」


マリーは再びコップに詠唱する。《完全な世界の顕現》は歪められた世界を元の世界に戻す力だ。《不完全な世界の顕現》で召喚された水は、元の世界に戻っていく。


「カルネラ・アルスバーンはこれを時間遡行(じかんそこう)と考えてたのよね」


(確かに。空のコップが再現されたのだから《不完全な世界の顕現》の詠唱前に戻ってるともみれる。でも、ボーア教授はこれでタイムトラベルはできないと言っていた)


思案を巡らせるマリーは次のように考える。

世界を線であらわすと、並行世界は次のようになるはず。それぞれの世界はα(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)と名付けよう。


α――――――

β――――――

γ――――――


で、私が「いる」ということを◆で、「いる」というのがないのを◇で書く。α世界に私はいて、β世界に水があるとすると、こうなる。


α――◆(私)―

β――◇(水)―

γ――◇――――


《不完全な世界の顕現》を使って水を召喚すると、こうなるはず。


α――◆(私、水)―

β――◇()―

γ――◇――――


でも、β世界の水はどうなるのかしら? 召喚だから「無」になる? 水を飲んでたら急に水がなるなるのかしら? そう思うと申し訳なくなってくるわね。で、《完全な世界の顕現》はこうなる。


α――◆(私)―

β――◇(水)―

γ――◇――――


時系列にすると、こうなるばず。

α――◆(私)―

β――◇(水)―

γ――◇――――

↓1

α――◆(私、水)―

β――◇()―

γ――◇――――

↓2

α――◆(私)―

β――◇(水)―

γ――◇――――


1の時点で《不完全な世界の顕現》を使い、2の時点で《完全な世界の顕現》を使うとするならの図ね。確かに、最初の世界に戻ってるとも見えるから、カルネラ・アルスバーンはこれを時間遡行(じかんそこう)だと考えたわけだ。これで過去の世界そのものを召喚して過去の世界にいく。でも、問題は「過去の世界」とは何かよね。うーん。

思案を終わらせるマリーは唸る。


「過去の世界ね。コップが空の状態を過去とみるなら、コップが割れてしまった未来の状態も想像できる。想像することを別の並行世界を見ていると考えるなら、過去も未来も並行世界に同時に存在するってことになる? いや、これは早計か」


伸びをするとマリーは立ち上がる。ボーアの宿題をすでに終わらせたマリーは、今日は自由であった。今頃カトレアが必死で宿題を考えてるだろう。


「カトレアもマーガレットも今日はいないのか……閃いた!」


思いついたマリーは洋服部屋に行くと白いワンピースに着替えた。そう、マリーはメイドに内緒で例の殿方に会いにいこうと思ったのだ。残ったメイドにバレないように支度すると、マリーは町へ出かけたのだった。


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