(95)異質
民族の違いからか、文化の違いからかは知らないが、日本人から見れば、外国文化が異質に映るようだ。スキンシップ[肌と肌の触れ合いによる心の交流]一つ取ってみても、日本人はかなり疎いと言える。ハグ[抱擁]もしないし、チュッチュラ、チュッチュラ! もない。^^
25年ぶりに帰国したヨーロッパ帰りのとある夫婦が街路を歩いている。
「なんか、ヨーロッパと違うわね…」
「そうだな、どこかが異質だ…」
お互いに手を繋いで歩くスキンシップな二人を、まるで違う生き物でも見るかのように通行人達は見ない態で見ながら通り過ぎていく。
「まっ! 日本だからと思えば助かるわ…」
「だなっ! いつもの店で、なにか美味いものでも食おうかっ!」
「そうね…気にしない、気にしないっ!」
二人は手をいっそう強く握りしめ、和式西洋レストランへと入った。その和式西洋レストランは実に異質で、入った途端、暖簾が掛けられており、その暖簾を上げると、和間が広がる中、畳の上には座布団が敷かれた席が幾つかある佇まいとなっていた。二人は揃えて小玄関で靴を脱ぎ、席の座布団へと座った。しばらくすると、着物姿のウエイターが現れた。
「いらっしゃいませ…」
西洋風にそう言いながら水コップを置き、メニュー表を徐に二人へ手渡した。
「ご注文は…」
「そうだな…。俺はテンダーロイン300g、ミディアム・ウエルダンで…。君はっ?」
「そうね、同じでいいわ。ミディアム…」
「かしこまりました。ワインは、いつもので、よろしゅうございましょうか?」
「ああ…」
西洋風に一礼すると、着物姿のウエイターは楚々(そそ)と去った。メインディッシュ前のサラダ、スープも済み、しばらくすると料理やワインクーラーに入れられた冷えたワイン、パンなどをワゴンに乗せ、ふたたび現れた。その光景は和風でも洋風でもなく、どこか異質に映った。ところが、二人には同質だったのである。^^
このように、異質は意識しないことで同質となり、助かる安らいだ心境になれるのである。^^
完




